おまけ21・進美、一等賞になる

 そしてまたしばらく時間が経ち。


 ある日。


「……原子力発電所が赤い牙に占拠されたって?」


 四天王の事務仕事部屋で、1人昼飯のおにぎり食ってたら、報告があった。

 なんか赤い牙のアホどもが原発を占拠して、陛下の退位を要求してるとかなんとか。


 ……どういうことだ?


 あそこ、国防軍の精鋭部隊が警備してんだろ?

 どうなってんの?


 ……一応、分かるだけの情報が書かれた報告書があったけど。

 正直、足りてないから。


 行ってみて考える。

 これしかなかった。


 とりあえずおにぎり1個は食べ終えて。

 昼は済んだから。


 愛用の片手斧「ジャガーノート」を携えて。

 オレは自分の席を立ち、出撃準備に入った。




「……こいつがオレの担当なのな」


 原発に行ってみたら。

 国防軍兵士が石化してて。


 オレたちの前に3体の魔物が現れた。


 で、胸騒ぎがしたオレは、大河に先に行って首謀者をなんとかしろと提案し。

 先に行かせた。


 ……例の「敵の洗脳無効化装置対策」を持たせて。

 首謀者は絶対に洗脳対策を打って来てるはずだから、必ず役に立つはずだ。

 

 オレはそれに満足感を覚えつつ、自分の相手に向き直る。

 それは……


 石の皮膚を持つ巨大なゴリラ。

 色は緑。体長は4メートル。

 一般には岩猿と呼ばれる魔物で、正式名称は、ストーンエイプ。


 単独で生きるタイプの魔物で、縄張り意識が強く、俊敏で狂暴……らしい。


 ちなみに、久美子がコカトリス。

 そして小石川がケルベロスを担当だ。


 ……ぶっちゃけ、オレが一番不利かもしれない。


 実質、生身の人間が魔法の片手斧と、ちょっとした爆弾片手に岩石のお猿さんに挑むようなもんだし。

 他はそれぞれ自分の魔力由来の強みがあるのにな。


 ……まあ、愚痴言ってもしょうがないわな。


 グオオオオッ!


 岩猿はいきり立って飛び掛かって来た。

 身体が岩みたいなのに、かなり速い。


 ……でも、お猿さんだな。


 単純に力任せの腕の一撃を、俺の真上に振り下ろしてくる。

 うん。まともに喰らったら死ぬな。


 ……まともに喰らえばな。


 ギリギリまで引き付けて、サイドステップ。

 空しくお猿さんクラッシュは空を切り、道路にめり込んだ。

 あれだ。グーパンをぶん回す感じの一撃だ。


 当たったらまあ、死ぬね。

 道路のアスファルトを砕いているのを見て。マジそう思った。


 で、俺はその隙に背後に回り込み。


 岩猿の岩しっぽ……にょろにょろと長い……それに、ジャガーノートを振り下ろす。


 ダンッ! と小気味良い音を立てて、尻尾切断。

 部位破壊は基本だよな。


 グギャアアアアッ!


 痛みに暴れるお猿。


 おお、おお。

 怒っとる。


 こっちは気持ちよく切断できて。

 ジャガーノートの打撃力増強の魔力スゲーとか思ってアガっているのに。


 次に、振り向きながら腕の水平ぶん回しが来たので


 オレはそれを身を沈めて躱して


 踏み込んでジャンプ。


 そして今度は顔面にジャガーノートの一撃を叩き込んだ。

 ……オレの本来の体重と腕力から考えるとあり得ねえんだけど。

 メッチャ食い込んでる。


 岩猿の顔面の骨、間違いなく粉砕。

 こいつもう、まともにエサ食えねえな。そんな感じ。


 ジャガーノートの打撃力増強。パネェ。

 薪割で威力を試してみたとき。

 1回で真っ二つにできたときはウケたけど。


 こうして実戦投入してみたらさ。

 ちょっと、引く。


 でもま、引いてる場合でも無いので。

 

 一撃を入れた後、俺は全身の力を使って食い込んだ刃を戻し、距離を離すためにバックステップする。


 するとその一撃を喰らった岩猿は、声にならない悲鳴をあげて暴れ始めた。


 そしてこれ以上攻撃を喰らわないためか。

 顔を抑えて、腕を振り回している。


 ……これの出番かねぇ。


 携帯している卓球のボール大の球体。

 国防軍採用の手投げ爆弾を取り出し。

 その小さな安全ピンを抜いた。


 そして。


 痛みで叫びっぱなし、開きっ放しの血まみれの口の中に、それを投げ込む。

 カポッと。良い音がした。


 そして数秒後。


 ドンッという音がして。

 岩猿の頭が吹っ飛んだ。


 そして仰向けに倒れる。


 ……オレは素早く周囲を確認する。


 久美子……コカトリスとまだ戦闘中。

 ドラゴンキラーの一撃を決められないで、まごついてるようだ。

 結構コカトリス素早いもんな。

 そしてドラゴンキラーは7発しか撃てないし。


 小石川……ケルベロスの頭の2つを潰し、今最後の1つに取り掛かっているところ。

 小石川、華族の教育の一環で、武道の心得があるらしく。

 その思想でケルベロスの一撃を悉く念動力を使って受け流している。

 だが、その攻撃の進行速度は遅いみたいだ。

 短剣しか武器が無いもんな。


 ということは……


 オレが……最初だ。


 胸が熱くなる。

 ……オレ、受け持ちを一番早く片付けたよ……!


 やったぜ……!


 俺は心でガッツポーズをとった。

 頑張った甲斐があった……!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る