おまけ49・久美子、双転写に成功する

 大河さんとはじめて結ばれて数日後。

 また出張任務がやってきた。


 今度はウランを掘るために、外交官が現地の魔族の部族長……つまり魔王に皇帝陛下の御名御璽を施した書状を届けさせる。

 つまり護衛任務。そういうお仕事。


 そのお仕事に、私はメンバーに選ばれた。

 主に魔界語会話能力を買われてのことだと思うけど……


 私には、確信があった。


 近い将来、私は大河さん……いや、大河の子供を身籠る。

 その際に、私に双転写が起き、私は大河の魔力を全て得ることになるんだ。


 だから……


「小石川さん」


 会議が終わった後に、緊急手配をさせて貰ったんだ。


「何かしら? 山本さん?」


 小石川さん……四天王の頼れる年長者であり、母親の先輩でもある人。

 そんな人に、緊急手配をお願いしたのは……


 対竜種ライフル・ドラゴンキラー。

 全長2メートル10センチ。重さ37キロ。

 装弾数7発。射程圏内であれば、確実にドラゴンの鱗を貫通できる徹甲弾を発射できる化け物銃。


 普通、国防軍でも相当に訓練を積んだ、屈強な男性しか扱えない。

 まあ、ドラゴンを倒すための銃なんだから当然なんだけど。


 それを緊急で手配して貰ったんだ。

 小石川さんは「分かったわ。やってみる」って言ってくれた。




 そして魔族の居住区に出張した。

 魔族居住区は……それはそれは酷いものだった。


 なんか、道端でセックスしてるのが居るし。

 すっぽんぽんで殺し合いしてる奴らがいるし。


 ……その殺した仲間を、具材にして鍋パしてる奴らもいた。


 異質過ぎ……。


 


 その、帰り道のことだった。

 なんと私たちを……ドラゴンが襲って来たんだ。


 10メートル超の、大型の魔物。

 飛行できるオオトカゲ。


 それが……2頭も。


 ……ゾッとした。


 私にまだ、転写が起きてなかったから。

 ということは……


 手配したドラゴンキラーが使えない。


 どうしよう……

 私はおなかに手を当てて、思った。


 早く、着床して欲しい……

 今転写が起きないと、私たち、詰んでしまうかも……?


「外野さんと、久美子は逃げてください! 俺が片付けます!」


 大河の言葉。

 正しい。


 それ以外ないので、私は従った。


 そして……

 走っている間にが来た。


 ドクン、とおなかと頭の中で脈打って。


 自分の能力が急速拡大していく感覚。

 私が魔力に目覚めたときと……一緒。


 同時に、思った。


 今なら、やれる。


 私は逃げる足を止め。

 荷物として持って来ているドラゴンキラーの開封のため手を動かす。

 このために、重い荷物を使い魔に運ばせて来たんだ!


 そしてその作業をしているときに。

 ドラゴンが灼熱のブレスを吐いて来た。


 思わず、笑ってしまった。


 ……そんなもの、今の私には効かないよ!


 私は使い魔たちを盾のイメージで変形させる。

 私の火炎無効は使い魔たちにも適用されるから。


 ……これをしないと、外交官さんが守れないからね。


 そして身を挺して使い魔たちに私たちを守らせた。


 その後は、簡単だった。

 開封したドラゴンキラーを、軽々と右手で構え。

 それを私たちを追って来てるドラゴンに向ける。


 ……軽い! いける!

 拡大された私の能力に、酔ってしまいそうになる。


 これが……大河と私との絆の証!

 これで私はあなたの隣にずっと立っていられる!


 興奮し、興奮したまま。

 

 ……眼鏡に違和感がある。

 ぶっちゃけ、要らないと思った。

 外そう。


 ハイテンションになっていた私は、左手で自分の眼鏡を外し、そのまま投げ捨てた。

 本来なら捨てる必要は無いんだけど……


 もうこの道具はこの先の人生、要らない。


 その思いが強かったから。


 ドラゴンキラーは片手で構え、片手で引き金を引く銃。

 私は右手でドラゴンキラーを、哀れな私の愛の最初の獲物に向けた。

 そして左手で引き金を引いた。


 発射される徹甲弾。


 反動があったけど……私はビクともしない。


 るぎゃあああああ……


 徹甲弾はドラゴンに突き刺さり、胴体を貫通する。

 一撃だ。一撃で決まった……!


 すごい……!


 これこそ……これこそが。

 大河の奥さんに相応しい力だ!

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