おまけ6・進美、主人公と出会う

「進美、あなたが次代の四天王候補に選ばれました」


 ある日、陛下……当時は殿下……にそう伝えられた。


 陛下は、オレに洗脳された家臣たちを解放したいという下心はあったにせよ。

 本当にお傍に置く一番の護衛としてオレを扱ってくれた。


 そんなオレに、陛下はある日そう仰られたんだ。


「……四天王?」


 無論、知ってた。

 ヒーローだもんな。


 オレもガキの頃、テレビで報道される四天王の活躍には夢中になってたときがあった。


 ……いつの間にか、それを斜めに見るようになったんだけど。


 それに……オレが?

 なんだか信じられなかった。


 でも


「ええ。四天王。……あなたはそこで同じ四天王に選ばれた男と転写なさい」


「え」


 転写って……。

 陛下、オレに結婚しろと仰るんですか……?


 そう思ったので


「恐れながら殿下、殿下は私に結婚しろと仰ってあそばされているのでしょうか?」


 そう、訊ねた。

 すると


「したければしていいです。もっとも、相手の同意が要る問題ですけどね」


 陛下から返って来た言葉がこれだった。理解できなかった。

 ……当時のオレは、まだ転写の詳しい仕組みについて知らなかったので、そういうトンチンカンなことを訊いたんだ。


 そこで、その場でオレは陛下に本当の転写の仕組みをレクチャーされた。

 そして


「そういうわけです。理解できましたか?」


「はい」


 ……本当の転写の条件。そこから人類側が考案している国防手段……。

 そんなことをずっと続けてきたこの国に恐れを感じたし。


 ……目の前にこの主君が、そんな普通の女だったら泣いて嫌がることを平気で受け入れていることへの尊敬の念が抑えられず。


 不安だったけど。


「謹んでお受け致します。殿下」


 その場で膝を折って、四天王就任の話を受けた。

 オレは臣下なんだから、勅命は全て受ける。

 それが何であっても、だ。




 その日、オレは子供を作ることが決定された。

 ……正直、オレは結婚する気はなかったんだ。


 だってオレ、カスの子供だし。

 元々犯罪者だし。


 そんなもんが子供残したらいけないし。

 それに相手も嫌だろうし。


 だけど、転写の任務だ。

 国の要請で、やむ無くセックスして子供を作る。


 ……これだったら、オレも子供を作っていいよね?


 許して貰えるよね?


 ……子供が生まれたら……


 絶対に、自分よりはマシな人生を送らせてあげないと。




 そして。


 残りの四天王も決定されて。


 先に正式決定されてて、この事情を最初から知っていた華族出身の女……小石川翔子と一緒に。

 謁見の間で会ったんだ。


 四天王唯一の男で、オレの転写相手……藤井大河に。


 最初資料を見たとき、なんか卑屈そうな目をした男だなぁ、と思って。

 こんなんにオレは孕まされるのかと、ちょっと嫌になった。

 でもこれは陛下からの勅命だから、それは決定事項だしな……


 やだなぁ……

 こんな目の男、モテなかったに違いないし。


 すんげえ自分本位のヒデえセックスしそうだし。

 オレ、我慢できるんかな……そう思っていたんだけど。


 謁見の間であいつと、最後の女四天王の山本久美子が四天王入りを承知したのでメンバー全員正式決定。

 その後、急に舞い込んだ不平士族が起こした立て籠もり事件解決に駆り出されたとき。


 ……アイツ、オレが何を大事に思ってるのかを察して、それをなにひとつ曲げなくていい形で、面倒な仕事を片付ける方法を考案してくれたんだ。


 正直、それでアイツがかなり好きになった。

 多分、信頼したんだと思う。


 ……でも、それはライクであってラブじゃないんだよな。

(ライクとラブは英語。古代語の)


 だからまあ、まだあとほんの少しだけ。

 アイツと、仲良くなる努力をしてみようと思った。


 ……オレだって、義務じゃないセックスをしてみたい。

 それぐらい思っても許されるよね?

 仕事で、止む無くやるんだし。

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