おまけ39・久美子、就職する
そして私は学校を卒業した。
彼氏は結局、あれ以来出来ていない。
告白はされたけど、信頼が持てない相手ばかりで。
全員お断りした。
当たり前のことだけど。
学校を卒業したら就職するのが常識だ。
何の仕事をするかな。
……私の手持ち武器は……
魔界語検定1級。
魔界語会話能力測定900点オーバー。
魔力保持者。(目覚めてから即座に役所で登録したので、これを履歴書に書ける私)
このうち。
魔界語関係技能。
これがね、かなり有利になるんだけど。
ガス会社、石油会社……。
魔界に採掘場があるパターンがざらなので、高レベルの魔界語会話能力がある人間は重宝されると先生が言ってた。
一瞬、そっちを受けようかと迷ったんだけど、仕事内容がどうしても面白そうに見えなかったんだよね。
なので……やめた。
お給料はかなり貰えるみたいだったけど、続きそうにないのは意味がないわよね。
最終的に決めたのは……王都の都立図書館の司書。
王都の都立図書館は、古文書を保存してるんだよね。
その管理って素晴らしいよね。
地球から持って来たという、英語やドイツ語、中国語。
様々な言語で書かれた書物。それが古文書。
様々な地球時代の歴史や、技術情報、文化の情報が記載されている本だ。
私は日本語以外の地球語は習って無いから読めないんだけど、その価値は分かるから。
読めないなら、接したい。
そうして、疑似的に大学校に行ってる気分になる。
知に接する。
お給料も、都立図書館の司書はかなり貰える。
だって、超重要資料の古文書の管理もその業務にある仕事だし。
私は実家住まいでいるつもりだったから、貯金も出来る。
何から何まで揃ってる、素晴らしい仕事だ。
で。司書になって試用員になり、それが過ぎて正式辞令が降りたとき。
辞令の紙を貰って、私は驚いた。
「……古文書付き司書を命ず……!」
自分に来た辞令を読み上げて、踊りそうになった。
古文書専属の司書って、最高じゃない!
嬉しい!
「山本さんは魔力保持者だから、そこを期待しての採用だ。その期待を理解して仕事に当たる様に」
上司が辞令を渡してくれたとき。
今後の仕事への向き合い方を語ってくれた。
分かってると思うけど、良からぬ輩も狙っているのが古文書だ。
命に代えても守る勢いで頑張ってくれたまえよ。
真面目な顔でそう言われる。
……うん。分かってます。
化学兵器や細菌兵器、核兵器なんかの一般閲覧が禁止されてる、所謂「封印技術」の資料も混じってるんですよね。
はい……キチンと理解していますから。
「肝に命じます」
私は上司に、その言葉で決意表明をした。
そして配属の日がやってきた。
「山本久美子です。王都出身です。よろしくお願いします」
「
……新入職員は私の他にもう1人居て。
その人と一緒に先輩職員に頭を下げて挨拶をした。
寝虎さん……
丸刈りの、スポーツマン的な風貌の人で。
爽やかな男性だった。
特にイケメンでは無いんだけど。嫌悪感を感じるわけでは無くて。
男らしさは感じる男性だ。
「寝虎さんは士族の人ですか?」
挨拶が終わった後に、気になったから聞いてみた。
武術の心得がある人、となると普通は士族を思い浮かべる。
士族は武術の修行代がタダになる優遇措置があるからね。
すると
「いえ、僕は平民です。……単に、強い男になりたくて、道場に通っただけなんですよ」
そう、頭を掻いてテレながら返してくれた。
へぇ……じゃあ、義務じゃ無くて自発的に武術の修行をやって、5段にまで行きついたの?
私は素直に感心する。
「すごいですね!」
……素直にすごいと思えたので。
私はそう彼に伝えた。
寝虎さんは嬉しそうに笑っていた。
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