おまけ17・進美、主人公に惚れ直す

 オレはユニコーンに乗せてもらいながら、他のユニコーンを探した。

 テロリストが来ているけど、そもそもオレたちがここに呼ばれたのはこいつらを救うためだ。


 ……とはいえ。

 どのくらい救えばいいんだ?


 一応、訊いておくか

 オレは乗ってるコイツに上から質問する。


「ヨウ ツイレ ナリング アーチ?(お前らの仲間はどのくらいいるの?)」


「マニ エゼル(いっぱいいる)」


 ……魔界語、6以上の数が全部「いっぱい」だからなぁ……

 愚問だったか。


 うーん……


 まあ、やらないとどうしようもないしな。


「イカリ。ギャアザ バライド ジーオ(分かった。頑張ろう)」


「ジャス(分かった)」


 そして。

 一緒に走っていたら。


 ……殺気を感じたんだ。


 だから


「トギザー! ラスト コトロ タッレト!(ごめん! 一人で探してくれ!)」


 そう言い残し、俺はユニコーンから飛び降りた。


 ユニコーンには悪いことをしたと思うけど。

 巻き込むわけにはいかないし。


 ……ユニコーン、そこらへんを汲んでくれたのか


「ジャス(分かった)」


 そう言い残して、ユニコーンは走り去って行く。

 ワリィ……一緒に頑張ろうって言ったのに。


 オレがそう、苦い思いを抱いていると


「四天王の、佐倉進美だな……?」


 ……軍用ライフルで武装した、大柄な黒づくめの男が、奥から姿を現してきた。

 格好は……さっき、大河にロケット弾を撃ち込んで来たやつと一緒。

 顔がフルフェイスのヘルメットで見えない。


 そいつは言ったよ。


「一緒に来てもらおう……。藤井大河は手の付けられない魔力保持者。人質戦法が一番効果的」


 ……汚ねえな。さすが国賊。

 だけど


「オレに従え」


 オレは意思をもって言葉を発する。

 標的は無論こいつ。


 ……だけど。


「無駄だ」


 ……え?

 そう思った。


 オレの洗脳が効かないのは、陛下だけのはずなのに。

 あれは、皇統の特別な尊い血筋がそうさせるもの。


 オレはそう思っていた。


 なので、大きなショックを受けた。


「……理解したようだな。来い!」


 言いながら。

 オレの仮面を奪い取る。


「生意気にこんなものを付けているんじゃない。皇帝の犬め」


 そんなことを言われながら。

 それに、食って掛かったり、反撃を思考するような余裕も無かったんだ。


 あまりにもショック過ぎて。


 されるがままになってしまった。


 ……情けない。




 オレの思考が戻って来たのは、その赤い牙のテロリストのクソ野郎に、拳銃を突き付けられた状態で連れられて、大河の傍にまで戻って来た後だった。

 大河の姿が見えて、オレはやっとまともに考えられるようになった。


(大河の念動力には多分こいつら気づいてない)


 対策打って来てるの、洗脳のみだ。


 それに気づいた。

 何故って……


 念動力を考慮に入れるなら、人質戦法が意味無いもんな。

 人質に銃を突き付けても、その銃を見えない上、人間じゃどうしようもない強い力で奪われるんだぜ?

 やるだけ無駄じゃん。


 となると……


 オレ、生きてるはず無いんだよな。

 ここで。


 その場で殺されてるのが正解なのよ。

 人質として使えないなら、生かしておく意味が無いだろ。


 でもオレは生きてる。

 だったら


 ……こいつら、念動力の存在を知らないという結論になる。


 そうなると……


 苦しくなったら、男の力をアテにする。

 なんだかクソ女みてえだから、ちょっと気が引けたんだが。


 オレは大河の力をアテにした。

 だってしょうがないもんよ。




「……」


 全ての仕事が終わって。

 オレは考えていた。


 大河のおかげで一発逆転。

 オレの頭に拳銃を突き付けていたヤツをワイヤーで絞め落とした後。

 あいつらがフルフェイスヘルメットを被ってる理由が気になって、よく観察したら。

 ヘルメットに集音マイクみたいなものが装着されているのに気づいて。

 閃きがあって、脱がしてみたら。


 案の定。

 中にスピーカーがあった。


 ……こいつら、外の音を全部電子音声として聞ける仕掛けを作って来たのか。

 考えやがったな……!


 オレの魔力は、電波に乗らないという弱点があるからな。

 そこを突いて来やがった……!


 そこに気づいて。


 ……オレは絶望的気分になった。


 オレ、少なくとも赤い牙のテロリスト相手の場合。

 魔力保持者の家臣ではなくなってしまうのか……

 だって、魔力が効かないんだもの……

 名ばかり四天王……


 そう思ったから


 大河に愚痴るみたいな気分で「何でオレの魔力のカラクリがテロリストにバレたんだ」ということを言ってしまった。


 そんなオレに対する大河の答えは「武術の基本思想の話。どんなにすごい技でも、一度使ってしまうとそれは必殺技ではなくなる」というものだった。

 理由は必ず誰かが攻略法を見つけてしまうから。


 ……オレが訊きたいのはそういうことじゃ無いんだよ……!


 そう、思ったけど。

 他人に質問しておいて、自分が聞きたい答えじゃ無いからと文句言うのはクソだろ。


 だから黙って聞いていた。

 すると


 ……最終的に、教えてくれたよ。


「だから、同じことをすればいいんだよ。進美も、相手の対策の対策を考えろ」


 ……すげえ。

 オレには無かった視点だ。

 必殺技は攻略されたら、それで終わりだと思ってた。


 武術家ってすげえんだな。

 そっか……なるほど。


 今回の件は、アイツらはある意味「オレの魔力対策としての必殺技」を披露して来たわけだ。

 そして大河の言葉に従うなら、それでもう必殺性は無くなってしまったんだよ。


 同じ手で完封しようとしてきたときに、逆に足元を掬われるような。

 そういう対策をさ、オレが考案すれば良いんだ。


 ありがとう……ありがとう大河……


 オマエ、オレの旦那じゃないけどさ……


 愛してる。

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