第32話 進美の想い
王城の図書室で
「念動力の活用法を考えましょうか」
久美子が俺に、大量の本と一緒にそんなことを言って来た。
ドサッ、と。
大量の重火器のカタログ、魔剣のカタログ
俺が座ってる大机の前に置く。
「……ファンネルみたいに使うわけね」
俺は重火器のカタログをペラペラ捲りながら、久美子の意図を汲み取った。
色々考えてくれて、助かる。
「……ところで大河さん」
そんな俺に、同じ大机についている久美子は覗き込むような姿勢を見せて言って来る。
「……何?」
「……大河さんって、ロケットランチャーで撃たれても平気なんでしょうか?」
「うーん、どうだろ?」
火炎無効に、物理攻撃無効があるからなぁ。
火炎使いとネメアの獅子の効果で。
爆風と衝撃は物理攻撃で良いと思うんだけど。
爆発による炎って、どうなんだ?
確かに、痛みはあるがダメージは無い。
これがいけそうな気がするけど……。
「正直、ちょっと分からん。撃たれてみないとなぁ」
「それはちょっと危ないですよね」
……うーん。
どうするべきか……
そしてしばらくカタログを見てて……
パタン、と閉じた。
「……俺、器用では無いからな。多分念動力使いながら剣を使うのは無理があると思う」
だから……
「魔剣も重火器も正解じゃない。もっと、別のものだ」
常時ファンネル使いは実用性無いよ。
おそらく
「……ありがとう。カタログ見て考えないとこれは思いつかなかった」
そう、彼女に礼を言うと。
彼女は嬉しそうに微笑んだ。
で。
進美とはちょくちょく映画に行っているのだが。
まぁ、毎回楽しい。
進美は勧善懲悪ものが好きだった。
理由はなんとなく想像できるが、俺は訊いてない。
映画に連れていくたび、どこがかっこよかったとか。燃えたとか。
そういう話をしていた。
だからその日の誘いも同じだと思ったんだけど
廊下でまた言われた。
「おい藤井」
はいはい、と聞き流す。
すると
「ラブホ行くぞ! ラブホ!」
……え?
驚いたから、顔を見ると。
仮面をしているせいで、良く分からなかった。
……でも、感情がよく顔に出るヤツだからな。
「……王城にも転写用の部屋あるけど」
そういうと
「別にそこ以外で転写のためのセックスしてはいけないってルールは無いよな」
……まあ、そうだけどさ。
流石に制服のままラブホに行くわけにもいかないので、双方着替えた。
……流石に、ちょっと考える。
ここでテキトーな服を着て行くのは、人としてダメだろ。
なので、落ち着いた感じの若者っぽいファッションを選んでみたのだが。
進美は……
いつもはストリート系で来るのに。
今日は茶系統の、短めのスカートを穿いて。同系統の色の上着を着た……落ち着いた印象の、女性らしい服装で決めてきたんだ。
ハンドバックなんかも持ってる。
そういうの、見たことなくて。
あと……
サングラスじゃなく、伊達眼鏡にしていた。
少しでも変でないのを意識して選んで来たのか。
「……行くぞ」
俺が彼女の気遣いに感謝して、思わずじろじろ見ていると。
彼女は少し恥ずかしそうに眼を逸らしながら、そう言った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます