おまけ3・四天王になりたかった男の話
俺は四天王に抜擢される日を夢見て、日々修行に明け暮れていた。
俺は魔力保持者。
その内容は「電気使い」
高圧電流を身体から流すことができ、そして俺自身は絶対に感電しない。
自慢のチカラ。
……四天王。
四天王は皇帝陛下の剣であり、人々の安寧を守る正義の味方だ。
だから俺は四天王になりたかったんだ。
……でも、今回の皇帝陛下の代替わりにおける四天王再編には、俺はお呼びが掛からなかった。
俺の代わりに選ばれた四天王は……
金髪の華族の女、ちんちくりんの女、眼鏡の女、そして背がやたら高くて、目つきが暗いネクラっぽい男。
……ほっとんど女。
半分は男にしろよ。せめて。
……これ、差別じゃね?
次の選挙で、四天王の人選に男女平等を! って言ってる人がいたら投票してやる。
そう、心に決めた。
クォーター制だクォーター制!
古語だから意味はよく知らんけど!
むかついた。
イライラした。
悔しかった。
……そして、諦めきれなかった。
ひょっとしたらさ、俺が魔力保持者としてさらに上の位階に行けば、上の人も考えてくれるかもしれん。
四天王の人選は間違っていた。今からでも遅くはない、変えよう! って。
特にさ、明らかにあのちんちくりんは要らんだろ!
弱そうだし!
そう思って、探したよ。
俺の花嫁候補!
俺の魔力は電気だから、金属関係の魔力保持者が理想だ。
俺の魔力と相性がいいのはそれだろ。
いないか……?
金属操作を可能とする魔力保持者……?
探しまくった。
結婚相談所でも、魔力保持者という条件で嫁候補を探した。
……でも、なかなか見つからない。
半ば諦めようと思ったとき
……居た。
見つけたんだ。金属の魔力保持者。
名前は「
平民の女。ただし、その2代前が会社経営してて、その遺産で金だけはあるらしい。
(まあ、その会社は、当時の一族の跡取り息子が若くして急死したせいで、経営者一族が社長の地位から転落し、今は関係ないらしいけど)
この女の魔力は「金属使い」
そのまんま。一番欲しかった魔力。
……手に持った金属の形状、電気伝導率、熱伝導率の操作。
磁性付与、そしてその消去。
俺が欲しいと思った能力が全部あった。
……この女と絶対に結婚しないと!
「
実際に会うと、問題の女は開口一番そう言って来た。
ニコリ、と微笑みながら。
……マジか!?
俺はその一言に、小躍りしたい気分になった。
それはつまり、俺に結婚の決定権があるってことじゃん!
それだけでなく
こいつ、見た目は悪い女じゃないし。最高だ!
スレンダーで、美麗って感じの長髪美人で。
余裕で子作りできる容貌。
だから俺は
「冨林さん、結婚してください」
……その場でプロポーズした。
俺たちの結婚生活は自由だった。
俺は日々修行に明け暮れていたし、嫁は家のことは俺の雇った家政婦に任せきり。
自分磨きというやつに専念するばかり。
エステだとか。ヨガだとか。
俺としては別にそんなことして貰わなくても良かったのだけど、別にどうでも良かったので何も言わなかった。
(大した金でも無いからな。俺、不動産収入と株で稼いでいるから)
ただ、日々「お前は俺に養われているのだから、俺のことを信頼して愛するように」とは言い続けてはいたけど。
するとアイツは笑顔で「もちろんです。あなた」と返して来た。
……準備は万端だな!
だからまあ、毎日寝る前に必ず種付けは欠かさなかった。
俺が養っているのだから、夫婦間の力関係は俺の方が上。
これで妊娠したら確実に俺に転写が起きる!
そうすれば、俺は金属を操り、同時に電気も扱える無敵の魔力保持者になれる!
絶対に四天王入りだ!
俺はそのエックスデーを今か今かと待ち侘びた。
そして……その日が来た。
ある日、一日の修行を終えて、家に帰ると嫁が言ってきたんだ。
「あなた、喜んでください。……赤ちゃんが出来たんです」
ニコニコと微笑みながら。
俺はその一言にギョッとする。
だって……
俺、自覚無いんだが?
金属使いになった自覚が。
ということは……
理由は分からんけど、こいつに転写が起きたのか。
そう、判断した。
……そのときは。
だが、それが間違いであるとすぐに気づくことになった。
「これを見てください! 間違いないでしょ!?」
……笑顔で妊娠検査薬を差し出して来たんだ。
あ……なるほど。
俺は賢いので、すぐに理解した。
この女……浮気したんだな。
こいつに転写が起きたのなら、こんなもの必要ないもの。
……転写については経験者の話を徹底的に調べたからね。
知ってるんだよ。
……転写が起きたらその瞬間、本人に自覚があるってな。
だから構造上、妊娠検査薬は不要なの。
そんなものを使っている以上、この妊娠では転写が起きてない。
魔力保持者同士の夫婦の最初の妊娠のはずなのに。
なのに、起きていない。
だとしたら、これは魔力保持者じゃない相手とのセックスの結果だ。
それ以外ない。
だから俺は……
その場で嫁の腹に思い切り蹴りを入れた。
……酷い?
おいおい。
なんで俺の種でもないガキを育てないといかんの?
それにさ……
要らないんだったら、この腹は早く空っぽにしないといかんだろ?
時間がもったいない。
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