第108話 海水浴は楽しい


 前々日にドラマの俺が出る場面の撮影が終わった。そして今日からはいよいよ健吾と雫と一緒に海水浴だ。


 と言っても一年の時の様な訳には行かず、紅さんの車でホテルまで行くことに。そしてボディガードを兼ねて紅さんも一緒に海水浴をする…訳では無く、軽装な感じで俺達の傍に居てくれることになった。


 後、もう一人。これは俺の本意では無いが、お母さんがどうしてもと言って、秀子さんが同行する事になっている。これは美麗には内緒だ。


 泊る場所は同じホテルだが、部屋は俺達の隣だ。ホテルには俺が行く事は口外しない様にお願いしている。

 まあ、フロントでバレるのは仕方ない。


 今年も一年生の時に行った外房の海だ。ホテルも同じだ。


 午前六時に起きて、ダイニングに行くともうお母さんもお父さんも美麗も起きていた。


「お兄ちゃん、気を付けてよ。今は有名人なんだから」

「ああ、気を付ける。紅さんも傍に居るし、大丈夫だろう」

「それはそうだけど」


 朝食を摂って少し待っていると紅さんが来た。俺はスポーツバッグを持って玄関に行くと

「行って来るね」

「ああ、気を付けてな麗人」

「うん」

「麗人気を付けてね。紅ちゃんが一緒だから大丈夫だとは思うけど」

「うん、分かっている」


 俺は玄関を出て紅さんが用意した車に乗った。ワンボックスカーで窓ガラスには外から見えない様にマスキングされている。


まず、俺の家の最寄り駅で健吾と雫を乗せた。二人を乗せると今度は秀子さんの家に。先にスマホで連絡してから行った。


 秀子さんの家の近くに来ると彼女が玄関で待っている。何故かお父さんが一緒に立っている。


 玄関に着いて紅さんが、車を降りて後部ドアを開ける。俺も車から降りて

「秀子さん、無理言って済みません」

「何言っているの。麗人の頼みを断るなんて、する訳ないでしょう。お父さん行ってきます」


 秀子さんのお父さんが俺の顔をジッと見ると

「麗人君、娘を頼む」


 頼んだのはこっちなんだけど。何か意味有る言葉だな。

「はい、秀子さんに無理言ってすみません」

「なに構わないさ」


 何故、秀子さんを頼んだかと言うと男性のボディガードが俺達の傍に居るとかえって目立つ。だから紅さんと秀子さんでガードして貰う事にした。二人とも武道では、俺と同じかそれ以上の腕だ。



