第46話 同格化と支配のルール
最近、久美子と一緒に行動することが増えてきた。
向こうがそうしてくれているのかな。
まぁ、あと久美子からの転写が済めば、陛下に転写をして差し上げれば使命は完了するのだけど。
そうすると、急がないといけないよね。
ただなぁ……それでいいのか? という気がしてしまうんだよな。
だってさ……
久美子はまあ、真面目な女性だし。
雰囲気も清楚だし……
ひょっとしたら……
まぁ、うん。
進美は……アレだったわけだし……その
別に俺は拘らないけど、向こうは大事かもしれないわけで。
多分今、転写が起きる条件は整ってると俺は思うんだけど。
踏み切って、良いものなんだろうか……?
まさか、訊くわけにもいかんしなぁ……
「久美子、経験あったりする?」
なんて。
100%アウトだろ。
瞬く間に信頼がゼロになると予想する。
転写……
条件が厄介すぎるよ。
これまでの歴史でも、これで泣いた人はいっぱいいるはずだし。
なんでこんな条件なのか調べた人って、居るんだろうか……?
そこが気になったので、俺は王城の資料室に向かった。
(……俺でも読めそうな、転写の研究結果みたいな本無いかな?)
そんなことを考えながら、本棚の本のタイトルを目で確認していった。
(魔力の記録、魔族の魔力、魔族の生物としての習性……どれも違うわなぁ……)
俺はそんな感じで、目当ての本を探して悩んでいたら
「……何の本を探してらっしゃるんですか?」
いきなり、背後から声を掛けられた。
振り返る。
そこには微笑んでいる眼鏡の女性……久美子が立っていた。
「あ、久美子。何の用?」
いきなりだったので、ちょっとドキドキしている。
これは恐怖に近いかもしれない気がする。
……いや、別に彼女が怖いってわけじゃないけどさ。
「ちょっと大河さんに用事があったんですが、お先にどうぞ」
お先にどうぞって……まあ、久美子に聞いたら答えが返ってきそうな気はするけども。
なので、俺は訊ねたよ
「ちょっと転写に関する研究本無いかなと思ったんだ。条件がさ、なんでこうなのかな、と……」
ちょっとだけ言いづらかったけどね。
別に恥ずかしいことを訊いてるわけじゃ無いんだけどさ。
普通の生物としての営みのはずだし。
すると久美子は……
「……それはですねぇ……」
ん~、と少し口に指先を当てて考える仕草をする。
そしてこう言った。
「ここでは転写の起きる条件を解析しようとした研究本はまだ見つけて無いですね……すみません」
そうなのか……
久美子が見つけられてないなら、ここには無いのかもしれないな……
「ですけど……」
……ですけど?
「……これは私の予想ですけど、それを念頭に置いて聞いて下さいね?」
そう、前置き。
俺は首を縦に振った。
それを見て。
久美子は自分の見解を話し始めた……。
「元々ね、私たちの母体になった民族の神話には、夫婦は立場は同格であるって考え方があるんですね。夫は妻の奴隷でも無いし、その逆でもない。他所の民族では妻は夫の持ち物であるって考え方が主流だったんですが」
「……そうなの?」
「ええ。何せ、妻の約束を守らず、妻に恥を掻かせた夫が、妻に殺されそうになる話が載ってますし」
そうだったんだ……。
で?
「それで?」
先を促す。
すると
「とはいえ、夫婦関係を決定づけるセックスという行為は、相手を支配する側面がある。セックスで主導権を握ってる方は、その瞬間、パートナーを支配しています。どんなに綺麗事を言っても、そういう風に本能的に感じてしまうのは否定できないでしょう」
なるほど……それは確かに。
で、それがどう繋がるんだ……?
「妊娠が伴うセックスが許されるのは、夫婦の間のみ。妊娠が起きたとき、その男女は同格になる。それが魔力に働きかけられて、相手の魔力を写し取り、同じことができるようになる現象に繋がる」
……ん、でもそうすると……。
「それだと夫婦が同時に互いの魔力をコピーされないと駄目なんじゃ……?」
「それが、セックスの主導権と繋がるんです。支配している方が、されている方からコピーしてしまう。逆の方は支配の関係で出来ない」
……なるほど。
面白い説ではあるけどさ……
確かに、年下ヒロインが年上主人公と夫婦になった瞬間、年上を呼び捨てタメ語になるってのは定番の興奮ポイントだし。
その逆もあるよな……
こういうの、人間の本能で「本来夫婦は同格であるべき」って考えているから、そこに共鳴して興奮してると思うんだよね。
まあ、なんとなく納得できる説かもしれない。
「……で、久美子の方は何の用なの?」
そう言って、久美子の方を向こうとしたとき。
いきなり俺は彼女に抱き付かれて。
……唇を塞がれた。
柔らかい、彼女自身の唇によって。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます