第75話 修学旅行に出発です


 俺達は、品川駅の改札に集合する事になっている。家から品川駅までは普段乗らない経路の電車で行くと問題が起こりそうだという事で、お母さんが気を利かせてタクシーを呼んでくれている。


 学校の有る最寄り駅で健吾と雫と合流して、二人共ちょっと驚いていたけど、一緒に乗って、ここまで来た。


 改札の傍に行くとスーツをしっかりと着込んだ人が、

「早乙女麗人様ですか?」

「そうですけど」

「私は、こういう者です。私とここに居る三名で、早乙女様と芦屋様が修学旅行の間、トラブルに巻き込まれない様に警備を頼まれています。

 常にお二人の傍に居ますが、行動を制限する事は一切ございません。我々に気にせずに修学旅行をお楽しみ下さい」

 この人達が、桜庭先生から言われていたボディーガードか。


「ありがとうございます。宜しくお願いします」

「では、こちらへ」


 俺達が集合場所に行くと


―ねえ、あれ芦屋真名ちゃんじゃない。

―それに、早乙女麗人も居るわ。

―近くに行って見ようか。

―でも、怖いお兄さんたが五人もいるわよ。

―じゃあ、写真だけでも


 何て感じで撮られそうになったが、俺達の傍にボディガードの他に、健吾、誠也、川上、相模達が傍に居てくれているお陰で俺単身では撮れない。


 芦屋さんは、雫より背が低いので、女子達に囲まれるとほとんどカメラでとらえる事は不可能だ。


 この時ばかりは皆、芦屋さんの傍に居れると有って、思い切り彼女の傍に居て協力?してくれた。彼女もクラスの人達と楽しそうに話をしている。


 そして、新幹線に乗る時は、車両が修学旅行とパネルに表示された車両に乗るので一般の人は入れない。だから何も問題ないと思ったら…。


 新幹線は、横に二座席と三座席があり、丁度一列で一班となるのだが、俺の座る三座席の隣席を芦屋さんと望月さんが

「お兄様の隣は私です」

「何言ってるの。私が隣に決まっているでしょ」

「健吾、雫。座ろう」

「分かった」

「うん」


「「あっ!」」

「小早川さん、お兄様の隣は私です」

「いえ、私よ」


 そこに桜庭先生がタイミングよく来て

「二人共、こちらの二人席に座りなさい」

「「えーっ!」」

「何であんたなんかと」

「それは私のセリフです」

「「ふん!」」


 せっかくの修学旅行だから仲良くしてくれ。



 無事に全生徒が座り点呼が終わると、少しして新幹線は走り始めたのは良いのだが、一クラス八班だから当然同じ車両に普段あまり会わないBクラスの子達もいる訳で


「芦屋さん、話ませんか」

「早乙女君、初めてなんだ。話せないかな」

「ねえ、自由行動時間の時はどこ行くの?」


 等々、俺達の席の周りはBクラスの子達で一杯になった。最初は、まだ良かったのだが、段々多くなってしまった。流石に、桜庭先生とBクラスの担任が


「皆さん、特別校則を忘れたのですか。自分の席に戻る様に。トイレ以外は無用に立たない様に」

「ほら、皆席に戻れ」

「「「「「えーっ!」」」」


 やっと熱海を過ぎた辺りで静かになった。これでは先が思いやられる。

 そして、俺がトイレに行こうとすると何故か、ぞろぞろと付いてくる。芦屋さんが立つとぞろぞろと付いていく。


 先生が止めようとすると皆、トイレです。というから先生達も苦笑いするしかなかった。

 俺や真名ちゃんが終わると、次に誰が入るかでじゃんけんをしている始末。頭が痛い。


 それでも天気は良いし、窓から初めて見る景色も綺麗でとても気持ち良く?乗っていられた。


 新幹線は初めて乗ったけど流石に早い。京都へは二時間で着いてしまった。品川を出たのが午前九時半だからまだ午前十一時半。凄いものだ。


 俺達は、新幹線を京都駅で降りると駅前のバスロータリーには五台もの大型バスが待っていた。


 ここでも俺の横や前後に座る事で揉めた。俺は健吾と座る事を決めていたのだが、芦屋さんと望月さんが


「あんたなんかと座りたくないわよ。東雲さん、一緒に座ろ」

「望月さん、あなたこそ一人で座りなさい。私が東雲さんと座ります」


 これには流石の雫も苦笑いして

「じゃんけんで決めたら」

という事になり、じゃんけんした結果


「勝ったぁ。ほらあんたが前よ」

「ふん」

 芦屋さんの隣の女子は嬉しそうだが、本人はいたって不満顔だ。でも落ち着いて?良かった。



 この日は最初、ホテルに入って、本当は一組十人部屋を四つなのだが、何故か…というか決まってはいたけど。

 俺と健吾で六人部屋を一つ、芦屋さんと雫と望月さんで六人部屋を一つとなった。

 しかし、望月さんと芦屋さん大丈夫かな?まあ雫が付いているから大丈夫だろう。


 昼食時間になりホテルのレストランというか大広間で全員で食事の時は、そこまで行く間に他の宿泊客とも会う訳で、


―ねえ、芦屋真名よ。

―ほんとだ。あの人、早乙女麗人じゃない。

―きゃあーっ、スマホ、スマホ。


 となったが、ボディガードの人から

「撮影禁止です」

と言われて、残念そうにしていた。まあ仕方ないよね。


 そして昼食が終わると学校が決めている最初の観光スポット、金閣寺にバスで行った。


 金閣寺について、ぞろぞろと二学年全員が降りたのだが、何故か外国人ばかり?日本人観光客も居るのだが、圧倒的に外国人が多い。


 でもそれが良かった。流石に外国人には芦屋さんも俺も知られていないので、珍しそうに見られただけで済んだ。


 そして次も京都では有名な下鴨神社に行った。ここでも外国人だらけ。日本人も居たけど、ボディガードの人がしっかりと仕事をしてくれたおかげで楽しく見学する事が出来た。



 最後が東寺。ここも外国人がほとんどだったけど、日本人観光客にはボディガードが対応してくれた。


 


 最後の観光スポットを見た俺達は、バスでホテルへ戻ると一時自分達の部屋に入った。ドアの前にはボディガードが立っているので、他の生徒が入って来る事はない。


「麗人、何だが凄い修学旅行になったな。俺は大部屋でみんなとワイワイするのかと思っていたよ」

「悪かったな、俺の所為で」

「全然悪くない。麗人のお陰で他の生徒には悪いけど、こんなに広くて景色の良い部屋に泊れるんだから。それにお風呂は貸切露天風呂だし」

「ああ、俺はともかく、芦屋さんは有名な女優だからな。他の生徒と一緒に入る訳には行かないだろう」

「それもそうだな」



 そして夕食は、昼食を食べた大広間で全員で食べた。食べる前に明日の自由行動について、色々注意が有ったが、特に俺や芦屋さんと同じ観光スポットで出会っても不用意に近づいたり話しかけたりしない事、ここでも特別校則は有効だと言って、生徒達からブーイングの嵐を浴びていた。



 食事が終わり、貸切風呂の時間になり、ドアのボディガードと一緒にお風呂に。彼らは当然貸切風呂の入口で警備していてくれる。本当に頭が下がる。


 お風呂は無色透明な天然温泉でとても気持ち良かった。健吾とは夏休みになるといつも一緒でお風呂や寝る時もいつも一緒だったから、二人で気兼ねなく入れた。


 来年の夏は三人で遊びたいものだ。


―――――

次話はいよいよ自由行動の日です。さてどうなりますか?


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宜しくお願いします。 

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