第74話 修学旅行は簡単ではない


 修学旅行の事は、お母さんも知っているが、


「麗人が、修学旅行。それに同じ班に真名ちゃん。うーん。不味いわね。色々な意味で不味いわ。

 一つには真名ちゃんは、既に有名な女優、そして麗人も名前も顔も知られて来た。そんな二人が修学旅行とはいえ、一緒に行くとなると…」

「でも健吾も雫も一緒だよ」

「世の中はそうは見ないわ。事実なんてどうだっていいのよ。面白おかしい記事になればそれでいいんだから」

「それって文秋とか旧潮とかって話」

「それも有るわ。後はスポーツ紙なんかも」


「でも、もう班も決まったし。俺と芦屋さんが抜けるのは無理だよ」

「どうしたものかしら」



 次の水曜日のLHRは、班毎に何処に行くかを決め、そのスケジュールを学校側に出すという事になっている。行先は京都だ。当初は沖縄という話だったらしいが、諸般の事情で変更されたらしい。俺、沖縄行きたかったな。



 私、桜庭京子、早乙女麗人と芦屋真名のクラス担任。二年生は修学旅行がある。それは良いのだが、あの二人が、普通に歩いて公共交通機関に乗って、何も無いで済む訳は絶対にない。


 だから学校として、警備会社に頼んで屈強のボディガードを頼む事になった。芦屋真名に関しては事務所からもボディガードが出るらしいけど。


 でも早乙女麗人は普通の高校生…のはず。だから事務所に所属もしていないから頭が痛い。


 今から、教室に行って、生徒達に自由行動の時の班毎の行先とスケジュールを出す様に言うのだが、何処に行くかによっては、考える事も多くなる。

 頭が痛い。本当にあの二人のお陰で頭が痛いよ。


 私は教室に入ると


「皆さん、班毎に纏まって修学旅行の自由行動の時の行先とスケジュールを出して下さい。終わり十分前に戻って来ます。では始めて下さい」



 桜庭先生が教室から出て行った後、班毎に机を固めて集まった。


「お兄様、とても視線を感じるのですが」

「気の所為ですよ」

「そうですか」


 気の所為でもないみたいだ。何故か他の班の人達が聞く耳を立てている感じがする。


小早川「麗人決めるか」

早乙女「ああ、皆何処にする」

芦屋「勿論、八坂神社です」

望月「なんで、八坂神社が勿論なの?」

芦屋「当たり前です。あそこは縁結びの神が祭られています。ここでお兄様と私の将来を願うのです」

早乙女「はぁ?」

東雲「麗人と芦屋さんの事はともかく八坂神社は良いわね」


―ねえ、聞いた。第一候補は八坂神社。

―分かった。


―俺達も行くぞ。

―おう。


 えっ、そういう事?


東雲「次は何処にする?私は清水寺がいいな」

小早川「そうだな。定番の所は行っておきたいな」

望月「私も賛成」


―聞いた。二番目は清水寺よ。

―うん決まりね。


―おい聞いたか。

―ああ、二番目は清水寺だ。


 大丈夫かな?


早乙女「健吾、何処か行きたい所あるか?」

小早川「ああ、俺は渡月橋に行って見たい」

芦屋「良いわね。お兄様、渡月橋、一緒に渡りましょう」

望月「あんたねえ、さっきから早乙女君と何々ばかりじゃない」

芦屋「これは運命です」

東雲「この二人の事はいいとして私も桂川に架かる渡月橋見たいわ」

早乙女「じゃあ、決まりだな」


―三番目は渡月橋よ。

―分かった。


―俺達もだぞ。

―ああ。


 何か知らないけど、クラスの皆で行く事になるらしい。



 LHR終了十分前に桜庭先生が教室に入って来た。


「皆さん、纏まりましたか」

「「「はーい」」」

「では、持って来て下さい」


「……何ですかこれ?八班全部が同じ所へ同じ順番で行くのですか?」

「「「はーい」」」


 頭痛いと言いたい所だけど、これは使えるわね。あの二人の安全確保の為には公共交通機関を使うより…。うふふっ、これで私の気苦労も一つ減るわ。


 あれ、何故か桜庭先生が微笑んでいる。どうしたんだろう?



 私は生徒達が作成した自由行動時間の行先とスケジュールを持って教頭先生の所に行き、


「教頭先生、私のクラスの生徒はまとまりが良いようです。全班が同じ行先と同じスケジュールを提出してきました。

 あの二人を公共交通機関を使わせずに安全に行きたい所に行かせる為に、ぜひ四十乗りのバスをチャーターをしたいと思います」


「うーん、それは良い考えなのかもしれないが、予算が無い」

「えっ、予算ですか。そんなものどうにかして下さい。あの二人の安全は我が校が如何に生徒の安全を考え、適切な判断をしている事を世の中に示せます。

 あの二人の注目度を考えたら我が校のアピールに絶対に繋がります」


「そうは言われても」

「教頭は、あの二人に何か有ってもいいと言うのですか。教頭!責任取って貰いますよ」

「わ、分かった。だからそんなに近くに寄って大声で言わないでくれ。君の胸が俺の顔に当たりそうだ」


「教頭、セクハラで訴えますよ!」

「わ、悪かったからもっと離れてくれ」

「分かりました。でも頼みましたよ。バスのチャーターの件」

「仕方ない。何とかしよう」


 ふふふっ、これでいい。移動はバス。降りればボディガードが付いている。これで間違いは起こらないだろう。


 俺は、修学旅行の自由行動の時の事をお母さんに話すと

「移動はバスというのは良いわね。それに学校側でボディガードを付けてくれると言うのも良いわ。でもカメラ対策にはならないわね。まさか二人だけサングラスに帽子という訳にもいかないし」

「余計目立つよ」

「名所に着いたら真名ちゃんとなるべく離れて歩く様にするのがいいわ。それと絶対に抱きついたり手を繋いだりしない様に」


「当たり前だよ。誰が好き好んで抱きついたり手を繋ぐんだ」

「でも、真名ちゃんとはドラマの時、抱きついたり、手を繋いでいたでしょ」

「あれは演技だから」

「でも、そのおかげで、あの子は麗人に抱きつくのに抵抗なくっているわよ。撮影待っている時だって、後ろから麗人に抱きついていたじゃない」

「それは…、そうだけど。とにかく気を付けるよ」

「お願いね」


 本当は思い切り心配なんだけど。


―――――

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