おまけ14・進美、必死で勉強する。育児しながら

「進美先輩……いや、雑魚マ●コ先輩」


 オレの目の前で、久美子が勝ち誇った笑みを浮かべていた。

 こいつ、清楚な美人なだけに、悪意が籠るとめっちゃくちゃそれが強調される……!

 なんて邪悪なんだ……!


「先輩の私への優位性は、元ヤクザのスパイとしての戦闘能力と、洗脳の魔力でしたけど」


 腰に手を当て久美子はオレを見下しながら


「今は両方とも私が上ですよね。純粋戦闘能力は夫との双転写で私も相当なレベルですし、洗脳の魔力に関しては、私の元々のスキルである魔界語会話能力で、先輩より私の方が有用」


 オレは久美子に言われっぱなしで、悔しくて泣きながら膝を折っていた。


「今の先輩は四天王最弱なんですよぉぉぉっ! もし、四天王の誰かが国賊に倒されることがあったとしたら、それは先輩です!」


 ……佐倉進美など四天王では全くの小物……そう言うつもりなんだな? 久美子……!


 オレの方が……オレの方が先に四天王になったのに……!


 そんで「何故あんな人が四天王になれたのか分かりませんわ」とか言うつもりなんだな……!?


 オレは悔し涙を流し……


 うわああああん うわああああん


 ……そこで目が覚めた。




 ……寝てた。

 テーブルの上で居眠りしてたわ。

 そういえば、魔界語の勉強をしてたんだよな。


 和美のやつが寝たから。


 ……なんというか。

 自分でも女々しいというか幼稚というか。

 子供っぽいというか。


 ……久美子に洗脳の有用性で負けてるという事実が我慢ならなくて。

 育児の空き時間を休憩じゃ無くて勉強に充ててんだよな。

 正直、メッチャ頑張ってる。

 これなら、ひょっとしたらオレ、大学校に行けたかもしれない。そのレベルで。


 まあ、それはそれとして。

 オレは娘のところに行く。


 和美かずみ……オレの大事な娘。


 命名の由来は、大河の名前と被らないで、普通な名前。

 普通の人生を送って欲しいからね。

 この考えで、だいぶ考えて決めた。


 ……本音を言えば大河の痕跡を名前に入れたかったけど。

 それは、大河の嫁である久美子の権利であって、それはオレには無いもんな。


「はいはいはい」


 言って、泣いてる和美をベビーベッドに抱きに行く。

 授乳の時間で良いのかね。

 オムツのチェックもしなきゃな。


 抱き上げて、胸を出して、吸わせる。

 一生懸命に飲む娘に、オレはこいつのために生きていくことが嬉しくてしょうがなかった。


 ……うーん。でも。


 ベビーシッターと家政婦さん。

 夜中はカバーしてくれないんだよな。


 もし、夜中もカバーしてくれるなら、もっと勉強時間を取れるんだけどなぁ。

 でも、無理なものは無理だしなぁ……。


 ねむ……


 オレは欠伸をしながら、和美を抱き直した。

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