第61話 春休みでも園芸部員は忙しい


 本話は短めです。


―――――


 後、二週間で春休みになる。園芸部員募集騒動は、桜庭先生の募集日程は後日発表しますの一言で終わったそうだ。でもそれ以来何も発表されていない。本当に大丈夫なのだろうか?


 三年生も卒業した。新垣先輩が、早乙女君、必ず帝都大に来てね。待っているわという俺にとっては理解出来ないメッセージを残して卒業していった。


 そう言えば秀子さんも帝都大文学部二年になる。あれっ、何か嫌な予感?



 そんな俺の心配も一週間も過ぎれば頭の中から忘れて行った。今の時期は授業が午前中で終わる。午後は学校側の色々なイベントが有るみたいだ。


 毎日、午前中の授業が終わると、花壇に水をやって帰れる…と言う訳には行かない季節になった。


 そう、春先は一年草の植え替えと多年草への肥料の施し、それに新しい一年草の植え付けだ。


 先ずは枯れた一年草をスコップで土から綺麗に取る。勿論古い根などが残らいない様に綺麗に取らないといけない。


 そして掘り起こした土を埋めて、そこに土壌の改良の為、石灰などを薄く巻いて二週間程度休ませる。


 これを一年草全部にやる。多年草は、周りに肥料を施す。これも全部にだ。校舎裏の花壇と校門の花壇をお弁当食べた後、午後四時までやる。それでも二人で卒業式前日までかかってしまった。


 これで終わる訳では無い。春休みの間に休ませた土に一年草を植える。更に四月には新入生を迎える為に花壇に新入生歓迎のプレートや飾りをしないといけない。園芸部って結構ブラック部?


 作業しながら

「九条先輩、新人募集はどうするんですか?」

「桜庭先生に任せている。私がどうのいう話じゃないし」

「でも、先輩は園芸部の部長ですよね。発言権位あるでしょう」


「形式的にはね。問題はそこじゃないの。麗人だって分かっているでしょう。公募なんかしたらどうなると思う。一学年の半分百二十名は女性。

それが今の一年と二年合わせて二百四十名。その内、部活に入っていない、入っていても止めてまで来る子を考えると半分だとしても百二十名よ。

その中の一人や二人選んだらその子がどうなると思う?当然その子を陥れても自分が変わりに入りたいって子が出て来るでしょう。だから実際には公募が出来ないの」

「……………」

 何も言えない。全部俺の所為?


「だから、麗人自身が誰かを選ぶか、選ばれても誰も文句を言えない子か、麗人が一人でやるかよ」

「男子だったら…」

「同じ事になる」


 はぁ、どうすればいいんだ。

「麗人が認める人だったら問題ないのよ」


 そうだ、一人いる。



 俺は家に帰ってから既に中学を卒業した美麗に事情を話した後、

「なあ、美麗。星城高校に入ったら、園芸部入らないか?」

「何言っているのお兄ちゃん。入る訳ないでしょ。夏休みも冬休みも春休みも呼び出されるブラック部活なんて絶対に入らないわよ。手だって汚れるし」

「いや、冬休みは出なくていいし、手袋するから汚れない」

「そんな事言っても駄目。絶対に入らない」

「なあ、どうしても駄目か?」

「ぜーったいに駄目!」


 困ったな。本当に困ったぞ。

「ねえ、前に参加していたという佐久間さんって人に頼めないの?」

「あの人も今年三年になる」

「そうかぁ」


 まさか、一年の部活プレ日に安請け合いして入った園芸部だけど、まさか一年でこんな事になるとは。


 

 結局、三学期が終了し春休みに入った。


―――――

 早乙女麗人の都立星城高校一年生の高校生活はここまでです。

 次話からは二年生、そして妹の早乙女美麗も入学してきます。麗人の芸能活動がどうなるかも含めて展開します。楽しみにしていて下さい。


 次話は二月より投稿開始します。


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