おまけ16・進美、自己研鑽の結果に喜ぶ

 赤い牙のクソどもが、山にロケットを打ち込んで山火事を引き起こした。

 理由は「原子力発電所建設反対のための抗議」

 ……ハァ?


 意味不明。

 いいからとっとと真面目に働け。

 この怠け者の他責野郎ども。


 ムカムカする。

 娘と一緒にアニメ見てたのに、それを邪魔しやがって。


 で、国から呼び出しが掛かって、しょうがないから出向いた。

 オレ、四天王だからな。

 出ないわけにはいかないわ。


 で、現場で説明を受けて……


 不謹慎だけど、ちょっとだけ嬉しかった。


 ……ユニコーンを山火事から救出するために、魔界語の会話技能が求められていたんだ。

 勉強をメチャクチャ頑張った甲斐があった。

 そう思って、嬉しかった。


 ……見たか久美子……洗脳魔力では少なくともお前と同等だぜ……!


 嫁レースでは勝負すらできずに負けてしまったけど。

 なんだかちょっとだけ追いつけた気がした。


 そして……


 2手に分かれて対処することになったんだけど。

 久美子は小石川と、俺は大河と組むことになった。


 ……良くないのは分かってるけど。

 やっぱり、ちょっとだけ嬉しかった。


 一緒にユニコーンを探しているとき。

 子供の話をした。


 明らかにオレの子供に興味があるみたいで。

 自分の子供のことを知りたいんだなと思い。


 やっぱり、嬉しかった。


 で、そんな会話をしながら走っていたら


 ……いた。


 一本角の白馬といった風な魔物。


 ユニコーン。


「いたぞ……ヨウ ジーオ ウット イス!(お前ここから離れろ)」


 オレは素早く駆け寄って、魔界語で呼び掛けた。




「ジーオ ウット イス(ここから離れる)」


「ギャアザ ジーオ(一緒に行こう)」


 ……話がまとまった。


 嬉しいな。これは。

 オレの魔界語が魔物に通じた。


 ……オレの能力、頑張ればまだまだ伸びるのか。

 たまらなく、嬉しい。


 久美子への対抗心ではじめたことだけど。

 結果は最高じゃん。


 頑張って良かった……。


 よし、では次だ!


 そう思い、オレは走り出そうとしたが


 そこに


「マセル セボン ジョウド(私の背中に乗れ)」


 ユニコーンに呼び止められた。


 ……え、マジ?

 ちょっと、耳を疑った。


「……何て言ってんの?」


 気になったのか、大河がオレに訊いてきた

 だからオレは答えたよ


「背中に乗れって言われた」


 大河はオレにマジか、という顔を向けてくる。

 うん。オレも同じ気持ちだ。


 ……こないだ、久美子と大河がここで仕事をしたときに、ユニコーンの誤解を解いたんだっけ?

 報告書で読んだんだけど。


 でも……驚きは驚きだわな。


 オレは少し戸惑ったけど


 お言葉に甘えて。


 よじよじ、と登ろうとした。


 ユニコーンの背に。


 ……オレが最初にユニコーンに跨った経験済み人類かもしれねえ……!


 そして、オレがユニコーンに跨った瞬間だった。


 いきなり


「危ないッ!」


 大河が動き、オレとユニコーンの前に立ち塞がった。

 そのとき


 爆発音がした。


 ……大河がロケット弾で撃たれていたんだ。


 爆発、爆風。


 そのまま吹き飛ばされて、ユニコーンに衝突する。


 ……大河!


 オレは驚きのあまり、絶句してしまうけど。


 よろよろと、彼が身を起こして来たとき。

 ……オレはほっとした。


 まあ、コイツの魔力構成を考えたら、平気そうな気はするんだけどね。


 ……このロケット弾を発射したのは


 少し離れたところにいる、黒づくめで金属製の円筒を肩に構えているヘルメット姿の男。


(……あいつ)


 オレはその敵に殲滅の意思を向けた。

 向けたのだけど


「進美! ここは任せろ!」


 大河の言葉。


 ……冷静に考える。

 ロケット弾のような重火器で武装してるような相手。


 オレがいても、あまり役には立たないよな。

 洗脳は、こいつも使えるわけだし……


 悔しいけどさ。

 オレは素手の人間相手以外は分が悪い。

 

(すまねえ)


 オレは、大河の言葉に従うことにした。


「ジーオ(行って)」


 オレはユニコーンに囁き、走り出して貰った。

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