第110話 夏休みも終わり学園祭の季節が来ました
夏休みも後半に入った。夏の後期講習があるので、健吾と雫と一緒に参加した。これにも文子さんと芦屋さんは参加しなかった。
そしてあっという間に夏休みも終わった。今年は去年から比べれば楽しい夏休みだった。宿題は三人…プラス二人いたけど…でやれたし、夏の前期、後期の講習会も三人だけで参加出来た。
そして海水浴も出来た。勿論、花壇の水やりも行けた。
これなら芸能界に入っていても大学で楽しいキャンパスライフを過ごせるんじゃないかと思ってしまう。
そして九月になった。始業式の初日、俺は美麗と一緒に学校の校門まで紅さんが運転する車で行くと俺のファンの人達もめっきり減って…無かった。まだ二十人に近くが校門の傍にいる。
警備の人二人と俺を守る会の人達も居る。やっぱり、学校が始まると変わらない現実が目の前に有った。仕方ない事だけど。
俺は、ファンの人達からの挨拶に、おはようございますと返すと皆さんが嬉しそうな顔で駅に行く。こういうのって大切なんだろうなと思う様になった。
そして、警備の人と俺を守る会の人達にも、いつもありがとうございます。と言うと警備の人は穏やかな笑顔になって、俺を守る会の人達は満面の笑みで返してくる。申し訳ない限りだ。今度何かお礼でもするかな。
昇降口で手持ちの靴入れから上履きを出して履き替えた後、俺の下駄箱に行くと、
はぁ、一か月前から溜まっていたのかな、可愛いカードや封筒がギュウギュウに入っていた。
それをビニール袋に入れて教室に入り自分の席に着くと健吾と雫が挨拶して来てた。
俺もそれに返すと今度は芦屋さんが
「麗人お兄様、おはようございます。夏は会えなくてとても寂しかったです」
「仕事だったんですか?」
「はい、仕事と家の事で一杯でした。ですから二学期はずっと傍に居たいです」
今度は文子さんが
「麗人さん、おはようございます。私も夏休み中会えなくて寂しかったです」
「仕事ですか?」
「はい。でもほとんど実家に帰っていたので。でも夏休みの宿題を一緒にやれて嬉しかったです」
それ言ったら…。
―えっ、セガールさん。早乙女君と一緒に夏休みの宿題したの。どこで?
―狡い。私も一緒にしたかったのに。
「それなら私も一緒だったわよ」
芦屋さんなんでそこでマウント取ろうとするの?
―えっ、芦屋さんも
―何で、何であの二人だけ一緒なのよ。
これは不味いぞ。
「いや、健吾と雫も一緒だから」
―小早川君と東雲さんは許されるけど…。
―そうよそうよ。
はあぁ、どうすれば納まるんだ。何故か、また文子さんと芦屋さんがにらめっこしている。
少しすると予鈴がなって、桜庭先生が入って来た。珍しくブラウスにスカートだ。ブラウスのボタンがはじけなきゃいいんだけど。
「皆さん、おはようございます。夏休みは楽しく過ごせましたか。体育館で始業式を行うので廊下に出て下さい」
桜庭先生いつもありがとうございます。
体育館に入って行くともう生徒は見慣れたのか…では無く、思い切り注目された。
―あのCM綺麗だったけど、生が一番よね。
―うん、でもドラマも良かったじゃない。
―九条先輩が居たのが気に入らないけど。
―いいんじゃない、エクストラみたいだし。
やっぱり見ていたか。ドラマは出番が十五分と言っても、映像としては全体的に出てくる。まあ、こういう反応になるよな。
そして校長先生のとても大切な言葉聞いた後、色々注意事項があった中で
「来週末に予定している学園祭に早乙女麗人君、芦屋真名さん、文子・セガールさんは参加しません」
「「「「「えーっ!」」」」」
―なんでーっ!