 全員が車に乗ると紅さんが

「じゃあ、行きましょうか。小早川君も東雲さんも知っていると思うけど、私は紅亜希子。麗人君がうちの事務所に所属する事になったのでマネージャを拝命しています。

 今回は皆さんと同じ様に海水浴をする訳ではありません。普段着で皆さんの傍に居てボディガード役をします」

「健吾、雫。紅さんは、全日本武道選手権で七位の達人だ」

「「凄ーい!」」


「秀子さんは俺の方から頼んだ。二人も知っていると思うけど、塾の講師だけど、俺と同じ時期に道場入った同門の人だ。

 とても強い。秀子さんは、俺達と一緒に遊びながら守って貰う。マッチョな男性二人のボディガードより良いと思ってさ」


「麗人の周りは武道家ばかりだな」

「あははっ、偶々だよ」

「まあ、そう言う訳で紅さんと秀子さん、俺達宜しく」

「任せてよ麗人」

「麗人君、心配しないで思い切り遊んで。息抜きもしないとね」

「「「ありがとうございます」」」



 途中、海ほたるとかいう海に突き出ているPAで休憩をした。東京湾の真ん中に浮いている様だ。東京、神奈川、千葉が綺麗に見える。


 俺はサングラスとサンシェードをかぶって行った。何となく注目されたけど、もう無視。



 それから、海の上にある自動車専用道路を走って千葉県側に入り、一時山の中を走って外房側に抜けた。


「おう、今年も綺麗だな」

「ほんと、綺麗」

「麗人と海水浴できるなんて嬉しいわ」

「東郷さん、あくまでボディガードが主ですから」

「分かっているわ紅さん」

 分かるけど、でも嬉しいじゃない。それも麗人の方から声を掛けてくれるなんて。私の水着姿しっかりと彼の目に焼き付けさせないと。


 ホテルに着いた。俺はサングラスとサンシェードで顔を隠して、フロントの近くで健吾と雫、それに秀子さんと一緒に紅さんがチェックインするのを待った。


 本当は、チェックインは十五時からだけど、荷物を預かって貰うのと着替えをさせて貰いたいからだ。


 紅さんがチェックインを終わらせると

「部屋はもう空いているから使って良いって」

「本当ですか?!」

「助かるわ。じゃあ、早速行きましょうか」


 十二階建てホテルの十階の部屋を二つ予約した。両方の部屋ともオーシャンビューだ。


 紅さんと秀子さんが同じ部屋、俺と健吾と雫が同じで部屋だ。待合せはフロント。


 俺はサングラスにサンシェード。それに紺のラッシュガードを着ているので、先ず分からないだろう。

 健吾と雫はサンシェードは被っていないが、サングラスとラッシュガードを着ている。健吾は俺と同じ紺色、雫はオレンジ色だ。


 待っていると紅さんと秀子さんが降りて来た。紅さんはサングラスは勿論だけど短パンとサンダル、それに涼しそうなシャツに下は水着を着ている。万一を考えての事だろう。


 秀子さんは、はぁ、思い切り目立つよな、この人スタイル良すぎ。サングラスにサンシェード、ラッシュガードの上からでも分かる豊満な胸、オレンジ色の水着の様だ。


「さっ、行きましょうか」

 紅さんが声を掛けてくれた。


 ホテルは浜辺のすぐ前なのでホテルを出ると直ぐに砂浜に降りた。俺達四人で歩いていると、やっぱり目立つのか、周りの人がジロジロと見ている。


「何処にしようか」

「大分混んでいるわね」

「まだ、オンシーズンだからな」


「そこがいいんじゃない。監視台も直ぐ側だし」

「そうしようか」


 今回は、小さなテント式の日除けを持って来た。パラソルだと周りから丸見えだからだ。簡単に組み立てて、中にシートを敷く。大人五人がゆっくりと出来る程の大きさでは無いので、外にもシートとビニールベッドを置く。


 簡単に準備運動をした後、波打ち際に行った。紅さんはテントの中で俺達を見ている。


「きゃーっ、冷たい」

「最初だけだよ」


 ゆっくりと海の中に入って行き、腰辺りまで来た所で一度首まで海水に浸かると後は簡単だ。


 四人で沖の方に泳いだり、岸に戻ってきたりしている内に正午を超えた。

「麗人、お昼にしない」

「そうだな。健吾も雫も良いか」

「ああ、そうしようか」

「私もお腹空いた」


 四人でテントに戻ると紅さんが

「小早川君と東郷さんと私で海の家に行って食事買って来るから、待っていて」

「「すみません」」


 俺と雫はテントの中でサングラスとサンシェードを外すと

「やっぱり楽しいな」

「うん、麗人が有名人になってしまったから来れるかなと思っていたんだ。嬉しいわ」


 雫と話をしている内に、三人が戻って来た。三人の手にはアメリカンドッグ、おでん、焼きそば、イカ焼きそれにジュースが五本ある。


「後で定番のラーメンが三つ来るわ。皆でシェアしましょうか」

「いいですね」


 ラーメンが来るとテントの表で健吾と雫に受け取って貰い、テントの中に入れた。


「やっぱり、海で食べるラーメンは特別だな」

「うん、海水浴に来たって感じが思い切り出る」

「そうだな」


 午後からも思い切り楽しく遊んだ。そして午後三時にホテルに戻った。


―――――

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