第52話 魔王との対面

「そういやさ」


 俺は歩きながら、隣で乗馬している久美子に問うた。

 彼女は俺の方を見ながら


「何?」


 そう、軽い感じで返してくる。

 俺は聞いた。


 かなり気になっていたことを。


「……魔族の服って自作なんかね?」


 ちょっとさ。

 今日、実際の生態を見て、信じられなくなったんだよね。


 こんな日常を送ってる種族、あんな貫頭衣を作れるのか? と。

 そりゃま、粗末でもさ、服だって知恵の塊でもあるわけで。


 ……全裸で生活している方がなんかしっくりくるんだよなぁ。


 そしたら


「ああ、あれは奉仕種族というのが居て、そいつらが作ってるらしいよ」


 久美子から帰って来た答えは予想外のものだった。


「……奉仕種族?」


「うん。奉仕種族」


 ……なんでも。

 服だとか、土器などの簡単な道具だとかを作る別種族がいるそうな。


 魔族は、彼らからそういうものと、たまに彼ら自身の肉を徴収する代わりに、彼らを大型の魔物から守ってやる。

 こういう感じだそうで。


「……家畜だな」


「そうだね。家畜だよね。……服が作れるってことは、かなり知能が高いはずなのにね」


 そして久美子は付け加える。


 ひょっとしたら、初代皇帝陛下が魔王に領土を賭けた決闘を挑んだとき。

 こちらから賭けるものとして「全人類の奉仕種族化」なんてものをテーブルに上げたのかもね。

 それだったら、考えてもいいんじゃないかなと思わないでもないよ。

 すごく優秀な奉仕種族になりそうだし。

 それに、魔族の感覚でいけば勝てると思うだろうし。

 仮に負けても、他の部族に吸収されちゃえば、自分の部族の命は守れるしね。


 ……人間だと大変だけど、魔族の感覚だとそれで問題ないと思いそうだと思うんだ……。


 なかなか、楽しい見解だと思う。

 人類としては立ち会いたくないけどな。




「レアキ ニンゲン ロミス ポッキー」


 歩いた先で洞窟に辿り着いたら、奥から魔族が出てきた。

 かなり大柄。


 ざんばら髪の毛の色が銀色。身長は3メートル近く。

 で……デカイ。


 筋肉も凄まじく、巨漢という言葉がとても相応しい。

 しかし、顔はイケメンだったのでちょっとだけ不釣り合いな感じ。


「ヨウ グロンギ ヴァーン ジャス?」


「ジャス」


 巨漢と外交官の外野さんが会話している。 


 俺は久美子に聞いた。


「何て言ってんの?」


「人間の使者、ポッキーの契約を。あなた魔王? はい」


 ……なるほど。

 しかし、ポッキーか今回は。


 お菓子会社ウハウハだな。

 株価上がったりするんかしら?


 そんなことを考えていたら


「……分かってると思うけど、インサイダー取引しちゃダメだよ」


 久美子に釘を刺された。


 わかっとるわい!


「マニ コーガミ ポッキー ニンゲン」


「ジャス ハドヴァ」


「ポッキー沢山欲しい。はいはい」


 ……なんかなぁ。

 凶悪な種族なのに、話してる内容がなぁ……。




 そして書状を魔王に手渡しして、契約成立。

 晴れて、地球帝国はウランを掘り出すことが出来るようになった。

 晴れ晴れとした気分。


 そして魔族の集落を出るとき、土器を囲んで鍋をしている集団を発見。


 そして麦わらの一味の宴のように盛り上がっている。


 ……多分、食べてるのあれだよなぁ。

 さっき死んだばかりだから新鮮だし。


 確認したくねぇ……!

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