第62話 新学期が始まった


 今日は始業式。ついこの前まで花壇のお化粧、新入生を迎える為の飾りを準備していた。あまり休んだ気がしない。


 いつもの様に健吾と雫と一緒に登校して、昇降口で履き替えて掲示板に張り出してあるクラス分けの表を三人で見た


「あっ、三人共同じクラスだ。やったな麗人」

「ああ、良かったよ。今年も一年宜しくな」

「こちらこそだ」

「あれ、一年の時とあまり変わらないな」

「まあ、成績順でも有るからな」


「早乙女君、宜しくね。私も貴方と同じ2Aよ」

「望月さん、宜しく」

 なんか、トラブル因子が一つ増えた様な。


「早乙女君、今変な事考えて無かった?」

「いや、そんな事は」

「麗人、教室に行こうぜ」

「そうだな。雫も行こう」

「うん」


 酷い、早乙女君、私を全く無視じゃない。せっかく二年で一緒になれたのに。


 俺達が教室に行って喋っていると誠也、川上や相模それに田畑さんも入って来た。


「麗人、今年も宜しくな」

「ああ、誠也、川上、相模。今年も宜しくな」

「「おう」」


「早乙女君、私も同じだからね」

「田畑さん。宜しく」


 そのまま、皆で話をしていると予鈴が鳴り先生が入って来た。な、なんと一年の時と同じ桜庭先生だ。


「皆さん、体育館で始業式を始めます。廊下に出て下さい」


 ガヤガヤと皆で廊下に出て並んで体育館に入って行くと、もう去年の様な注目は浴びないけど視線は多い。でもこの位なら構わない。


 いつもの様に校長先生のお話を聞いて、学校全体の連絡事項が告げられると教室に戻って来た。

 

 少しして桜庭先生が入って来た。手に去年使った席順の入った箱を持っている。

「皆さん、このクラスの担任になりました桜庭京子です。一年の時からの人達が多いですね。一年間宜しくお願いします」


 パチパチパチ。


「それでは席順を決めましょうか。この箱の中に席順が書いてあるカードが入っています。廊下側先頭の人から抜いて行って下さい」


 俺が一番最後か。席順のカードを引いた子の顔を見ると何となく良い席か悪い席か表情に出ている気がする。


 健吾や雫も引き終わって、最後に俺が前に出て箱の中の一枚を取って席順を…。あれ何でみんな俺を見ているの?

 その視線を無視して自分の席に戻ると


「それでは移動して下さい」


 俺の席は廊下から三番目の列の一番後ろだ。俺がその席に行くと健吾と雫が寄って来た。なんと健吾は右隣り、雫は俺の前だ。


「麗人、また近くだな」

「麗人、宜しくね」

「二人とも宜しく」


 左斜め前から視線を感じて見るとなんと望月さんだ。嬉しそうな顔をして

「早乙女君、一年間宜しくね」

「あっ、はい」

「なに、その返事。まあいいわ」

それだけ言うと前を向いてしまった。誠也や川上、相模はばらばらだ。


「はい、席の移動は終わりましたね。ではクラス委員を決めましょう。自薦他薦どちらでも結構です。どなたかいませんか」


 シーン。


「困りましたね。誰も手を上げないと先生が決めてしまいますよ」


シーン。


「では川上君、君がクラス委員長をやりなさい」

「えーっ、俺ですか。いや俺だったら田所の方が」

「彼は一年の時にやりました。今年は君です」

「そ、そうなんですか」

 川上が肩を落としている。可哀想だが仕方ない。


「川上君、前に出て来てもう一人クラス委員決めて」

「はい」


 川上が教卓の所に行って、

「俺は川上元春。先生の指名で一年間、このクラスの委員長やる事になった。宜しく頼む。じゃあ、もう一人クラス委員を選びたい。誰かやる奴いないか」


「「「「「はい、はい、はい」」」」」


 流石、川上だ。女子が何人も手を上げた。

「どうするかな。一人だけでいいんだけど」

「じゃあ、私がやります」

「いえ、私が」

「私よ」


「あらあら、川上君は人気があるのね。仕方ないわ。前に出て来てじゃんけんで決めたら」

 いいのかよクラス委員、じゃんけんで決めて?


 五人も手を上げたけど、勝ちぬいたのは、友永久美(ともながくみ)という女子だ。背は高くないが、髪の毛が背中まであり、目がぱっちりした子だ。


 その後は二人で他の係などを決めてその日は終わった。水やりはこの前まで花壇の世話をしていたおかげで、今日は何もしない。

 このまま健吾と雫と一緒に校門まで行くと秀子さんが待っていた。


「あれ、秀子さん。もう登下校の送り迎えは無くなったんじゃ」

「麗人、そんな事聞いてないわよ。でも私も履修の関係で去年と麗人と登下校する日が変わったの。歩きながら話すわ」

「いや、もうしなくても」

 もう偽彼女だってバレているし。


「いいのよ。私がしたいの。いいでしょう」

「構わないですけ」

 秀子さんは無下に断りにくい。


「夏までだけど、登下校は火曜日と金曜日。登校だけは水曜日と木曜日。下校だけは月曜日。少しだけ変わったわ」

「分かりました。ありがとうございます」

 木曜日だけは九条先輩と下校が一緒なるな。しかし、あの人も今年は受験生だからいつまで来てくれるんだろうか。やはりあの件は早く決めないと。


 明日は入学式だ。美麗もいよいよ一緒の高校か。何も無いと良いんだけど。


―――――

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