第64話 部活プレは荒れる


 一度家に帰って私服に着替えてから優美と一緒に遊びに出かけた。いつもの五月蠅い奴が寄って来たけど、私もなれているけど優美はそういう人間のあしらいが上手い。いつも適当に追い払ってくれる。

 本当は優美以外にも二人の友達がいたけど、他の高校に行ってしまった。


「美麗。自己紹介、らしいわね」

「どうせ、バレるんだし、変に詮索されるよりいいでしょう」

「まあ、それも有るけど、彼氏募集しませんは良かったわ」

「あの位言っておかないと男子ウザいから」

「それもそうね。中学の時も大変だったし」

「うん、それより今日はどこ行こうか」

「デパートのある街のPBショップでも見ない?」

「いいね」



 優美と一緒に外で遊んで夕方午後四時半に帰るとお母さんとお兄ちゃんはもう帰っていた。

「ただいま」

「お帰りなさい。美麗。今日は素敵だったわよ」

「うん、お母さんも来てくれてありがとう」

「今日は入学祝いをするから、手伝って」

「うん!」


 お父さんも午後六時半には帰って来てくれた。お父さんとお母さん、それにお兄ちゃんが入学のお祝いをしてくれた。夕飯が進むと


「お兄ちゃん、担任の先生が月曜日、部活プレが有るっていうけど、どんなの?」

「ああ、体育館で、文化部や運動部の人達が五分の持ち回りで部の宣伝をするイベントだよ」

「園芸部はするの?」

「今、園芸部長をやっている三年の九条先輩が、今年の秋前には引退するから。そうすると俺一人になってしまう。とても一人じゃ出来ないから部の宣伝をするよ」

「でもそれって大変な事にならない?」


「だから、宝くじ方式で園芸部顧問の桜庭先生、九条先輩それに俺が番号が書いてある的にダーツを投げて三桁の番号を決める事になっている」

「番号って?」

「体育館に入る前に全員に配られるカードに書いてある。でも一人はもう決めているって先輩が言っていたな。誰か知らないけど」

「ふーん」



 そして月曜日になり、一年生は朝から学校紹介で担任の進藤先生が学校を案内してくれた。そしてお昼から体育館で部活のプレが行われた。


 私達は、教室にいる時に番号が書かれたカードを渡された。担任の進藤先生が

「今配ったカードは、園芸部に入部出来る生徒を決める為のものです」


―園芸部に入部?

―こんなものあるのか。

―俺、そんな部に入りたくない。


「入りたくない人は、入らなくても良いですが、園芸部はこの学校の中でも最高の人気を誇る部です」


―はっ、どういう事?


「園芸部には、皆さんもご存じの早乙女麗人君が居ます」


「「「「「「おーっ!」」」」」

「「「「「きゃーっ、入るー!」」」」」


 なんかクラスの子がカードを机の上に置いて手を合わせてお祈りしている。どういう事?


 その後、私達はみんな体育館入ってクラス毎に床に体育座りした。スカート長めで良かった。



 運動部と文化部を合わせると二十以上あるらしい。文武両道を掲げているこの高校らしい。


 最初、色々な運動部の人が説明している。女子バスケの時は雫さんが説明に参加していた。男子バスケは健吾さんが説明に参加している。

 あの人達も部活しているんだ。でも、みんな五分位。入れ替え合わせると実質三分位だ。大変だな。


 それが終わった後、文化部だ。入学式の時、校歌を演奏していた吹奏楽部や演劇部なんかもある。


 一通りの部活オリが終わった後、何故か教頭先生が壇上に立って、

「えーっ、皆さん。これから…コホン。園芸部員の選考を始めます。桜庭先生、九条静香さん、そして早乙女麗人君。壇上に上がって下さい」


―おーっ!

―きゃーっ!

―麗人様ー!。

―麗人様が目の前に!

―わ、私、もう息出来ない。


 何故か早乙女麗人を守る会という登りを背負って、おでこに麗人様命と書かれた人達がダーツの的を持って壇上に上がって来た。そしてダーツの的を置くとその後ろに並んで立っている。


 お兄ちゃんどれだけ人気あるの?



 園芸部顧問の桜庭先生は眼鏡を掛けているけど、ボインキュボインの典型みたいな可愛い先生。九条静香という三年生は、凄い美人だ。そしてお兄ちゃん。確かにこの部には早々には入れないわ。


 その桜庭先生が、

「では、私達三人で園芸部員二人を募集します。但し二年生までです」


「「「「「えーっ!」」」」


 三年から凄いブーイングだけど。お兄ちゃんから聞いた話では三年生は今年の秋に引退するらしいから仕方ないか。


「では、始めます」


 先生が持っているのは先頭が金属のとがった奴じゃなくてマジックボールだ。あれなら確実に付くな。


 ヒュー。パシッ!


「最初の番号は一です」


―きゃーっ!

―駄目だー!


 悲鳴を余所に次は九条先輩が投げる。


 ヒュー。パシッ!


「二番目の数字は、二です」


―きゃーっ!

―駄目だー!


 また悲鳴が。


 最後にお兄ちゃんが投げる。


 ヒュー。パシッ!


「最後の数字は八です」


「一二八と書かれた番号のカードを持っている生徒。立って壇上に上がって来て下さい。


 満面の笑みで壇上に上がったのは二年の女子生徒だ。


「カードを見せて下さい」

「はい」


 教頭先生がカードをこちらに向けて見せている。見える訳ないでしょ。こんな距離から。


「はい、当選した生徒は二年A組の望月美紀さんです。しかし、望月さんは剣道部で次期主将候補ですよね?」

「剣道部は辞めます」


「「「「「おーっ!」」」」」

「「「「「きゃー!」」」」」


 やれやれ望月さんとは、先が思いやられる。


「では、二人目を決めます。準備お願いします」


 同じ様にダーツが投げられその度に悲鳴が聞こえて


「もう一つの番号は〇二八です」


「えっ!」

「どうしたの優美?」

「当たっちゃった」

「え、えーっ!」



「どうしたのですか。番号の当たった方は壇上に出て来て下さい」


「優美、行くしかない」

「でもう」


「出て来ない場合は入部辞退となりますが良いのですか?」


「私やっぱり辞退するよ」

「ねえ、そのカード譲って」

「私に」

「私に」


「皆さーん、カードの譲渡は認められません」

「「「えーっ!」」」


「ほら、どうするの?」

「美麗も一緒なら」

「えーっ、ちょっちょっと」


 私の手を強引に引っ張って立ち上がらせると壇上に連れて行かれた。


 あれ、美麗と友達の優美ちゃんじゃないかどうしたんだ?


 優美ちゃんが教頭にカードを渡して

「あの、この人と一緒なら」

「君は?」

「早乙女美麗です」


「「「「「えーっ!」」」」」

「「「「「きゃー!」」」」」」


―れ、麗人様の妹君。

―き、綺麗。

―お、俺もう息出来ない。

―わ、私も。

―さ、早乙女様ー。


 あーっ、凄い事になっている。次々と男子女子が気絶していく。それを見た教頭先生が、マイクに向かって


「園芸部員の募集は中断。一時中断します。救護班、救護班。至急生徒の対応を」

「「「は、はい」」」


 結局、決まったのは望月美紀さんだけになった。まあ、お兄ちゃんに頑張ってもらうしかないか。ごめんね、優美を園芸部に入れる訳には行かないわ。私の大切な友達だから。


―――――

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