おまけ9・進美、はじめての

 そして藤井は浴衣の中に手を入れて、オレの身体を触った。

 色々、触られたことのないところを触られる。


 ……正直、あのクソどものところで売春をさせられそうになったことを思い出した。

 思い出したけど……


 気持ち悪いとは思わなかった。

 

 だから自然と、藤井の身体に手を回す。

 筋肉質で、硬い身体……


 藤井の唇や手がオレの身体を這い回って、オレを翻弄した。

 どのくらい触られたのかわかんねぇけど……


 藤井が、オレの脚を開かせて……その……


 ああ、とうとう……

 

 そう思い、覚悟して


 オレは目をギュッと瞑り、身構える。


 藤井が入って来て、すぐに痛みがやってきた。

 俺が18年の人生で、1回も味わったことのない痛み…… 


 ブチッっという音がしたような気がした。


(……これでオレもオンナになったんだな)


 そんなことを頭の片隅で覚えて、そっと目を開けたら


 藤井のヤツが、動揺していた。


 ……ムカっとした。

 こいつ、オレを遊んでる女だと思ってやがったな?


 だから


「……処女で悪かったな。文句あんのか……?」


 そう言ったら


「い、いや……悪いわけないけど……」


 そんなことを言いながら、しどろもどろ。


 で、こんなことを言った


「えっと……俺、結婚した方が良いか?」


 は……?

 何言ってんだ?


 それは全く想像していなかった言葉だったから。


「……オマエ、アホか?」


 言って、笑った。


 オレは破られた痛みがあったけど、それを忘れるくらい笑った。


 すると


「……何で気遣いしたら笑われるワケ?」


 と、文句言って来たよ。


 ……うん。

 確かにちょっと、ヒデエかも。


 冷静に考えると、そう思う。

 女の初めてを奪ったことを、大喜びして気遣いしない男より、何倍も良いだろ。

 少なくとも、気遣いはしてるんだし。


 確かにヒデエ。


 だから


「……ワリィ」


 ……謝った。謝って


「……気にすんな。結論が先にあることだから、これも想定済みなんだよ。むしろ、今まで延々映画見てオマエと遊んだのが、使命からすると、無駄なんだ」


 本来なら初日でお前に抱かれるのが正しい臣下の在り方なんだよ。

 そうしなかっただけでも正しくないんだ。


 でも、藤井は気遣ってくれて


「……で、どうする? やめるなら中止するけど?」


 そんなことを言ってきたんだけど。

 それはダメだ。


 そんなのただの我侭だ。

 だからオレは首を左右に振る。


 そして言った。


「……これ以上無駄な時間を使うのは陛下に申し訳ない」


 すると藤井はそれを受け入れてくれて


「分かった」


 また、セックスを再開しようとする。

 ……そこでだ。


 どうしても、やってみたいことがあったから


 お願いしたんだ。


「……その代わり、このセックスは恋人設定でして欲しい」


 オレは恋愛なんてしたことない。

 そしてこれからも無いだろう。


 だから、藤井とのセックスが俺の最初で最後のセックスなんだ。

 だったら……普通に恋愛してセックスに至った女の気分くらい味わってみたいんだ。


 ダメかな……?


 少し不安になった。

 不安になったけど……


 藤井は


「……分かった。……愛してる。進美」


 ……受け入れてくれた。

 ものすごく、嬉しかった。


「だいすき……大河」


 オレの方もそれに合わせる。


 藤井がまたキスをしてきて、口の中に藤井の舌が入って来た。

 オレは応じる。恋人設定だもの。


 うまくやれてるかどうかわかんないけど、なんだか幸せな気分になった。

 そして、どんどん、なんだか藤井が好きになっていった。


 それが仲間としてなのか。女としてなのか。


 わかんねぇけど。


 やがて藤井が動くのを止めて、オレの中に何か熱いものが流れ込んで来た。

 ああ……藤井がオレに……


 義務でやったはずのセックスだったけど。

 オレの初めてのセックスはとても幸せなものになったんだ……。




 ラブホ出るとき。


 藤井がオレが歩き方変になってるのを見て


「おい、大丈夫か?」


 また、気遣われた。

 だからオレは


「大丈夫大丈夫。これぐらい平気だ」


 ……言って、俺は自分の腹を触った。

 1回じゃ不安だったから、3回出させたけど。


 ……5日くらい生きてるんだっけか。

 条件が良かったらもっとだったっけ……?


 それまでに藤井に自覚が来たら、確定なんだよな。

 そうなったら……オレが母親になるんだな……。

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