第103話 オーノルドは突然に
当初三人で受けていた可愛塾の個別講習も芦屋さんと文子さんの参加によって、賑やかになってしまった。
秀子さんの講師担当の日は特に部屋の温度が高いのは気の所為だろうか。
六月に入り直ぐに体育祭が有ったが、俺、芦屋さん、文子さんは、来賓席に座らされ、何故か来賓の方の話し相手をする事になったのだが、去年は来ても数人の来賓が今年は二十人近くいる。
生徒会の人達が暖かいお茶とか、冷たいお茶を出すのだが、何故か俺達の所に来ては、
「うちの娘はどうかのう?」とか
「あんた可愛い娘さんだねえ。決まった相手はいるの?」
と聞いて来る。この人達に特別校則は適用されないのだろうか?
目の前では皆が楽しそうに競技をしている。俺は結局、一年の時に出たきりだ。全く持って残念で仕方ない。
美麗は、一応普通に競技をしている。特別校則が効いているので、変な事をする生徒はいないが、男子が美麗の周りに一杯いるのは、兄としては気になる所だ。
3Aに目を向ければ、健吾や雫、それに誠也や川上、相模、それに友永さんや望月さんが楽しそうにしている。座るだけでも向こうに行きたい気分だ。
「麗人お兄様。私達向こうに座りたいですね」
「麗人さん、私もそう思います。競技に出れなくても座るだけなら良いのでは無いですか」
それを聞いた桜庭先生が
「あなた達、これ以上私に心配かけさせないで。あなた達が生徒の休憩場所に行ったらどうなるか想像つくでしょう。絶対にいけません」
先生、それは分かりますけどね。俺達も高校生だから。
心でそう思っていると読まれたのか、いきなり俺の顔を見るとキッとしたキツーイ目で睨まれた。ごめんなさい桜庭先生。
仕方なしに競技だけ見てお昼休みは教室に戻ってお弁当を食べたのだが、やはり3Aの生徒以外、そのオトモダチという人達はほとんど立食状態だ。
食べ終わっても中々教室を出ない。どうしたものか。
そんな楽しい?体育祭も終わって二週間が過ぎた。賑わいは、文子さんが乱入、いや転校した時は色々賑やかだったが、学校の生徒も塾に通う人達も二週間も過ぎれば慣れたのか落着いて来る。まあ、遠回しには賑やかだけど。
そしていつもの様に放課後は、紅さんの車に乗って俺は塾の前で降りるが美麗は家まで帰宅している途中、俺のスマホが鳴った。
誰だと思ってスマホの画面を見ると知らない電話番号だ。それも外国からの電話番号。ソティーブンの物とも違う。出ようか考えていると紅さんが
「麗人さん、出なくていいんですか?」
「知らない外国からの電話番号なので」
「セガールさんじゃないの?」
「違うんです」
「お兄ちゃん取敢えず出たら。中々切れないし」
仕方なく出ると
『ハロー、レイト。オーノルドだ。中々出ないので心配したぞ』
『オーノルド、何で俺のスマホの電話番号を知っている?』
『そんな事は如何でもいいじゃないか。ところで、日本時間で来週の金曜日十五時に成田に着くんだ。一緒に夕食食べないか』
『いきなりだな。ちょっと待ってくれ』
「紅さん、オーノルドが来週金曜日こっちに来る事知っていた?」
「はい、正式に事務所に連絡が入っています」
「という事はお母さんも知っているの?」
「はい、金曜日の夕食は花蓮さんも参加する事になっています」
最初からの予定行動かよ。仕方ない。
『オーノルド、構わない』
『グレイト。ソティーブンから聞いた。一緒にBBQやったそうだな。俺は出来ないが上手い料理を一緒に食おう。レイトのセキュリティの事務所には連絡を入れてある。じゃあ、来週の金曜日に』
『分かった』
いつから俺が紅さんの事務所に所属している事になっているんだ?
「お兄ちゃん、どうしたの?」
「オーノルドが来週金曜日に成田に来るから夕飯を一緒に食べようって」
「OKしたの?」
「お母さんは、もう予定しているそうだ」
「紅さん。また、娘連れて来るなんて事ないでしょうね?」
「はい、今度は本人だけの公式な来日です」
「公式?」
「はい、仕事で来日するので、麗人さんに会いたいだけでしょう」
怪しい。紅さん何か隠してない?
その日、午後八時になってお母さんが家に帰って来たので早速、
「お母さん、オーノルドの件だけど」
「あら、彼から連絡が有ったのね」
「なんで俺が彼と一緒に食事をしないといけないんだ?」
「オーノルドは、麗人を気に入っているわ。去年の映画撮影以来で日本に来たのだから麗人に会いたいだけなんでしょ。いいじゃない」
「それは、良いのだけど、なんでお母さんも一緒なの?」
「あら、お父さんと美麗も一緒よ」
「金曜日は家族でオーノルドと一緒にホテルで夕食よ。難しく考えなくても良いわ」
それを聞いている美麗の顔が何となく険しい。
お母さん、何か企んでいる。単に友達と食事ならお父さんもお母さんも私も居なくてもいいはず。またお兄ちゃんに何かしようとしているんじゃ。
そして金曜日。オーノルドは、東京の外国要人が良く利用するホテル中蔵に午後五時に着いた。
紅さんの車で彼の休みも考えて少しだけ後から行くとロビーフロアの椅子に座って待っていた。俺達が近付くと
「レイト、久しぶりだ。撮影以来だな」
「ああ、オーノルドも元気そうだな」
「俺はいつも元気さ。レイトのお父さんもお母さん、それにミレイさん。久しぶりです」
「久しぶりだな。オーノルド」
「オーノルド、久しぶり」
「久しぶりです。オーノルドさん」
―ねえ、あれって、オーノルド・シュワルツェネッガー、早乙女麗人、霧島花蓮じゃない。
―本当だ。
―写真とってもいいかな。
―駄目に決まっているでしょ。
―この前も隠し撮りして文秋に持ち込んだ男が逮捕されたじゃない。
―そうだっけ?
なんか凄い事言っている。
「レイト、皆さん、今日は俺の名前でレストランを予約している。行こう」
「そうだな」
オーノルドのマネージャらしい人が先導してエレベータに向かった。レストランフロアに着くとエレベータホールから入口までウエイター、ウエイトレスが並んでいた。凄い。
「レイト、今日は人数が多いからここのレストランの半分を貸し切った。今日はのんびりと食事をしよう」
そう言って、オーノルドが先頭を歩いてレストランに入って行った。
どう見ても何か有るとしか思えない。
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