―せっかく近付くチャンスだったのに。
「皆さん、特別校則を忘れたんですか。学園祭でも有効ですよ」
「「「「「ぶーっ!」」」」」
そんな賑やかな始業式も終わり教室に戻ると誠也達がやって来た。
誠也「麗人、見たぜドラマ。かっこ良かったな」
麗人「ありがとう」
相模「CMだって良かったよ。綺麗な麗人見れて」
麗人「相模、勘弁してくれ」
川上「これからも出るのか?」
麗人「ああ、秋は受験勉強で忙しいけど、ドラマ一本とCM二本に出る事になっている」
誠也「凄いな。俺達には出来ないよ」
麗人「そんなことないよ。誠也や相模、川上にだって出来るさ」
誠也「そんな事言ってくれると嬉しくなるぜ」
相模「そうだな。二学期も宜しくな」
川上「宜しくな麗人」
麗人「三人共こちらこそだ」
こんな話をしている内に桜庭先生が入って来た。連絡事項を話した後、学園祭の役員や催し物を決めた。もう時間が無いが、手の掛からない出し物で行く事になった。
手は掛からないのだけど、何故か模擬店でうどん。ほんとに手が掛からないのか疑問だけど、そこは手慣れているんだろう。
俺は参加出来ないのでポカンと外を見ていると
「麗人、名前だけ貸してくれ」
「ああ良いけど」
中身聞いてから言うべきだった。
「じゃあ、決まりだな。早乙女麗人うどんで行くぞ。揚げは真名のエビかき揚。スープはスープオブセガールだ」
「「「「おーっ!」」」
おいちょっと待て、何だその名前?でも芦屋さんも文子さんも笑っているだけだ。ここは良しとするか。
翌週末の学園祭、土曜日と日曜日、参加しない俺達三人だけど、のぼりと垂れ幕に三人の似顔絵が掛かれている。
何故か同じどんぶりの中に俺の顔したうどん、芦屋さんの顔したエビかき揚、そしてスープの振りした文子さんだ。良く分からん?
しかし、土曜日は、開始直後こそ、まばらだった生徒が、昼には五十人近い列になり、俺達が模擬店を見に行っただけで、
―きゃーっ、麗人様(うどん)が食べれる。
―真名エビかき揚だぜ。
―ぐふふっ、上手そうだな。
―セガールさんのスープ。俺の体の中に。
みんな何か勘違いしてませんか?
土曜日に用意した二百食は午後一時で売り切れてしまった。
「明日は一般客も来るぞ。三百、いや五百は用意しないと。体制も強化だ、二班合同で行く」
「しかし、かき揚もスープも朝一番から揚げないと間に合わないんじゃないか?」
「大丈夫だ。学食のおじさんに言って、揚げ物の器具を借りられることになっている」
「スープは?」
「それも学食で、大型のずん胴鍋が借りれる」
「それなら大丈夫だな」
「みんな、明日も頑張るぞ」
「「「「「おーっ!」」」」」
良いのか悪いのか?
そして日曜日、開門する午前十時には、表に百人以上の列が出来ていた。校長が管轄区域の警察に依頼して警備を出して貰っている。これ学園祭なの?
開門前に教頭がマイクで門の外に居る人達に
「これから入場になりますが決して走らない様にして下さい。では開門します」
ドドドドドーッ!
教頭が踏み倒されてせんべいになった。嘘です。
3Aの模擬店には俺を守る会の人達と警備会社からの増員で、ロープとコーンで列を統制して何とかなっているが、凄まじい勢いで売れて行く。午前十一時半頃、俺と、芦屋さん、それに文子さんが見に行くと
―きゃーっ、麗人様よ。
―芦屋真名って可愛い。
―すげーっ、一度セガールさんに投げて貰えてぇ。
―美しい。
―写真は?
―何言ってんの、早乙女麗人保護プログラムがあるでしょう。お縄になりたいの?
―諦めます。
凄い騒ぎになったけど、それでも列は崩れなかった。ロープが足りずに相当の人数が並んでいる。うどん玉足りるのかな。
午後一時半になり、売り切れの看板が出ると
―えーっ、一時間近く並んだのに。
―そんなぁ。
―スープオブセガール残っていないのかな?
―真名のエビかき揚は?
はい、全部売り切れです。
クラスの皆も総出で対応したけど、もう息絶え絶えだ。
「れ、麗人。もうお前達の名前つけた食べ物を売るのは止めるよ」
「そうだな。そうした方がいい」
でも高校の学園祭これが最後です。
学園祭も午後四時半に終了した。片付けは明日だ。教室に戻って学園祭担当委員が生徒会に売り上げを持って行ったが、ダントツトップだったらしい。それは分かる。二日で七百食も売ったのだから。
打ち上げは残念ながら行けないけどそれは仕方ない。美麗の所は如何だったのかな?
―――――
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