第12話 忠誠心は本物か
「じゃあ行くぞ、藤井」
なんか怒りながら銀行に向かう進美。
……そういや、フルネーム聞いてないな。
向こうは多分、事前に資料見てて俺の名前は把握してるんだろうな。
それが今の呼び捨てなんだろうが。
……聞いても良いよな。
少しくらい。
「なぁ」
後ろについて行きながら、訊く。
すると
「長い話はしてる場合じゃ無いぞ」
……つまり、長くなければOK、と。
「名字、教えて。下の名前しか知らんから」
そう思ったんで、そう続けた。
そしたら
「……
一言、面倒くさそうに。
佐倉……
佐倉進美か。
おっけー覚えた!
腰に吊るしている斬鉄剣を外して。
近くの警官に渡して。
俺は今、丸腰で銀行の前に居る。
隣には進美が。
……ここは、俺が動くべきだよな?
ちらり、と進美を見る。
彼女はただじっと、銀行を見ていた。
……動くべきみたいね。
「おーい! ちょっといいですかー?」
大声で、呼び掛ける。
そしてちょっと躊躇したが
「子供を人質にするのは酷過ぎるから、人質交換に応じてくれー!」
隣を警戒しながら
「体格的に大差ない女がいるから、それと交換でー!」
その瞬間、いきなり横から足を蹴とばされた。
ダメージは無いけど、痛みはある。
……やっぱ、気にしてるのか。
そうなんじゃないかと思ってたけど。
すると
「うるせえ! とっとと俺たちの言うとおりにしろ!」
「でねぇと人質を殺すぞ!?」
……そんな言葉が返って来る。
畜生……ダメか……
「なぁ」
そして俺が、この状況を前にして、解決策を考えていたら。
進美が俺に話しかけてくる。
「何? 何か打開策か?」
そう、小声で応じると
「オマエ、ライオンの筋力を持ってるんだよな?」
頷く。
すると、こう言われた
「……このシャッター、こじ開けられるか?」
えっと……
これ、人力で開け閉めするやつじゃないよね?
電動だろ?
……無理なんじゃないかな。
分からんけど。流石に。
だから首を左右に振ると
「ちっ……ダメか……」
舌打ち交じりに悔しがられる。
……その対応、ちょっと酷くない?
俺のそういう気持ちが目に宿っていたのか
「ああ、ワリィ。今のは悪かった」
一応、謝ってくれる。
そしてイライラと考え始めた。
うーん……
「なぁ」
「何だ?」
呼び掛けると、反応。
俺は進美と見つめ合う。
俺は、言った。
「……キミの魔力って何なの? そのための思考だよね?」
俺の言葉を聞くと、進美は目を丸くした。
「オレの魔力は『洗脳』……オレが意思を持って発した言葉を聞いた人間を洗脳してロボットにできる」
……聞いてみると、とびきりヤベェ魔力。
そんなもんが俺の同僚なのかよ……。
どういう経緯でこんなヤバイの見つけてきたんだ。
この国……。
まぁ、今はそれは後だ。
俺は訊いた。
「……もしかして、一度に犯人を洗脳して終わらせる方法を考えてる?」
「そうだが?」
……なるほど。
「そうしないと、犠牲者が出るかもしれないだろ」
それは陛下が悲しむ、
その選択肢は、無い。
……なるほど。
こいつ、見た目アレだし。
魔力も凶悪犯罪者風だけど。
陛下に対する忠誠心は本物なんだな。
……俺はそこでちょっとこいつが好きになった。
「意思をもって発する、というのは、洗脳する対象を認識している、という意味でいいか?」
「……まあ、大体そうだ。誰を洗脳するのかをこっちが認識していて、その状態で発した言葉を聞いた相手が対象になる」
だから、顔を見るか姿を見るかする必要があるんだな。
目隠し状態だと洗脳できないのか……。
だったら……
「俺にアイディアがある。耳貸して」
そう言って、俺は進美に耳を寄せさせ、囁く。
言った瞬間、進美の顔が驚きに染まったのが、少し気分が良かった。
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