第49話 考査結果は、なんでいつも揉めるんだ


明けましておめでとうございます。

今年も宜しくお願いします。


―――――


 俺は、空手部と剣道部の部長の勧誘?を負かした後、東郷さんと一緒に帰ろうとしたところで、二人の部長が、


「早乙女、いつでも遊びに来てくれ。歓迎する。それと俺の友人になってくれ。お前の様に武道が強い奴が知合いにいると部活の練習に励みが出る」

「俺もだ。頼む早乙女」

「そういう事なら良いですよ。先輩方の友人にさせて貰います」


「早乙女、先輩はいい。お前のが強いんだ。郷田って呼んでくれ」

「俺も細野でいい」

「じゃあ、郷田さんと細野さんで。流石に呼び捨ては」

「はははっ、そうだな。気に入ったよ。今日は悪かったな」

「いえ」



 俺が練習場を出て行く途中、女子部活の部長達が、郷田さんと細野さんに食って掛かっていたけど、聞こえない振りをした。



 この勧誘の後、十二月に入って直ぐに二学期末考査が有った。今回は、特に考査対策はしていないので、一位になって目立つ事も無いだろうと思って臨んだ。


 金曜日から翌週木曜日まである。一応、考査は午前中で終わるので、午後からは翌日の科目の勉強が出来たから、そんなに悪くはない手応えだった。


 土日はいつもの様に過ごして、明けた翌週火曜日。健吾と雫と一緒に昇降口で履き替えて階段横の掲示板に行くと人だかりが出来ている。


 掲示板を見ると、あっ、俺は三位だ。良かったこれで変な会話に巻き込まれなくて済む。雫は五位、健吾は十二位といい位置にいる。一位は望月さんか、二位の子は男子だ。知らないな。


 それでもうその場を離れようとすると

「待って、早乙女君、いえ麗人」


 振り向くと望月さんがいた。


「麗人、約束よ。三学期一杯、あなたは私の彼よ。早速デートの予定立てましょう」

「えっ?何言っているんですか?それに名前呼びは止めて下さい」

「何言っているの。中間考査の時言ったでしょ。学期末考査で私が勝ったら、麗人は私の彼になるって約束したじゃない」

「そんな約束はしていません。それに俺は彼女が居ます」

「ふふっ、東郷さんでしょ。偽彼女の」


―えっ、あの人、偽彼女だったの?

―だったら、私達にはまだチャンスが。

―うんうん。


 何でこの人それ知っているんだ。それにまた女子が騒ぎ始めたじゃないか。俺はその言葉を無視して


「東郷秀子さんは、れっきとした俺の彼女です。失礼な事言わないで下さい」

「無理しなくて良いわよ。私が正式な彼女になったんだから」



 俺と望月さんが不毛な会話をしていると二年生の方が賑やかだ。


「八頭さん、もう諦めなさい」

「な、何言っているの九条さん。同順じゃない」

「分からない人ね。いくらあなたが頑張っても私の前には出れないって事よ」

「ふん、そんな事言っているといずれ泣きを見る事になるわよ。覚えてらっしゃい」


 またあの二人が言い争っている。考査の順位なんて、そんなに重要な事か。あっ、九条先輩がこっちにやって来た。


「麗人、どうだった?」

「三位です」

「駄目ね。やっぱり私が、勉強見てあげましょうか」

「結構です。考査の順位なんて興味無いので」


「ちょっと、九条先輩。麗人は私が勉強を教えます。それに先輩は二年しょう。一年の勉強は、同じ一年の私が見ます」

「あなた誰?」

「望月美紀です」

「ふーん。そっ。望月さん、はっきり言っておくね。麗人の彼女になるのは私。よく理解しておいて。一年の期末考査程度で一位になれたからって大した事無いわ」

 この人なんで爆弾発言ばかりするんだ。黙っていればいいのに。


「何ですって!」


 これを見ていた健吾が

「麗人、ここは逃げた方が良さそうだ」

「そうだな」


俺は五月蠅過ぎる掲示板の前を去ろうとすると

「「待って」」


「健吾」

「ああ」


 俺達が急いで教室に戻ろうとするところで予鈴が鳴った。助かった。



 ガヤガヤと教室に皆が戻って来て直ぐに担任が入って来た。

「皆、静かに」


 助かった。しかし考査結果なんかであれだけ騒ぐなんてどうしたものか。



 幸い、中休みも昼休みも何も起こらずに放課後になった。健吾と雫は直ぐに部活に行ったので俺も一人で帰ろうとすると教室に出入り口に望月さんがやって来た。


「麗人、一緒に帰ろ」

「今日は秀子さんが迎えに来ています。一人で帰って下さい」

「いいじゃない。あの人がいても。ねっ、一緒に帰ろ」

「駄目です」


 こんな事許したら他の子も同じになってしまう。俺は望月さんを無視して教室を出た。彼女は後ろから追いかける様にして昇降口まで来た。


 履き替えて校舎の外に出てもぴったりとくっ付いて来る。

「望月さん、諦めて下さい。俺は秀子さんと帰るんです」

「じゃあ、一緒で」

 もう勝手にしてくれ。



 校門のところに行くと秀子さんはもう迎えに来ていた。例によって他の生徒が彼女をジロジロ見ている。あっ、こっちを見た。


「麗人」

「秀子さん、ありがとうございます」

「誰その子」

「この人は…」

「私は望月美紀。麗人の彼女です」


「どういう事?」

「これは…」

「学期末考査で私が麗人より順位が上だったので、私が三学期終わるまで彼女になるって約束をしたんです」

 この人俺が話そうとすると割込んで来るな。


「麗人、本当なの?」

「この人が勝手に言っているだけです」

「そう、じゃあ帰りましょうか」

「はい」

 秀子さんが俺の手を握って来た。


「麗人、私も」

「駄目です。それにバッグで塞がっています」

「バッグ持ってあげるから」

「駄目と言ったら絶対に駄目です。一人で帰って下さい」

「麗人…。酷いよ。そこまで言うなんて」

「あなた、しつこいわよ。一人で帰りなさい」

「偽彼女がそこまで言うなぁ!」

 そう言って彼女は駅に走って行ってしまった。ちょっと言い過ぎたかな。


「麗人、気にしなくていいわ。ここで優しくしたら同じ事を繰り返すだけよ」

「分かっていますけど」

 流石に頭痛くなって来た。


 麗人の心は絶対に私が掴むんだ。あんな偽彼女に負けて堪るもんですか。

 

―――――


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宜しくお願いします。


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