第63話 美麗の入学


 始業式の翌日は入学式。俺達は、ちょっと早めに行って、体育館で生徒と親類や来賓者向けのパイプ椅子の用意。

 昨日すればいいのにと思いつつ、各クラス総出でやると直ぐに終わった。なるほど。


 そして一度教室に戻ってから午前十時の開始二十分前には、体育館に集まった。生徒の後ろにある親類向けの椅子の方を見ると、えっ?!なんでお母さんとお父さんが居るの?思い切り周りから注目を浴びている。


 来賓と先生達も全員揃ったところで、体育館の正面入り口から各クラスの担任の先導で学校の指定服を着た新入生が入って来た。大きな拍手が沸き上がった。


 俺も拍手しながら新入生の列を見ると、美麗は1Aだ。周りの人から凄い視線を浴びている。


 俺の前を歩く時、美麗が俺の顔を見て微笑んだ。在校生からも


―ねえ、あの子。

―うん、そうだよね。

―間違いない。

―妹さんも可愛いわねぇ。


 バレてしまったようだ。


 そして入学式が始まった。校長先生の挨拶、そして来賓三人の挨拶、先生方の紹介と長々と続いた後、生徒会長からの挨拶が有って、最後にここ都立星城高校の校歌を歌って終わった。


 それから新入生達は担任の先生に先導されて教室に行った。




 私、早乙女美麗。今日からお兄ちゃんと同じ高校に行く。嬉しくて堪らない。今日はお父さん、お母さんも入学式に出席すると言っていた。


 どんな有名人でもやっぱり両親が来てくれるのは嬉しい。校門まで一緒にお母さんのマネージャの薄井さんに車で送って貰ってから、校門や昇降口に立っている先生達に教えて貰いながら自分のクラス1Aに入った。私の親友、前沢優美(まえざわゆうみ)も一緒だ。


 私が入って出席番号を確認してから席に座ると、いきなり

「わ、私。九条美奈(くじょうみな)。宜しくね」


 いきなり声を掛けられた。私も一応挨拶のつもりで

「私は…」


 そこに女性の先生が入って来た。

「また後で」

「うん」


「皆さん、入学おめでとうございます。私は進藤理恵(しんどうりえ)、ここのクラスの担任になります。詳しい挨拶は入学式が終わってからにしましょう。廊下に出て下さい」


 そして体育館の入口で皆で並んで待った。やがて入場曲が流れて入って行くと直ぐにお父さんとお母さんを見つけた。二人とも思い切りの笑顔で拍手をしてくれている。


 在校生の間を歩いて行くと背が高くて美人のお兄ちゃん?は直ぐに分かった。そっちに顔を向けてニコッとすると、お兄ちゃんも笑顔で返してくれたけど、周りがなにか言っている。こういう時は無視が一番。



 そして入学式が始まった。校長先生の挨拶から始まり、色々な人が壇上に登っては挨拶をしている。

 挨拶の最後にこの高校の生徒会長が挨拶して、吹奏楽部の演奏で校歌を歌って終了した。私達は勿論歌えないけど。



 教室に戻ると直ぐに担任の進藤理恵先生が入って来た。身長は私と同じ位だろうか。胸もお尻も特に大きい訳では無いけど、長い髪と綺麗な顔立ちが少しだけ頭の良さそうな印象を与えている。


「皆さん、先程も話しましたが、私が一年間このクラスの担任を務める新藤理恵です。字はこうです」


 そう言って、後ろの黒板に名前を書いた。その後、自己紹介だ。面倒だな。でもはっきり言っておいた方が後々、良いだろう。

 私の順番になって、前に出ると


―凄い。

―可愛い。

―友達になりたい。


 色々五月蠅いと思いながら

「初めまして、早乙女美麗です。私のお兄さんはこの高校の2Aに居る早乙女麗人です」


―早乙女麗人って、確か。

―そうだ、年末の白黒歌合戦の時に霧島花蓮の後ろに座っていた。

―あっ、この前、霧島花蓮を助ける役で番組に出てた。


 あちゃー。知っていたか。


「そうです。私のお母さんは女優の霧島花蓮です。はっきり言っておきますが、それを理由に近付いて来る人は一切拒絶します。但し、お友達としてなら歓迎します。彼氏は募集しません」


 まあ、はっきり言う子だわ。身上書から2Aの早乙女麗人の妹とは知っていたけど。桜庭先生が大変よと言っていた。私も気を付けないと。


 最後の一人の挨拶が終わると

「皆さん、席順を決めましょう。それとも今のままでいいですか?」


「「「「「「替えたいでーす」」」」」


「それでは、この箱の中に席順が書いてあるカードが入っています。廊下側先頭の人から一枚だけ取って下さい」



 私の番になり、前に出て箱の中に手を入れて一番上に有ったカードを一枚取った。席に戻ろうとすると、何故か皆私の事を見ている。どうして?


 最後の人がカードを取り終わると

「はい、皆さん取り終わりましたね。それではカードに書いてある席に異動して下さい」


 私はカードの書かれた席、廊下側一番めの後ろから二つ目だ。あっ、左横が優美だ。良かった。

「美麗が隣で良かった」

「私もだよ。優美が隣で良かった」


 さっき私に声を掛けて来た工藤美奈さんは、窓側の一番先頭だ。でもせっかくだから後で挨拶しておくか。


「あの、俺、稲盛祐樹(いなもりゆうき)って言うんだ。一年間宜しく」


 私に声を掛けて来たのは、前に座る男の子。お兄ちゃん基準で見ると話にならないけど、まあ、世の中イケメンの部類なんだろう。


「宜しくね」


「あの、俺も」

「俺も」



「はい、はーい。皆さん、挨拶は後でして下さい。それでは、これからこのクラスのクラス委員と色々な係を決めます。

 皆さんはまだ一年生でお互いを知らないでしょうから、クラス委員長とクラス委員は、私が指名します」


 そう言って、クラス委員長とクラス委員が指名された。その後、クラス委員が前にでて色々な係を決めていた。


 私にも声が掛かったけど、思い切り断った。私がこの高校に入ったのはお兄ちゃんが居るから。それ以外は全く興味ない。


 そして全部が決まると進藤先生が

「今日はここまでです。来週月曜日は部活のオリエンテーションがあります。文化部、運動部として色々な部活が有ります。

 出来ればどこかの部に入って下さい。勿論帰宅部も構いませんが、これから三年間一緒に過ごす友人を部活でも見つけましょう。ではクラス委員長」

「はい、起立礼」


 やっとこれで終わった。

「優美、帰ろう」

「うん」


「あの、少し話でも出来ませんか」

「断ります。家に帰りたいので」

「そ、そうですか」


 男子には全く興味無い。あっ、工藤さんだけ挨拶しておこう。

「優美、ちょっと来て」

「えっ?


 私は窓側一番前に座る九条さんの所に行って

「さっきは途中だったから。これから宜しくね九条さん。こっちは私の親友の前沢優美」

「九条さん、前沢です。宜しくね」

「はい!前沢さん、早乙女さん、九条です。宜しく願いします」

「さて、優美帰ろうか」

「うん」


 俺、稲盛祐樹。早乙女美麗さんか。友達位にはなれないかな?



 今度お兄ちゃんのクラスに行ってみよ。


―――――

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