第44話 惑星軍式剣術
王城の運動場で俺は剣術の訓練をしていた。
道場でずっとやってきたこと。
……ホント、これは俺が魔力保持者にならなかったら役に立たなかったな。これ。
俺の魔力前提だから、剣術で戦えるんだよ。
そうでないなら、銃火器の方が絶対強いし。
一応、士族の男子は道場に通うのが常識。
俺は剣術道場だったけど、学校の同期には、柔術やってるやつもいたし、空手やってるやつもいた。
銃剣やってるやつもいた。……銃剣は数人だったけどな。
やるのはまあ、警察官や軍人になるのに相応しい根性と規律意識を養うため、らしい。
どのくらい効果あるのか分からんけどね。
基本的な素振りの後、型の訓練をする。
居合の訓練はここに入って来るんだけども。
ここのところを、ずっと見ている影が。
セミロングの眼鏡美人。
久美子だ。
運動場のベンチに座って、興味深そうに、型訓練の様子を見てくる。
これは、彼女に対する名前呼びを開始する前からで。
……やっぱ、面白いのかねぇ?
理論の塊だったりするしな。こういう技。
俺のやってるのは惑星軍式剣術って言うんだけどさ。
元々、地球時代に日本で伝わっていた剣術の、ほぼ立ち技だけを集めて、整理整頓して作り上げた流派らしい。
まあ、普通の状況で立ってない状況ってあまり考えられないしな。軍隊的には。
倒れてるのは論外だし、座ってる状況で敵に攻め込まれてるって、もう戦う前から負けてるんじゃないの?
座り技は無いことはないけどさ、それ、あくまで通常戦闘を想定した「座った状態」なんよ。
「その動きは何を想定してるんですか?」
「これは大上段の斬撃が来ているのを想定してる」
……正直、嬉しい。
まあ、真面目にやってきたことだからね。
そういうの説明するのは楽しい。
ましてや、女性相手だしな。
……チャラチャラしやがって、とか言われて怒られるかもだけどさ。
幸せ過ぎる。
……ガキの頃の自分はきっと、こういう状況を求めていた。
女性に頑張ってるところを見守って貰えるって嬉しいよな。
「……ちょっとさ、念動力を活用して、新技を考案したんだけど、見てくれるかな?」
ちょっと調子に乗り過ぎて、俺はそんなことを言ってしまった。
剣術の素人の彼女に、技の良し悪しなんて分かるわけないのに。
なのに
「見せてください」
嬉しそうな声でそんなことを言ってくれた。
……俄然、やる気が湧いてくる。
元々は、惑星軍式剣術十本目。そういう名前。
技の構成は、抜きつけの斬撃で目を狙う。ただし、この抜き付けは回避されるのが前提。だが、回避行動を取ると態勢が崩れ、逃げ腰になる。
そこを追いかけ、大上段の一撃で仕留める。
この技、どこの流派か忘れたけど、元々虎乱刀っていう技が元になってるらしい。
俺はその技の名前が好きだったので。
この技は念入りに稽古した。
そして、念動力を手に入れた俺が考えたのは……
抜き付けと大上段からの斬り落とし。
これを念動力で高速化し、停止させ、変化をつける。
ようは高速バージョン。
だけど……決して馬鹿にしたものでは無いはずだ。
名付けて十本目・改。
この技は居合なので、俺は刀を鞘に納めた。
そして……
踏み込みながら、抜きつけて目斬り。そしてそこからの追い打ちの大上段。
……スムーズに、出来た。
……見て貰えただろうか?
俺は、久美子を見る。
彼女は……
「十本目を念動力で強化した、で良いんでしょうか?」
ちょっと、自信なさげだったけど。
……理解してくれていた!
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