第65話 特別校則と園芸部員
私、桜庭京子。朝の職員会議で問題児?じゃなかった早乙女君との特別校則に妹の美麗さんも付け加えられることになった。
そして園芸部員に選ばれた望月美紀さんへの安全確保だ。頭が痛い。理由は分かるが頭が痛い。二人共私のクラスの生徒だからだ。
一年生を受け持った時、始めは早乙女麗人がいる事で、私も嬉しくなった事も有ったけど、今は要注意人物だ。
もし彼に何か有れば、私の教師運命も終わる。そしてまさか追加の園芸部員が望月さんとは。
これは、ご両親からの依頼では無く、生徒の安全の為と言う理由だ。それを今日クラスの子達に言わなくてはいけない。進藤先生も大変だな。
美麗のいる1Aのクラスでは担任の進藤理恵先生が、クラスの生徒の前で
「皆さん、重要なお知らせが有ります。早乙女美麗さんとそのお兄さん。早乙女麗人さんの事です。
本校では、生徒の安全の為、以前から学校内において早乙女君に必要以上の接触する事が無い様にする決まりがあります。
これは早乙女君が在学中の特別校則として決まりでした。この校則の対象に早乙女美麗さんも含める事になりました。
守らない人には学校側より厳重な注意が有ります。内申にも大きく影響します。また度重なる校則違反の生徒は一定期間停学となりますので注意して下さい。
次に園芸部に新しく入部した2Aの望月美紀さんですが、彼女への嫌がらせや部活動の妨害も同様に厳しく処罰されます。充分に心して置いて下さい」
進藤先生の説明が終わったとたんに、クラスの全員が私を見た。そして
「友達になる為に話しかける事はいいのですか?」
「節度ある範囲でお願いします」
なんか、飛んでも無い事になったな。高校に入ってまだ四日目なのに。でもこれで変な輩が私に寄って来る事も無いだろう。
そして麗人のいる2Aでも桜庭先生から同様の説明が有った。
美麗が気になって仕方なかったが。これで変な輩が美麗絡む事は無いだろう。しかし、なんとも言えない感じだな。
だけど、もう一人の園芸部員が望月さんとは。どうしたものか。九条先輩だって。そう言えば先輩、もう一人は決まっているって言っていたな。誰なんだろう。
今日は火曜日。水やりの日では無いから放課後は一人いや秀子さんと帰るか。健吾は男バスだし、雫は女バスだ。
そう言えば、二人共中学まではともかく高校に入ってもうわさ話も聞かないな。あの二人ならモテるだろうに。
午前中の授業が終わり、昼休みになって健吾と一緒に購買に行こうとしたところで、周りの生徒が教室の出入り口を見ている。
「麗人、美麗ちゃんと優美ちゃん」
「えっ?!」
「あっ、お兄ちゃんだ」
―わっ、早乙女君の妹さんよ。
―可愛いー。
―体育館で遠目で見たけど、近くで見るとすっごく可愛い。
何か言っているけど無視。
出入り口で美麗と友達の優美ちゃんが立っている。俺を見つけると教室に入って来た。
「どうした二人共」
「ねえ、お兄ちゃん。学食連れて行って」
「なんで?」
「まだお弁当の準備出来ないんだ。だから。ねっ」
「麗人どうする。俺は賛成出来ないな」
「私も。麗人と美麗ちゃんが行ったらどうなるか想像つくでしょう」
「そうだな。美麗。俺はこれから健吾と購買に行くから一緒に来るか?」
「うん!優美も良いよね」
「うん」
「じゃあ、急いで行くぞ」
俺と健吾、それに美麗と優美ちゃんが廊下を歩いていると
―ねぇ、ねぇ。
―うん、芸術作品見ているみたい。
―い、息が。
不味い。
「美麗、少し早足で行くぞ」
「うん」
購買部に着いて何とか菓子パンを四人で買う事は出来たが、凄い注目度だ。俺は皆が慣れて来たから良かったけど、美麗と一緒だと、去年の状況に後戻りだ。
これは何とか考えないと。
自販機でジュースを買って四人で教室に戻ると
「お兄ちゃん一緒に食べていい?」
「いいけど、健吾、雫良いか?」
「俺達に断る理由はないよ」
「お兄ちゃんのクラスって皆教室で食べるの?」
「あははっ、そうだな。ところで美麗。明日からどうする。お前と優美ちゃんだけじゃ学食や購買は不味いぞ。特別校則が有るとは言え、周りは人だかりになる」
「うん、優美と相談して明日からお弁当持ってこようという事にしている。お兄ちゃんの分も一緒に作ってあげる」
「えっ、いいよ」
―ねえ、聞いた。妹さんのお弁当だって。
―うん、うん。お米一粒一万円で転売できそう。
―そうだね。使った箸は、十万かな?
―何言っているの百万でも売れるわよ。
何考えているんだ。この子達は?
「お兄ちゃんのクラスって面白い人が多いね」
「ま、まあな」
妹の前で冗談は言わないで欲しい。
食事が終わると誠也、川上、相模、それに田畑さんがやって来た。
「麗人、妹さんに紹介してくれないか」
「ああ、いいよ。美麗。俺の友達で田所、川上それに相模だ」
美麗は立つと
「早乙女麗人の妹の美麗です。兄がいつもお世話になっています」
「あ、ああ…」
「誠也、言語障害になっている」
「いや、だってこんなに可愛い子に、こんなに丁寧な挨拶されるとは思わなかったから。
俺、田所誠也って言うんだ。いつも世話になっているのは俺達の方さ」
「俺、川上元春。宜しくな」
「俺、相模恭介。宜しくな」
「ねえ、私は?」
「あっ、美麗、こちらの人が田畑玲子さん。四人共一年の時からの友達だ」
「ちょっと待って。玲子が友達って言うなら、私だって」
「私もよ」
「私も」
「あははっ、また今度ね。美麗そろそろ教室に戻らないといけないだろう」
「う、うん。そうだ、明日から一緒にお昼だよお兄ちゃん」
「えっ?!」
美麗がそれだけ言うと教室を出て行った。
「麗人、明日から後二つ席が必要だな」
「そ、そうだな」
―ねえ、聞いた。
―うん、うん。
―これは誰が近くで食べるか、お米の上手さで席を争う戦いよ。
―ご飯とおかずのね。負けるわけにはいかないわ。
ーうん。
意味分からん?皆さん。お昼は楽しく食べましょう。
お兄ちゃんの教室に行ったけど、取敢えず危険そうな女はいなかった。男子は概ね好意的にお兄ちゃんを見ている。
それに友達も一杯いるようだし。安心した。明日からも変な虫が付かない様に監視しないと。
私、望月美紀。あの子が麗人の妹の美麗ちゃんか。園芸部員になれたし、そうだ。剣道部退部届出さないと。
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