第6話 四天王顔合わせ

 謁見の間の前まで案内された。

 いよいよか……

 ごくっ、と喉を鳴らす。


「それでは、お願いします」


 扉が開かれた。

 俺は歩き出す。

 俺の隣で、山本さんも


 謁見の間には赤い絨毯が敷かれている。

 その先に、玉座がある。


 その玉座に人影がある。


 その左右に、1人ずつ。


 今はまだ、直視できない。

 事前に教えられた通り、その場で膝を折った。


「よく来てくれましたね。……良いです。顔を上げなさい。許します」


 響いて来た声は……少女のものだった。

 今の皇帝陛下は……少女?


 驚きがあったけど、それを隠して、顔を上げる。


 玉座を直視する。


 そこには長い黒髪を後ろで三つ編みにしている少女がいた。

 純白のローブのような綺麗な衣装を身に着けている。

 ……そして……とても美しい少女だった。


 髪の輝きは言うに及ばず。

 スラリとした体躯。理想的な輪郭。

 神々しい姿。


 そして。


「へえ。ふたりともなかなか可愛いわね」


 皇帝陛下の左右に控えている人影。

 そのうち、大きい方。


 それは……山本さんと同じ制服を着た大人の女性だった。


 しかも。金髪碧眼。金髪碧眼のウェーブのかかった長髪。


 ……金髪って……

 辛いこと多かっただろうな。

 そう思う。


 目の大きい女性で、体型も相当凹凸のメリハリの利いたラインだった。


 グラマラスな美人だ。でも、髪の色で色々あっただろうから、ちょっと気の毒になった。


「……男の方、言っとくけど、調子乗んなよ?」


 そして。


「……四天王唯一の男だからって、ここはお前のハーレムじゃあねぇんだからな?」


 もう一人は、小柄な少女だ。

 着ている制服はやっぱり同じ。


 ただ、仮面を被ってた。

 目鼻を隠すタイプの仮面……アイマスクだ。

 その意匠は、髑髏を思わせた。


「何か言うことは無いですか?」


 皇帝陛下の言葉。

 少女の声だが……逆らえない神気のようなものを感じてしまう。


 しかし……何か言うことか……


 すると


「女性ばかりなんですね。……逆だと思ってました」


 山本さんが発言した。

 うん。それは俺も意外だった。


 唯一の女性が山本さんで、他は全員男だと思ってたのに。

 すると


 金髪女性がフフッと笑ったんだ。

 そして、こう言った。


「……偶然、そうなったの。……と、言いたいところだけど。実はそうじゃないわ」


 ……そうじゃない?

 だったら……?


 俺は次の言葉を待った。

 それは、予想外のことだった。


「……転写目的で、この構成なの」


 ……え?

 それって……?


 転写……信頼関係のある魔力保持者間の妊娠に付随して起きる現象。

 それってつまり……


 それだけでも、大変なのに。

 続く言葉は、もっと大変だった。


 それは、こういうものだった。


「……皇帝陛下に、私たちの持つ魔力を全て転写させる。そのために、この構成……この意味、分かるわね?」


 そう、金髪女性は妖艶に微笑みながら言ったのだ。


 俺は慌てた。


 ちょっと待ってくれ!


 それってつまり……ここにいる女性全員の信頼を得た上で子作りしろってことか?

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