おまけシリーズ(本編の裏設定関係、または一般であり得る話)

おまけ1・惑星のプロローグ

 私はこの宇宙に生まれて、ひょんなことから惑星としての最高の権利「生物創造権」を得たので、自分に居住する住人を作ることにした。


 生物創造権……惑星は掃いて捨てるほどあるが、これを得られる惑星はほんの一握り。

 私は惑星のエリートなのだ。


 生物創造権を得た惑星は、自分の身体の上で生活する生き物たちを創造することが出来る。

 細菌みたいなしょうもない生命じゃないぞ? 生き物を作れるんだ!


 ……ワクワクした。


 どんな生き物を作ろうか?


 色々考えたけど……


 どうも、私は自分のアイディアに自信が持てなくなってきた。

 どれも面白いと思えない。

 で、思ったのが。


 ……他の惑星の作品を参考にして、やってみよう。


 で、色々と参考にするために見て回ったんだけども。


 これもどうも、面白くない。


 ……どいつもこいつも、物理法則って基本ルールに忠実に従ってて、面白味が無いんだ。

 もっとはっちゃけようよ! 遊ぼうぜ!


 あいつらと私は違う。

 私は枠にはまったものを住民にはしないぞ、と。

 プライドを持つことにした。


 そこで……


 テキトーに選んだ他の惑星の知的生物が、想像の中で考案した「モンスター」という生物群に目を止めた。


 面白い……


 物理法則で考えると、無理がある生物ばっかりだけどさ。

 そこは私は、惑星としての力で下駄を履かせることにした。

 体重と体積、消化吸収能力による栄養状態……そういう諸問題を全部下駄を履かせて解決した。


 そしてたくさん作った。

 ゴブリン、キマイラ、オーガ、ドラゴン、マンティコア、ユニコーン……


 いっぱい作った。

 作った後。


 最後に、この住人たちの頂点に君臨する支配種族を作ろうと思った。


 ボディタイプはテンプレにした。

 身体の構成が放射状に広がっていて、腕が2本、脚が2本、頭が1つ。

 これが宇宙での知的生物のテンプレスタイル。生物としてのデザインは別に凝らなくていいや。


 問題は中身よ中身。


 まず、怒りや恐怖、悲しみ、恨み。

 そういうマイナス感情を持たない生物にする。


 みっともなく怯えたり、怒りに震えて我を忘れたり、過去のことをいつまでも引き摺って呪い続けている生物を「私の知的生物」にしたら、他の惑星に馬鹿にされる。

 そんなのムカつくよな。

 あと嘘を吐く生物ってのもみっともない。正直者が一番よ。

 だから深層心理で「絶対に嘘を吐いてはいけない。そんなことをするくらいなら死んだ方が良い」と思ってしまう生物にしよう。


 あと、種族としてのレベルアップに己の存在意義を賭ける生物にしよう。

 そのためなら親殺し、自分殺しも厭わない。

 頻繁な更新って大事でしょ?


 妊娠期間も短くして、成人するまでの時間も短くして……

 近親交配の遺伝子異常もマズいな。これもナシ。


 あと、寿命も取っ払おう!

 あくまで死ぬときは、自分より優れた者が現れたとき。

 常に強さが進化している状況にしないとな。


 私の最強の生物だから、高い身体能力を与えて。腕や足が吹っ飛んでも、ちょっと休めば再生するようにする。


 そして最後に、最高のプレゼント「惑星の力」を与えた。


 その個体ごとに「そいつの理解できる」物理法則を超えた超常能力を与えるのだ。


 これこそ、支配種族に相応しい能力構成だろ?

 ……完璧!


 そう思って、200年ほど自分の創造した世界を見守って来た。


 その感想は……

 つまらない。


 ……退屈なんだわ。

 

 支配種族たちは、自分を高める行為を淡々とやるだけ。

 何も起きない。超つまらない。

 レベルアップ試験以外では殺し合いしないし。他の生物を絶滅するまで狩り尽くすようなこともしない。

 ……なんなの?


 ……怒ったり悲しんだりって、面白かったんだなぁ。

 だから他の惑星の奴ら、取り払わなかったんだ。マイナス感情。


 ……私、最初「支配種の知的生物からマイナス感情を取り払うなんて、自分はなんて鋭い視点を持ってるんだろう」って思ったけどさ。

 他の惑星は、気づかなかったんじゃない。あえて、してなかったんだ。


 そこに気づくの遅すぎたわ。

 ……どうしよう?


