おまけ20・進美、トレーニングを積む
ありがたい。
会長には世話になったからな。
恩人だ。
……あの人も元犯罪者だけどな。
オレの魔力を買いあげて、オレを一人前の企業スパイに育て上げるために、色々投資してくれた人。
それは犯罪のためだったけど、お陰でオレは無能力の人間にはならなくて済んだし。
こうして、目的のために努力することの基礎を教えてくれた人でもあるから。
だから恩人で間違いない。
……会長……このジャガーノートをオレに渡したのが、ここ10年くらいで久々の善行だったらしいな。
それは……
うん……頑張ろう。
「さーて。頑張るぞ」
……王城内部のスポーツジム。
主に、四天王のトレーニング用に作られているらしい。
ランニングマシンやら、バーベルやら、筋トレマシン各種やらが整然と並べ、置かれている。
準備運動をしたので、早速バーベルでベンチプレスをしてみたいと思ったが……
まずは、ランニングだな。
心臓を起こさないと。
……こういうのが大事なんだよな。
ちゃんとしている人間は、こういうことをちゃんとしているものなんだ。
……ジャガーノート。
全長は40センチで、重さは1キロ。
そういうスペックの手斧。
だけど……
これを所持した状態で体重を図ると、オレの体重は本来45キロのところが、55キロ。
つまり10キロ増えてんの。46キロにならないといけないはずなのに。
……これが体重の増加か。
オレは唸ってしまった。
こんな体重で、戦闘のとき大丈夫かな、って。
でもまあ、説明書き通りなんだし。
信頼がおけるってことだよな。
なのでまあ、ランニングしてから主にマシンをメインに使って鍛えた。
走る筋肉や、ジャンプする筋肉、戦う筋肉を調べて。そこを重点的に。
特に広背筋が重要だと聞いた。
斧を使う際は。
なのでラットプルダウンを念入りにやった。
トレーナーつきでだ。
ラットプルダウン……
への字の金属棒を、上から下に背中へと引き下ろす動作で、主に広背筋を鍛えるマシン。
筋トレは速くやるのが良いらしいけど。
速いと、フォームが崩れてしまうんよな。
だからトレーナーをつけた。
贅沢って言われるかもしれんけど、これはオレに対する投資なんだ。
「……ベンチプレス、素だと20キロがきちいな」
オレがものは試しとベンチプレスに挑戦してみたら、その成績は20キロだった。
20キロを10回、8回、5回。
これが限界。
汗を拭いて、ベンチから起き上がる。
だけど……
横で、久美子もやっていて。
久美子は……
100キロを上げていた。
普通、女は3桁行かないんだけどな。ベンチプレス。
で、キッチリ10回を3セットこなしてた。
……すっげえ良い魔力を双転写してんだな。
大河の正妻、ぱねぇ。
……そんなことをつらつらと考える。
羨ましがってもしょうがねえんだけど。
なので、気持ちを切り替えて。
……腹の上に、ジャガーノートを乗せた状態でもう一度やってみた。
するとだ。
「おおおお?」
……なんと。
50キロが10回3セット上がったんだ。
すげえ!
ここまで身体能力が上がるなんて。
喜ぶしかないよな。
ジャガーノートすげえ!
ありがとう会長!
そんで。
家のリビングで調子こいて、四天王の制服姿でジャガーノートを構えていたら。
「お母さんかっこいい!」
部屋着のスウェット姿の娘がキラキラした目でオレを見て、そんなことを言ってくれた。
ああ……
オレは思った。
多分オレ、今幸せなんだろうな、って。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます