第2話 見合いの話が来た

 その後は簡単だった。

 奥に進むとゴブリンどもが固まって生活していたけど。

 俺はさっきも言ったけど、ネメアの獅子の魔力保持者だからな。


 ネメアの獅子というのは、ギリシャ神話の怪物の名前だ。

 無敵の毛皮を持ち、刃を通さず、矢も通じず、鈍器で殴っても効果が無い。

 つまり、物理攻撃では倒せないという特殊能力を持った怪物。

 その姿はライオン。そして住んでいた場所の名前からそう呼ばれた。


 神話にある通り、ネメアの獅子に効かないものは俺にも効かないし。

 ネメアの獅子の身体能力が、俺にはある。


 つまり常人より筋力高いし。

 夜目も利く。


 そして武器も持ってる。

 何でも斬れる斬鉄剣。


 つまり、どうやってもゴブリンに負ける要素が無い。


 こういう状況だから、ゴブリンどもの攻撃なんて、ゴーグルさえしとけば一切通じない。

 いくら来ても物の数じゃないワケだ。


 鶏小屋に狼が迷い込んで来たようなもので。

 一方的な虐殺になった。


 で、全部殺して。

 死体の山。それを前にしながら


「……終わりました」


 外で待機していた上司に報告。


『よくやってくれた。ゴブリン退治は楽そうに見えて実はそんなに楽じゃ無いからね。キミが居てくれて本当に良かったよ』


 そう、俺は労いを受けて


 今、宿舎でシャワーを浴びている。

 汚いからね。奴らの巣穴。


 ……しょうがないけど、ホント嫌だわ。ゴブリン退治。

 この国のお隣の「魔界」からいくらでも流れ込んでくるからな。

 そんなにこっちがいいのかよ?


 クソがッ!


 化け物なら化け物らしく、化け物の世界の魔界にいろよ!

 こっちの、平和な世界の地球帝国にまで入って来るな!


 そう言ってやりたいけどさ。


 言葉、通じないし。

 それにさ……


 この惑星ホシでの新参者は、むしろお前らだろ?

 嫌なら出ていけ!


 って、向こうの支配者である魔族たちが言いそうだな。


 そんなことをシャワーを浴びながら考える。


 士族の学校で習った歴史によると。

 俺たちの先祖は2000年以上前に、この惑星ホシに来たらしい。

 そこで、元々居た先住民族の魔族という奴らと戦争して、国を建てる土地を得た。

 で、その末裔が俺ら。


 だからまぁ、ゴブリンの件で「魔界の奴らの監督不行き届き」を指摘して、文句言う権利は俺らには無いのかもしれない。


 と、そう思ったときだった。


 ルルルルル……


 携帯端末が鳴った。

 無論、浴室の外。


 俺は慌ててシャワーを止めてバスタオルで身体を拭き、電話を取った。


 相手は母親だ


 画面をタップし、通話状態にする。


「もしもし母さん? 何?」


『ああ、大河。最近どうなん?』


 端末の向こうの母親の声は嬉しそうだった。

 いつもは「アンタ20才なんだから、そろそろお嫁さん探さんとイカンよ」って説教臭い感じなのに。

 ……何の用だろう?


 そう、思ったから


「要件何なの? 先にそっち言って。風呂入ってたんだ」


 そう言った。そしたら


『……アンタ、見合いしてみーひんか?』


 そんなことを言われた。

 見合い……だと?

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