第23話 もう大丈夫
ある日の終業後。
行為後の会話で、ベッドに横たわったままの翔子さんに言われた。
「藤井くん。もう大丈夫だと思うわ」
もう何回練習しただろう。
翔子さんとのセックスは数えきれないほどやった気がする。
翔子さんはいつも褒めてくれるから、本当に上手くなったのか実感が湧かないけど。
彼女がそう言ってるんだ。
信じる。
でないと、やってることに全く何の意味も無いことになってしまう。
相互の信頼関係が鍵のひとつなんだ。転写は。
「……ありがとうございます」
翔子さんのもう大丈夫。
これが何を意味するのかは俺だって分かる。
それは……
「次からは、ゴムを外しましょう。……そして排卵日まで待って、集中的にしましょうか」
行為後の火照った表情だったけど。
その発言は真顔だった。
……当たり前だ。
別に男女の愛の行為でやってるんじゃないんだから。
そんなのことは分かってる。
でも……
無理筋の想いなのは理解している。
押し通すつもりもない。
翔子さんと結婚したいなんて思ってる、俺のこの想いは。
打ち明けるつもりはない。
迷惑なのは分かり切ってるし。
この人はもう、自分の人生で共に歩く男性は決めているんだから。
……この人、前に俺のこの状況は男の天国だろうって言ってたけど。
嘘っぱちじゃないですか。
地獄ですよ。
……翔子さんの魔力は「火炎使い」と「念動力」
俺がこの2つの魔力が使えるようになったと自覚したとき。
そのときが、俺たちのこの関係が終わるときか……。
そのときが、翔子さんがこの苦行を終えることができるときなんだな。
……だったら、喜ぶべきかも。
まぁ、口には出さないけど。
それは、翔子さんに失礼過ぎるし。
そして数日後。
「おい藤井」
廊下で進美に呼び止められた。
振り返る。
すると、そこには腕組みして仁王立ちしている寸足らず仮面少女が。
「何?」
聞き返すと
「デート行くぞ。デート」
……いきなりだ。
普通、日取り決めてやるもんだろう?
俺の貧しい男女交際歴でも、それくらい分かるんだが?
「いきなり過ぎんか?」
そう返すと
「オレは別にどこに行くのでも良いんだ。だから別にいつでもいい」
……あまりにも自己中な答え。
あのねぇ。
そうして、ちょっと渋るような顔をしてしまったのか。
いきなり進美は
「オマエさあ、近い将来絶対に孕ませる予定の女が頼んできてるのに、臨機応変に予定調整できねぇの? 器が小さすぎるだろ。おちょこか?」
……なんて、メスガキの本性を剥き出しの言葉をぶつけてきた。
……ああ、そうですか。
だったらいいよ。どこに連れて行っても良いんだな?
ムカっぱらが立ったので、応じてやることにした。
行き当たりばったりのテキトーデートで。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます