第7話 そんなこと許されるわけが

「……正気ですか?」


 思わず、その言葉が出た。


 こんな言い方、四天王の新参者としては許されないのかもしれないけど。

 言わずにはいられなかった。


 ……ここにいる女性全員とセックスして妊娠させろ、って。

 その手のエロ本ならよく見るシチュだけど、そんなシチュ現実にあってたまるか!


 そう思ったから、思わず言ってしまった。


 すると


「……あら、不満? あなたにとって天国じゃ無いの?」


 そう、揶揄うように金髪美女が言って来る。


 思わず、カッとなってしまう。


「全部の男がハーレムが好きだと思わないで下さい!」


 そりゃそういう男がいっぱいいるのは認める!

 だけど俺は違うんだ!


 全て一緒くたにされるのは侮辱だろ!

 腹が立った。


 すると


「……ああ、冗談だから。ゴメンね。許してくれるかしら?」


 金髪美女がそう、真顔でそう言ってくれる。

 ちょっと、意外だった。


 この人、徹底的に性的に弄って来る人かと思ったのに。


 彼女は、言った。


「……気持ちの通った魔力所持者同士の妊娠が起きないと、転写が起こらないから仕方ないことなのよ」


 ……だから?

 大体転写なんて、政略結婚の一種のオプションみたいなものであって、そのオプションをメインで人倫の方を無視して良いはずがないだろう!?


 信頼できるパートナーが欲しいから、相手を魔力保持者に。それで、どうせなら自分を強化できる相手だったらなおいいな。

 ここら辺が限度のはずだ。


 決して「理想の多重魔力保持者を生み出すために、利用する」ものではないはず。


「魔力のフランケンシュタインみたいなものを作るためだけに、そんなことが許されるわけが……」


 そう、俺が自分の想いを口にすると


 それを聞いていた、俺と同じ四天王のひとりであろう小柄な少女が、頭を掻きながら、あああー、と声をあげる。


「……うっせえなあ。器が小さいよオマエ! 女のオレでも、その程度の覚悟決めてるってのにグダグダ言いやがって!」


 少女は続ける。すごくイライラした口調で


「逆に考えられないのか!? そこまでして多重魔力保持者を作り出さないといけない何かがあるんじゃないのか、って」


 そして続いた言葉に衝撃を受けた。


「言っとくが初代皇帝陛下が、この土地を支配する魔王を皇后と一緒に、互いに転写した魔力を駆使して打ち倒し、その結果この地域の土地を手に入れ建国したって伝説、嘘だからな!?」


 ……え?

 俺、学校でそう習ったんだが。


 皇帝と皇后が互いに互いの魔力を転写して、強大な魔王を撃退した。

 これは転写は愛の魔力であり、この国の建国は愛によって成された。

 そういう結論に導く、重要な話だったのに。


 自分の中にあった巨大なものが崩れ落ちていくような衝撃。


 すると


「……これ、進美すすみ


 そこで、皇帝陛下が口を挟んで来たんだ。


「……訂正なさい。その伝説は嘘ではありません。全てを語っていないだけです」


 すると


「……申し訳ございませんでした。お許しを陛下」


 俺にはとてもぞんざいだったのに。

 即座に畏まり、非礼を詫びる。

 その小柄な少女……進美。


 そこで、金髪美女が咳ばらいをする。


「……正確に言うと、初代皇帝と皇后の転写が起こる前に、皇帝陛下への転写が山のようにあったわけね。……魔王と対峙しても勝てるレベルの魔力保持者になれるように」


 ……そうだったのか。

 だから、全部語っていない。

 そういうことなんだな……。


 えっと……つまり


「また、魔王の襲来があるってことなんですか? そんなことを計画しているってことは?」


 俺がそう、必死で考えた結果を口にすると


 それを聞いた金髪美女は困ったように微笑んで。

 こう言った


「……んーと……どっちかといえば、念のために、が一番近いかな?」


 ……え~?

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