第3話 ガキの時分の話
見合い……
俺は想いを馳せる。
俺、ガキの時分は全くモテなかったよなぁ……
ってさ。
まぁ、俺は弱かったからね。
今と違って太ってたし。
ガキの頃の俺。
俺は弱かった。
道場で一番弱かった。
道場で俺が他人に勝てるようになったのは、魔力に目覚めてからだ。
ある日突然「俺はネメアの獅子の能力を得た」と自覚した。
その日から、俺は変わった。
魔力。
この
大きく分けて2種類あって、超能力系、神話系。
俺の場合は神話系。神話にある怪物「ネメアの獅子」の能力をそのまま備えるという魔力だ。
ちなみに、全ての人類がこのチカラを持っているわけではない。
持っているのは一握り。
俺はその、一握りの人間なんだよ。
まあ、俺が凄いんじゃないんだけどな。運が良かっただけだから。
話を戻す。
俺はまあ、魔力を得てから道場で勝てるようになり、瞬く間に一番強い男になれた。
でも……
俺だって、分かってた。
これは俺の実力じゃないって。
それが酷く惨めで……
死ぬ気で身体を鍛えて、戦闘訓練も真剣にやった。
やってやって、やり抜いた。
でも……
いくらやっても、これは俺の実力じゃない。
その想いが拭えなかった。
まあ、それでも。
就職には色々有利な状態ではあったから。
辺境警備隊の実働部隊に採用されて、士族としては上々の仕事を貰うことができたんだけど。
そうすると、ガキの時分は寄ってこなかった女性が寄ってくるようになってきた。
俺はさ、自分の実力には自信が無かったけど。
自分が真面目にやってきたこと。
この一点には自信があったんだ。
俺、馬鹿だったから、そこが評価されたのかと……
勘違いした。
で、一度そういう女性と食事に行ったんだ。
その翌日……
「藤井さんさぁ、顔はそんなに悪くないんだけど、目つき暗いし、覇気がなくて全然魅力無いよね。けどさ、稼ぎは良さそうなんだよね。ATMとしては優秀。迷うなぁ」
そんなことを、仲間内で話してるのを聞いてしまったんだわ。
それ以来、女性の好意が信じられなくなったんだよな。
どんな嬉しいこと言ってくれたとしても、このヒト、裏で何を言ってるか分かんないよな、って。
……そんな状態なんだよ。
だから……
見合い相手が、信じられないかもしれない。
受けることに抵抗がある……
だけど……
(そうすると、一生独身)
それは……きっと辛い。
どこかで乗り越えないといけない壁なのかもしれない。これは。
だから
「……ちょっとだけ考えさせて。いつまでに返答すればいい?」
「ん~そうか。だったら、明日までには……」
俺の言葉に、母さんはそう言ってくれた。
通話を切って。
風呂を済ませて服を着て。
端末の前で、俺は考えた。
どうするべきか……。
俺の人生で一番大事なことかもしれない。
けど……
今の俺の状態で、果たしてお見合いなんて出来るんだろうか……?
そう、悩んでいるときだった。
また携帯端末が、鳴ったんだ。
また母さんか?
そう思ったら……
上司だった。
上司の、上田さんだった。
……上司からの電話……
終業後の……
な、何の連絡なんだろう……?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます