おまけ41・久美子、盗賊の前に立つ
「古文書保管庫に侵入者が」
「え?」
私の呟きに、寝虎さんが反応する。
……多分、まともな人間じゃない。
古文書保管庫には、入室に許可が要る。
そして、その許可……というか予約に関しては私たちは業務上確実に確認しているから。
私たちの知らない古文書保管庫への入室者はあり得ないんだ。
だから
「行きましょう!」
「ええ!」
私たち2人は走り出した。
コーヒーなんて飲んでる場合じゃない!
古文書保管庫。
それは蔵書保管庫の最下層にあるフロア。
本を守るため、トイレがない。
そしてコンセントも無い。
電気照明も無かったりする。
……じゃあ真っ暗なのか?
そこは
電気の代わりに、光を貯め込んで発光する「発光石」というのを使ってる。
それを天井に電球のように填めてるんだ。
……この物質の作成方法を発明した科学者。
ノーベル賞を取ったんだよね。
古文書保管の安全性を高めた、という功績で。
最下層フロアに辿り着く。
……古文書保管庫扉の鍵は開いてない。
ちなみに、電子錠。
それに一瞬「侵入者は勘違いなのでは?」と思ったけど。
勘違いでも、そうじゃ無かった場合の被害を想像すると……
無駄な仕事をする危険性なんて、理由にならない。
「行きましょう」
「ええ」
私たちは電子錠のカードキーを取り出す。
2人で規定時間以内に連続でカードリーダーに通さないと、ロックが外れない仕組み。
そしてロックを解除し、私たちは古文書保管庫に足を踏み入れた。
「どこで見掛けたんですか?」
「接続が甘い状態で一瞬見掛けたんで、まだハッキリとは」
私の使い魔は、接続深度が深くなると、使い魔の見聞きする情報がよりハッキリする。
その代わり、本体である私の集中も深くなるせいでほぼ行動不能になる。
なので、コーヒー休憩状態で見聞きした情報なんてたかが知れているんだ。
私は立ち止まって集中した。
本気で、使い魔と意識を接続し……侵入者を探した。
すると
「……いた!」
居た。
地球時代の歴史関係の古文書。
それを保管しているスペースで、蔵書を漁ってる人がいる。
保存されているのは、地球時代の民族間の戦争と虐殺の歴史。
閲覧制限のある古文書というと、科学技術ばかりが注目されがちだけど。
歴史関係でも一部、封印されているものがある。
……一番まずいのは科学技術だけど。
歴史関係の古文書についても、勝手に読まれて良いわけじゃない。
盗賊は小太りの男性で、黒い目出し帽を被り、スウェットみたいな感じの黒装束に身を包んでいる。
「居ましたか!」
寝虎さんが私の言葉に反応し、続く言葉を待った。
「こっちです! ついて来て下さい!」
私は駆け出した。
そして。
「そこまでよ!」
私は盗賊の前に姿を現した。
指を突き付けながら。
「えっ!?」
盗賊の男は私に気づき、大きく狼狽えていた。
気づかれていないと思っていたのか。
……しかし。
この人、どうやってここに入ったんだろう?
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