第4話 四天王にならないか?
お前クビ。
そんなことを言われるのではないか?
そんな妄想が湧きおこる。
だ、大丈夫だ!
俺、与えられた仕事は全部片づけて来ただろう?
クビにはされるはずがない!
はずがないんだ!
そう、思いながら端末を通話状態にした。
すると
『藤井、スマン。今いいか?』
「なんですか上田さん? 全然良いですけど」
……この人は嫌いじゃない。むしろ好きだ。
恩があるからね。
さっき言った女性の件も、この人には打ち明けている。
俺のことに親身になってくれる、数少ない人。
実は俺の愛刀の斬鉄剣も、この人のお陰で手にすることが出来たようなもんだし。
あの剣は、今から100年ほど前に「本物以上の贋作を作り上げる魔術師」の魔力を持った刀鍛冶が作った作品のひとつなんだよな。
俺、魔力で目玉を攻撃されない限り傷つかない状況だから、あらゆるものを切断できる魔剣である斬鉄剣が相性良いだろうって。
手配してくれたんだよ。
だからまあ、この人が言うことなら俺は拒否しない。
すると、上田さんはこう言ってきたんだ。
『正式な辞令は明日出るんだけどな……おめでとう』
おめでとう?
何が? と思ったら
こう、言われた。
『キミが四天王のひとりに抜擢された』
え……?
四天王……。
地球帝国の支配者である、地球皇帝の身辺警護をしている近衛兵。
その近衛兵の上の存在。
構成員は4人。当たり前だけど。
そして全員が魔力保持者。
この国の武を志す者にとっては最高位の存在かもしれない。
それに、俺が……?
絶句するしかなかったけど。
上田さんが、こう言ってくれたんだ。
『藤井。四天王だと……転写目的の婚姻があるんだよ』
転写……!
俺はハッとさせられた。
そっか……それは……
『キミは多分、ここで結婚相手を探す限り、相手を信じることが難しいと思うんだ。けれど……』
うん……そうですね……
転写目的なら、双方信頼関係が出来ることが前提なんだから
相手を信頼できない、ということは起こりえない。
『どうだろう……? 良い話だと思うんだが……? 大出世でもあるし』
俺はその言葉に、そうですね、と心で相槌を打った、
転写……
それは、魔力所持者同士が子供を設けた場合に起きる現象のことだ。
子供が出来た瞬間、その男女が所持する魔力が相手にコピーされる。
ただし、やみくもに子供を作ればいいというものではなく。
①その男女が相互に信頼関係があること。
②その男女関係で、パワーバランスが大きい方に小さい方が所持する魔力が転写される。
こういう条件があるんだ。
魔力所持者の最高峰である四天王になれば、転写目的の婚姻を持ちかけられる機会がきっとある。
だったら、真に信頼できる結婚相手に出会うことができるかもしれない。
だから……
「はい。ありがとうございます」
俺の心は決まっていた。
そして
上田さんの電話を切った後、俺は母親に見合いを断る旨を伝えるメールを打ったのだった。
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