第46話 またしても中間考査結果は波乱を呼ぶ


 中間考査が終わった翌土曜日、俺はいつもの様に道場へ行くと東郷さんが、稽古開始前に寄って来て

「麗人、中間考査どうだった?」

「えっ、何で中間考査が終わった事知っているんですか?」

「いいの、いいの。そんな事、それより手ごたえどうだった?」

「まあ、普通に出来たと思います」

「そう、結果は来週火曜日には分かるのよね」

「何でそれを?」

「いいの、いいの。結果教えてね」


 なんで東郷さん、俺の学校の予定知っているんだ?



 そして中間考査の結果が発表される火曜日。登校中の東郷さんが

「下校の時に結果教えてね。結果次第では、そのまま麗人の家に直行よ。じゃあ行ってらっしゃい」

 東郷さんは別れ際にそれだけ言って校門で踵を返すと駅に向かった。


「麗人、今のなんだ?」

「実は…」

 俺は健吾と雫に簡単に東郷さんから言われた事を話した。


「それはそれは。望月さんの比じゃない重さだな」

「ああ、今から行く掲示板が怖いよ」


 昇降口で履き替えて階段下の掲示板に行くと誠也が寄って来た。

「麗人、凄いな。満点一位じゃないか」

「えっ?!」

「麗人良かったな。でもあれはどうなんだ?」


 望月さんが同一位だ。俺を見つけた望月さんが

「麗人、いえ早乙女君。本気出されちゃったわね。あんな事言わなければ良かったわ。でもまだ終わった訳では無いわよ。学期末考査だって同じだからね」

 残念そうな顔をして掲示板から去って行った。俺は顔をもう一度掲示板に向けると


「健吾が十位で雫が五位か。二人共凄いな」

「満点取っている麗人に言われたくないわ」

「俺もだ」


―早乙女君の彼女の椅子は遠そうね。

―でも望月さんも言っていたわ。学期末考査があるって。

―私達も頑張りましょう。

―うん、うん。


 皆さん、勉学に励むのは良い事ですが、目標は変えましょうね。


 俺達が教室に戻ろうとすると二年生の順位表の所で前に見た光景が有った。


「ふふっ、八頭さん。口にも無いわね」

「覚えてらっしゃい。学期末は絶対あなたに負けないから」

 先輩も一位を取ったのか。大したものだ。あっ、二人共こっちを見た。こっちにやって来る。何か用か?


 最初に八頭さんが

「早乙女君、噂で聞いたわ。彼女がいるんですってね。今度紹介して」

「しませんよ」

「どうして?あなたを彼にする程の人なんでしょ。私もこの目で確認したいわ。私とどちらがあなたに相応しいか、会ってみたいと分からないでしょ」

 何を言っているんだこの人は。勝手な事を言って階段を昇って行った。


「麗人、あんな人の言葉気にしなくて良いわ。それより凄いじゃない満点一位なんて」

「まぐれです」

「満点はまぐれじゃ取れないわ。麗人の実力よ。またね」


 モテるんだから俺なんかに構う事無いのに。ほら見ろ、男子から声を掛けられているじゃないか。

 


 教室に戻ると田畑さん達がやって来た。

「早乙女君、凄いわ満点なんて。ねえお願いがあるの。私達に中間考査の間違った所を教えてくれない」

「それ、授業でやりますよね」

「それはそれよ。それにどうして間違ったかは個別に教えてくれないわ。ねっ、お願い」

「駄目です。授業で聞いて自分で頑張って下さい」

「ねえ、そんな事言わないでさぁ」


 予鈴が鳴った。助かった。しかし、東郷さん効果も薄れて来たのかな?早すぎるんだけど。


 新垣さんは、効果が続いているのかな。もっとも新垣さんは一番大切な受験シーズン。俺なんかに構っている暇は無いか。




 翌日、放課後、水やりに園芸部室兼倉庫に行くと二学期になって来ていなかった佐久間さんが水やりに来ていた。会うのは夏休み前以来だな。


 俺の顔を見ると

「早乙女さん、ずっと来なくて済みません」

「あっ、俺は良いんですけど」

「麗人、佐久間さん、ご苦労様。早速水やりしましょう」


 三人で水やりをすると二人でやるより早く終わった。当たり前だけど。佐久間さんが何故今まで来なかったのか、急に来た理由は何故か、あの八頭さんが絡んでいるのか。

ちょっと気になってしまったけど、彼女は水やりを終わらせると、さっと帰ってしまった。


「麗人、帰りましょうか」

「あの今日は」

「分かっているわ。偽彼女さんが来るんでしょ。校門までよ」

「……………」

 そんなにはっきり言わなくてもいいと思うんだけど。



 俺と九条先輩が校門まで行くと東郷さんは既に来ていた。下校中の生徒がチラチラ見ている。まああのスタイルと容姿じゃ仕方ないよな。


「麗人!」


 東郷さんが俺に声を掛けるのと同じタイミングで、九条先輩が東郷さんの前に行って

「初めまして。あなたが東郷秀子さん?私は九条静香と言います。お見知りおきを」


 それだけ言うと早足で駅の方へ歩いて行ってしまった。

「早乙女君。何あれ?」

「園芸部の先輩です」

「そう、なんか噛みつかれそうな雰囲気だったんだけど」

「あはは、気の所為ですよ」

 先輩には一言言っておかないと。


―――――


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