第33話 王都のラブホ

 進美を連れて、一緒に王都のラブホにやってきた。

 入るとき、一応手を握って引っ張り込んだ。


 ……普通の女の子相手だったら、決断力いると思うんだけど。

 進美相手なら、訴えられる恐れは無いし。


 それに多少、望まれている意思を示しておかないと、こいつに失礼なんじゃないかと思ったから。

 そんで。


「部屋はどうする?」


 まあ、俺も入るのははじめてなんだけど。

 ラブホ。


 俺はずっと、王城の転写用の部屋でしかしてないから。


 部屋の選択……

 和風、洋式、アラビアン、中華……


 7つくらい種類がある。


 このうち、俺が内容について大体想像がつくのは「和風」と「アラビアン」かな。


「和風がいい……」

 

 そう、俯きながら言う。

 いつもの調子が無い。


 ……緊張してるのかな。

 まあ、分からなくも無いけどさ。


 お互い、普通他人に見せないところを丸出しにして、見せられない顔を見せるわけだしな。




 和風の部屋。


 8畳くらいの部屋に、布団が一式敷かれている。

 その周囲に、まるで時代劇の殿様の寝所みたいに、蚊帳みたいなアレが張られてる。


 ……で


 お風呂は、シャワーなのな。

 湯船が無い……


 風呂も和風じゃ無いのかよ。

 なんというか……中途半端。


 雰囲気は綺麗だったから良いんじゃないかと思ったのに。


 こんなもんなの?

 俺もはじめてだから分からんのだが。


 ……進美も珍しそうに見回している。

 そんで、俺は言った。


「先に内部構造調べておくから、先にシャワー浴びて来いよ」


 そう、進美に言うと。


 え? みたいな顔をされる。

 ん?


 普通、する前に身体洗うでしょ?

 違うの?


 翔子さんに教えられた内容から判断して言ったんだけど。


 俺が、そんなことを考えていたら。

 それが顔に出てたのか


「あ、あ、そうだな」


 そう、歯切れの悪い声をあげて、進美はシャワー室に入っていった。




 テレビは……アダルトビデオだけしか放送されてないのかと思ったけど、一応普通のチャンネルもつくんだな。

 まあ、急にニュースや天気見たくなる場合も考えられるし、それは当然か。


 ゴムは……枕元にあるけど、今回は要らないな。

 転写目的だから、避妊する意味が無い。


 他にも備品の位置を色々調べていたら。


 シャワーを終えた進美が出てきた。


 朱色と表現するのがぴったりの、薄い浴衣みたいなのを身に着けている。

 この浴衣、時代劇でよく見るけど。

 正式名称は何なんだろうな。


 ……しかし。


 今日のこいつは、メチャメチャ可愛いと思った。

 小柄だから、こいつはあまり発育良くないんだけど。

 鯉のぼり体型。翔子さんの真逆。


 シャワーで火照った感じの肌が浴衣の隙間から覗いてて。

 ……正直、興奮した。


 俺は、ムラムラしてきたのだけど。

 そんな気持ちを抑え、俺も身体を洗いに浴室に入場した。




 俺が身体の洗浄を終えて出てくると。

 進美は布団の中央に座って、テレビを見ていた。

 ちなみに地上波。

 ラブホ内のアダルトビデオ放送じゃない。


 ……こいつのイメージだと、堂々とアダルトビデオ見てそうな感じがしたんだけど。

 変な奴。


 まぁ、仕事でするわけだし。

 余計なムードとか、気にしなくてもいいのかな。

 まあ、最低限失礼にならないようにしなきゃいけないとは思うけど。


『地球帝国の憲法には政教分離の項目があるのに、惑星教だけが優遇されるのはおかしい!』


 テレビの中で、おかしな活動家が声をあげていた。

 ……やっぱ進美は、惑星教の信者なんだろうか?


 俺の実家は、細々と地球教の仏教を信仰してるんだけどね。


 ちょっと気になったから、訊いてみる。


「進美は惑星教の信者なのか?」


 すると、ぶんぶん、と首を左右に振った。

 ……意外だな。


 惑星教の最高司祭というか、神の使いとされているのは、皇帝陛下なのに。

 皇帝陛下の忠実な臣下なら、信仰しておくべきでは?


 なんて思ったけど……


 こいつ、陛下の恥になるといけないからって、顔バレを恐れてマスク被るようなやつだよな。

 自分が元々犯罪者だったから、って。


 ……とすると……


 自分が信仰することで、惑星教が穢れることを恐れているのかも。

 ありえる……


 そこに思い至ったとき。

 俺は「まずいことを訊いてしまった」という思いと、こいつに対する愛おしさが高まるのを感じた。


 だから……


 野暮なことを訊いてしまったお詫びに、俺が可能な限り悦ばせてやろうと思い。

 進美を押し倒し、キスをした。


 そしてそのまま浴衣の中に手を差し入れて、その身体を弄った。


 ……進美のヤツは、全く抵抗しなかったし、自分から動かなかった。

 まあ、主導権がこっちにないと転写先が俺にならないから、当たり前なんだけど。


 でも、あまりに動かないもんだから、ひょっとして俺とやるのは本心では嫌でたまらないのかと思ったんだけど……

 腕を、俺の身体に回して来た。


 ……少しだけ、ホッとした。


 そして……


 トロンとした目付きの進美を前にして、俺は彼女とひとつになろうとしたとき。


 ギュッ、と彼女が目を瞑り、身を固くした。

 それが何を意味するのか深く考えず、俺はそのまま行為を続け……


 ブチッ


 という感覚を感じたとき。

 ……え?


 ギョッとした。


 俺のアレに、血液がついていた。


 え……ちょっと待ってくれ。

 俺は頭に手を当てて、混乱を抑え込もうとした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る