 もう、やり直し利かないし。

 これでやっていくしか……


 あーあ。

 せめて「強欲」を残しておけば、戦争を起こしてくれて面白いものが見れたかもしれないのに。

 それも取っちゃったし……


 ゴブリンたちはゴチャゴチャやってるけどさ。

 あいつらの殺し合いなんて、面白くもなんともないんだよな。

 レベルが低すぎてさ。


 あーあ。


 そう思い、さらに100年経った頃。


 他の惑星から、別の支配種の知的生物がやってきた。

 そして、それは奇しくも、私の作品群の参考にした惑星の元住人で。


 詳しい理由は知らんけど、元々の惑星に居られなくなったらしい。


 で、私に降り立った。


 ……正直、複雑な気分になった。


 こいつら、私の作品じゃ無いんだよなあ。


 でもさ……


 見てて、すげえ面白いんだ。

 ドラマがあった。


 高い仲間意識、仲間でありながらも抱いてしまう敵意。

 執着、そして強欲。


 ……こっちの方が支配種としては面白いね。

 だから他の惑星の奴らは、概ねこんな感じなんだね。


 で……


 こいつら、自分の居住空間を得るために、私の支配種族の一部族と戦争をはじめやがった。

 戦って勝たないと、ここに住めないと判断したらしい。

 でも、おそらく勝てないよ。


 最強だもの。


 私の種族。


 で、見守っていた。

 見守っているうちに。


 ちょっと、思った。


 ……こいつらにも、惑星の力を与えてみたらどうなるだろうか?

 こいつら、惑星の力を乗せるための脳内の受容体が標準装備されていないから、一握りになってしまうけど。


 そうしてみたら、こいつらが勝つなんて未来が来るかもしれない。

 それ、すごく面白そう。


 ……ここの私の種族の部族長は……「時間を1分停止させる」そういう、惑星の力を与えてるんだけど。


 私は、その余所者たちの指導者に「時間を50秒停止させる」能力を与えてみた。

 たまたま、脳内の受容体があったのよ。そいつ。


 で、ついでに。


「相互に相手を大切な存在であると思い合っている関係性で、交配して妊娠が起きると、交配に積極的だった方に相手の添付能力がコピーされる」という法則を追加した。


 さーて……気づくかなぁ?

 お前らが生き残る目を。


 そしたら……


 勝ちやがった!


 50秒と50秒を足し合わせれば、1分を超える!

 そして事前に「戦いに負けたら縄張りを全部譲れ」という約束を取り付けて、戦えばOK。


 そのために、色々お膳立てしたよ。


 私の種族の部族たちに、余所者の助力が無いと詰む状況を用意した。

 具体的に言うと、縄張り内の食糧を激減させた。

 こうなると、他所に行くか余所者たちを食糧にするしかない。


 余所者たちは「食糧を生産する技術があるから共存しよう。俺たちを殺すのはやめてくれ」って言ったようだけど。

 私たちの種族に言わせると「お前たちの言う俺たちの定義が分からない。そんな約束をすれば、我々は無抵抗になる。そんな約束は結べない」になるから。

 話し合いにならない。面白過ぎ!


 これだよ……こんなのが見たかったんだ。


 で、最終的に「縄張りを賭けての決闘。2対2。互いに番で」

 いやあ、興奮したなぁ。


 男と女、ペアとペアで殺し合うの!

 興奮しないわけがない。


 そして私が想定した能力の使い方してくれたし。


 ……とても満足した。


 満足したから。

 私は、この余所者たちを見守ることにした。


 ……後継者に、初代に持たせた能力と同じものを持たせた上、加えて「人格面と体力面で、指導者に相応しい性質になる」ように、受精着床した瞬間に基本設定することで。

 この人格面だけど、それは初代の人格基礎データの転写。まともな人生を送ると、余所者のリーダーは必ず初代と同じ性格の人間になるのだ。すごいでしょ?


 この、基本設定をするのが、新しい種族を作るのと同じくらい手間がかかって面倒なんだけど。

 まあ、しょうがないよね。滅ばれると面白くないし。


 ……そして目論見通り、余所者たちは指導者の後継者は「初代と同じ能力を継いだ者」にするように決めてくれた。

 よっし!


 これからは退屈しないで済むぞ!

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