第42話 惑星教と地球皇帝と
「なぁ、進美」
打ち合わせで一緒になったとき、話しかけた。
彼女の方が背が低いので、見上げてくる。
……彼女も母子手帳を取って来たのか、背中に幟を立てていた。
これでしばらく、作戦行動からはしばらく外れる。
翔子さんと一緒だ。
「……なんだよ?」
ちょっと不機嫌そう。
もう、転写済んだんだから用はないだろと言いたげ。
だけど、あえて言ってみる。
「週末に惑星教の教化集会に行ってみないか?」
いっぺん連れて行ってやりたいんだよな。
どういう反応を返すんだろうか?
「……何で?」
「お前を誘いたいから。悪いか?」
そう言ったら、念のため……みたいな感じで
言いづらそうに
「……腹の中にオマエのガキいるから、やれねえぞ?」
しねえわ!
見損なうな!
週末。
惑星教の教化集会だったので、近くの惑星教の神殿に出向いた。
惑星教神殿の象徴たる、鳥居の奥に、遙拝所。
そしてその隣に講堂がある。
いつもは、地球帝国の紀元節のときみたいなときは、遙拝所でお賽銭入れて、この
今日は教化集会に用事があるので、講堂の方へ。
「自由に座っていいのか?」
こういうところに来たことが無いのか、進美は少し戸惑っている。
今日の彼女は、真面目な場所に来るからか。
黒基調の女性用スーツだった。
で、伊達眼鏡。
そして背中に幟。
……サングラスよりは断然いいよなぁ。
「自由参加だし、チケットも何も貰わなかったろ? いいんじゃないの?」
もし違ったら謝ればいいさ、心でそう付け加えながらパイプ椅子のひとつに腰を下ろす。
進美はスーツだったけど、俺は普通の服。
まあ、みっともなくないように、清潔感は意識したけどさ。
でないと進美に失礼だし。
そしたら、進美が俺の隣に座った。
幟は脇に置く。
2人で並んで座って待っていると、壇上にスーツの男性が上がって来て。
「本日はお忙しいところ、ようこそお越しくださいました」
マイクで拡大された講師の男性の声が響く。
自己紹介。どうもこの人は惑星教の司祭らしい。
「本日は惑星教の理解を深めて帰ってください」
そう言って、話し始めた。
惑星教は、この
ご神体はこの
なので、勧誘などは一切しません。
何故この宗教が起こったのか?
それは魔力の存在です。
伝説によると、最初に魔力に目覚めた人類は初代皇帝陛下。その後、その周囲の人間にも目覚める者が現れ始めました。
本来、魔力は魔族が備える能力。
それを我々人類が得たということは、我々がこの
つまりこの国は神の祝福を受けているということです。
……ちょっと、知らないことも言われてしまった。
結構重要な話じゃ無いのかね?
俺、皇帝陛下が最初に魔力に目覚めた人類の末裔って話、知らんかったんだが?
……講師は話続けている。
「この国が神に愛されている。その証は、実は魔力の覚醒だけが根拠ではありません」
初代皇帝陛下の魔力……それが何であるのかは国家機密ゆえ存じ上げませんが、陛下の魔力だけは何故か、子供に遺伝するのです。
しかも、たった1人の実子のみに。その1人以外には決して遺伝しないのです。
そしてその実子が、皇帝として不適格な人間であった記録がただの1つも無いのです。
ゆえに、皇統継承の条件にはこうあります……地球皇帝の地位は、初代皇帝の魔力に覚醒した者がこれを継承する。
……これは、この
皆さんはそういう国の国民なのですよ……!
……え?
俺たちの皇帝陛下、そういう理由で選ばれてたの?
俺は驚いていた。
……なんでこんなこと、学校で教えないんだよ!?
自分で調べろって?
それ、おかしいだろ!
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