おまけ24・翔子、魔力保持者の真実を知る
魔力に目覚めた週の週末。
午前中。
私はお役所の魔力課に向かった。
母に付き添われて。
お役所……白いコンクリート製の大きな建物。
そこの魔力課の案内板が出ているところに行き、自分で言った。
魔力登録の手続きして下さい、って。
私は何か書類を書くだけで済むと思ってたんだけど。
私の応対をしてくれた黒服の職員の人は、私が華族だと知ると
「竹ノ内さん、こちらへ来てくれるかな」
「お母様もご一緒に」
……別室に案内された。
今思うと母はその内容を知ってたはずだから、母が付き添ったのは偏に私のためだったのよね。
別室に連れて行かれた。
椅子2脚しかない白い部屋。
そこに母と並んで座らされた。
そこで
「竹ノ内さん。あなたはおそらく四天王に選ばれることになると思います」
まず、私はそう言われた。
正直、私は「え? 本当?」って思った。
ようはちょっと嬉しかった。
四天王はヒーロー扱いされる人々だ。
嬉しくないはずがない。
でも、私は普通にお見合いしてお嫁さんになるつもりだったから。
それと両立できるのかなぁ? なんて。
おめでたいことを考えていた。
「そうなんですね! 嬉しいです」
まあ、正直な気持ちを伝える。
すると
「……そのままのあなたで居て欲しいです」
そう言ってお役所の人は、良く分からない表情をした。
そして隣の母は何も言わなかった。
そこで私は説明を受けた。
この国の危機的状況を。
どれだけ危険なバランスで存在できているのかを。
強力すぎる魔族という種族。
そんな彼らからこの国を守る方法……。
「……今のあなたには理解が難しいかもしれませんが、言っておきます。四天王の真の使命は……」
お役所の人は、一呼吸おいて私に言った。
「皇帝陛下に自分の魔力を転写することです」
次の日。
学校で。
「竹ノ内さん!」
教室。
昼休みに給食の食器を片付け終えると。
クラスメイトの岩切さんが話しかけて来た。
岩切さんは、学校に入ったときからの友達。
私は先祖に白人がいた影響で。
髪の毛が金色で、目の色が青い。
……母方の血筋だ。
なので「魔族みたい」「気持ち悪い」って悪口を言われたことがある。
というより。
1年生のときは、ずっとそうだった。
だけど、岩切さんは最初から「綺麗な髪!」って言ってくれたのよ。
そしてそれは今回もそうだったわ。
「竹ノ内さん、魔力覚醒おめでとう!」
素直に笑顔で祝福してくれた。
先生が、そのことを朝のホームルームで言ってくれたから。
そこから。
竹ノ内さんが魔力保持者になりました。
今後、竹ノ内さんは魔力保持者の義務で学校の授業を抜けることがあると思います。
そのときは皆さん、手助けしてあげてください、って。
……普通の華族は、魔力に覚醒することは幸運だと思ってる。
いや、平民や士族の人もそうだろうけど。
華族はその重要度が違うと思うの。
……初代様と同じ働きが出来る存在になった。
そういう捉え方をするから。
だから、無能力者からの魔力保持者へのやっかみがすごい。
誰か分からないけど「何で魔族みたいな見た目してるのに」とか「納得できない」とか。
色々と陰口を叩く人がいた。
けど
岩切さんはそういうことはしない。
素直に他人の幸せを祝福出来て、喜べる人。
……だけど。
今回だけは、そうじゃない。
私は言われてしまったから。
あなたは、まともな結婚が難しいと思います。
今後の人生を覚悟して生きてください。
これは華族の義務。
あなたに拒否権はありません。
って。
……だけど。
これは公言してはいけないと言われているから。
「うん……ありがとう岩切さん」
そう言って、私は彼女に微笑みを返した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます