おまけ47・久美子、妊娠計画を立てる

 その後。

 私は藤井さんと距離を詰めるために積極的に一緒にいるように心掛けた。

 私が藤井さんにとって空気のような存在になれれば、絆も深まるはず。


 そういう想いから。

 でもこれは……


 やっぱり、藤井さんと子供を作ることが決定づけられている。

 そこから来る行動だったと思う。


 私が本気で藤井さんのお嫁さんになりたいと思うに至ったのは。


 あれを見たせいだったんだよね……


 まず、小石川さんが妊娠した。

 藤井さんの子供を身籠った四天王女性第1号。


 このときは「まあ、国の計画が1段階進んだんだな」くらいしか考えてなかった。

 転写も予定通り、藤井さんに起きたみたいだし。


 それで。

 そのときの私が思ったのは


「小石川さんの家、父親の違う子をどう育てていくのかな?」


 これだけで。

 全然考えてなかった。


 小石川さんが、藤井さんの赤ちゃんを堕胎する可能性。

 それについては。


 ……これは私が未婚の女だからなのかもしれないけど。

 私の中では、子供を作ったら基本産むのが決まってて。

 だからこそ、無責任には作らない。


 これがあったから。


 小石川さんもきっとそうだ。

 旦那さんも納得済みなら、産むに決まってる。


 そういう認識だった。


 だけど、藤井さんはそうは思わなかった。

 小石川さんが、父親が違う以上、産むわけにはいかないと堕胎するんじゃ無いかと。


 あの人……小石川さんに土下座したんだよ。

 子供を堕胎しないでくれ。

 自分が育てるから、って。


 ……そんなことをしても、小石川さんが手に入らないことは分かってるはず。

 藤井さん、馬鹿じゃ無いもの。


 なのに……そんなことをした。


 このとき。

 思い出したのはあのときのこと。


 私が妊娠したと知って(早とちりだったんだけど)即座に逃げたあの人。

 私に見る目が無いせいで掴んでしまった外れくじ


 あの人はこんなことしない。

 絶対にしない。


 自分の手に入らない女が産んだ自分の子供を、救おうとなんて絶対にしない。


 ……素敵。


 私が絶対に欲しいと思ったもの。

 そして逆に、私が避けたいもの。


 それは……なんだったか?


 ……自分の子供を厄介者として思ってしまう男性。

 もっと言えば、自分の子供のために自分を投げ出せない人。


 こうだったよね?


 だから……この人だ! 絶対にこの人だ!


 私はここで運命を感じてしまったんだよ。

 だから


「……藤井さんって、自分の子供を愛せる人だったんですね」


 思わず、藤井さんにそんなことを言ってしまい。


 その後……


 私は急ピッチで計画を立て始めた。


 まず、佐倉さん。

 私のライバルは佐倉さんだ。


 皇帝陛下はライバルには成り得ない!

 身分が絶対的に違い過ぎる!


 それに伝統的に、男性皇帝のときは皇后陛下がいるときがあるけど、女性皇帝のときは生涯独身が普通。

 皇配陛下という存在が居た記録は無いんだよね。

 だからまずライバルにはならない!

 それを私は王城の資料を読み漁って知っている。


 で、私はどうするべきか?


 それは……


 もっと積極的に藤井さんに絡んで、藤井さんの心の中に、山本久美子は常に自分の隣に居る女である。

 そのポジション、イメージを刻み付ける。


 そして……


 藤井さんと赤ちゃんを作るタイミングは1番最後にし、その際「双転写」を狙う!

 双転写……初代皇帝陛下と皇后陛下の間で起きたという、究極の転写。

 男女双方が相手の魔力をコピーしあい、結果双方同じ魔力を備えてしまう現象のことだ。


 ……つまり、藤井さんが今備えている魔力を、


 これが成功すれば、私の特別感が爆上がりするに違いないよ!

 だって、自分と同じ魔力を備えている女なんだよッ!?

 特別じゃ無かったらなんなのよッ!?


 そして私は、佐倉さんが妊娠するのを待った。

 佐倉さんが妊娠し、佐倉さんの魔力が藤井さんに転写されたとき。

 そのときが、私の動くとき。


 その過程で、佐倉さんに藤井さんを奪われてしまわない様に気を付けながら……

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