おまけ43・久美子、盗賊を取り押さえる

 寝虎さんが悶え苦しんでる。

 両腕を思い切りへし折られたんだから当然だよね……。


「どうだ! 参ったか! 俺は魔力保持者なんだぞ!」


 寝虎さんの腕を折り、裸締めから脱出した盗賊男。

 ぜえぜえ言いながら、立ち上がる。


 あの、妙なハンドサイン……人差し指と小指を立てるやつ……をしたまんまで。


「魔力保持者……!」


 私は口元を押さえて、怯えている仕草をした。

 この盗賊男の魔力って何なのか。

 まずそこを確かめないと。


 いきなり寝虎さんの腕が折れた。

 これは……


 念動力テレキネシス


 だから……


念動力テレキネシス……?」


 そう、怯えた声を出しながら。

 相手の反応を見た。


 すると


「それだけじゃないぞ!」


 声に驕りの響きが混じった。

 自分に酔いしれるように、語り出した。


瞬間移動テレポーテーション読心術テレパシー、救難信号受信!」


 ……色々できるのか。

 それはつまり……


「神話系……」


 一歩踏み出しながら、私。


「そうだ!」


 誇らしげに、盗賊男。


 魔力には2種類あるんだよね。

 超能力系と、神話系の2種類。


 超能力系はひとつのテーマに沿った能力。

 炎なら炎。氷なら氷。


 私の場合は超能力系。

「自分の影から使い魔を創り出す」これに沿った能力だ。


 対して神話系は、神話の登場人物に沿った能力。


 明らかに繋がりが無い能力を、複数持ってる場合はこっちである可能性が高い。

 だから……


「もしかして……流離のクズサイキッカーのクズオ……?」


 恐る恐る、という感じで言ってみた。

 一歩踏み出しながら。


 そしたら


「……なんだそれは?」


 本気で分らない、という感じで返される。

 だから私は


「超能力の全てを、女性に各種セクハラすることに捧げているクズサイキッカー漫画の主人公だけど?」


 小首を傾げながら言ってあげた。

 知らないの? という感じで。

 一歩踏み出しながら。


 すると案の定


「そんなもんと一緒にするな!」


 盗賊男は怒り出す。

 予想通り。


「じゃあ一体何なのよ!」


 逆切れを装う。

 一歩踏み出しながら。

 さて……


「それは……!」


 と、そこまで言いかけて。

 気づいてしまったらしい。


 神話系能力の内容を訊き出されかけている、ということに。


「……危ない危ない。言ってしまうところだった。……その手は食うか!」


 ……ちっ。


 でもま、別にいいけど?


 だって……


 そしてまた一歩、私は盗賊に近づいた。


 完了。


 次の瞬間。


 ゴッ


「ひげぇ!」


 ……盗賊男は、後ろからぶん殴られた。

 ハエから屈強な男性のような姿に変えさせた私の使い魔に、殴らせたのだ。


 私の使い魔は、射程を短くすればするほど、個体の強さは上昇する。

 なので……この古文書保管庫内に放っていた使い魔たちを呼び集め、男の背後で形態変化。

 その隙を確保するため、私は会話を仕掛けた。


 そして間合いを詰めて……


 一気に、襲撃。

 私の使い魔3体が、盗賊男を袋叩きにしている。


 反撃されると困るので、一気に畳みかける私。


 いきなりのことで、男は対処できないみたい。


 オラオラオラオララ……


 ……ああ、ちなみに。

 流離のクズサイキッカーなんて作品は無い。

 私が5秒で捏造したタイトルなので。

 文句を言わないで欲しい。

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