第43話 麗人に恋人なんて許さない
昨日、秀子さんと一緒に登下校する事で、周りからいつも以上に注目された。でもその効果は有ったと思っている。
今日金曜日、昨日と同じ様に秀子さんと俺の家の最寄り駅で合流してから学校の最寄り駅で降りる。
健吾と雫と一緒に登校するけど、周りの目は今までと少し変わった。依然好意の視線は多いが、あきらめとも嫉妬ともつかない視線も含まれている。
今日からは手繋ぎ。昨日の様に腕に絡んでくるのは止めて貰う事にした。そして校門まで来ると秀子さんがまた俺に抱き着いて
「麗人、またね」
そう言うと一人で駅の方に戻って行った。昨日の様に校門の周りに他校生はいない。でも生徒の視線が痛い。
秀子さんが俺に抱き着いている時の視線が嫉妬や恨みがましい視線も感じてちょっと怖い。
「麗人、効果が出ているな」
「ああ、一ヶ月も秀子さんに付き合って貰えればいいだろう」
「そうは行くかなぁ。東郷さんが付いてこないと別れたとか思われるんじゃない」
「そんな事無いだろう」
「分からないわよ」
教室に入って自分の席に着くと前に座る上条さんが、挨拶だけすると直ぐに前を向いた。まあ、こうなるわな。
中休みに十人以上いたファンクラブの子達は半分位になっている。他のクラスから俺を見に来る子達も少し減った気がする。これで静かに高校生活が送れそうだ。
昼休みも健吾と雫と一緒に食べているが、窓や出入り口に生徒が溜まる数が少ない。
「麗人、もう少しすれば学食で食べれるかもしれないな」
「ああ、そう願いたいよ。偶には学食に行くのも良いからな」
「そうだな」
その日は気分よく授業が聞く事が出来た。そして放課後、今日は水やり。九条先輩どうでるかな?
俺が園芸部兼倉庫に行くと先輩は水やりを始めていた。
「遅れてすみません」
「いいのよ。早く手伝って」
私、九条静香。麗人の噂は聞いた。でも本当の彼女かなんて分からない。理由はもしそう言う人が居るなら、最初からはっきりとそれを理由に断っていたはず。
彼女持ちが他の女の子と二人でプールになんて行かない。麗人の性格を考えれば尚更だ。水やりが終わった後に聞いてみる事にしている。
先輩と俺はいつもの様に校舎裏と校門の傍の花壇の水やりをこなした。先輩いつもより口数が少ない。
水やりが終わりジョーロとリールフォルダを持って部室に戻り、それらを置いてテーブルの上に置いてあるバッグを取って帰ろうとした時、
ガチャ。
「えっ?!」
先輩は、ドアに鍵を掛けるとドアを背にしてこちらを向いた。
「麗人、聞きたい事が有る」
「何ですか。九条さん」
「昨日の登下校と、今日の登校の時に付いて来た女性は誰?」
どういう意味で聞いているんだ?
「彼女です」
「そういう事を聞いているんじゃない。どういう女性かと聞いている」
これは真面目だな。
「俺が通う道場の入門同期で三才上の人です」
「そう、何年付き合っているの?」
「……………」
なんて言えばいいんだ。
「何で答えられないの?」
「二年くらいです」
適当に言ってみた。
「そう、あの位の年の人なら、当然キスもあっちの経験もあるわよね」
「それは…」
確かにキス位した事にしないと。
「ふふっ、なんですぐに答えられないの?」
「キス位していますよ」
「本当?じゃあ、私にもして見て」
「出来る訳なじゃ無いですか」
「じゃあ、これは?」
いきなり先輩がブラウスを脱いだ。真っ白なブラだ。
「な、何しているんですか?」
私は麗人にゆっくりと近づいてから彼の手を取って私のブラに当てた。
電気に痺れた様な顔をして手を避けた。
「うわっ。な、何をするんですか。こんな事すると俺は…」
私はいきなり麗人にブラの姿のまま抱き着いて
「ここ辞めないわよね。麗人。彼女の事嘘なんでしょ」
「離れて下さい」
「駄目よ。正直に言うまでは」
全く中途半端な大きさじゃないからきつい。
「止めて下さい」
「正直に言ったら」
全くこの人はいつも強引な手を使う。
「本当に俺の彼女です」
「嘘でしょう。なんで私の胸をブラの上から掴んだだけで、電気ショックでも受けた様に避けたの?もし二年も付き合っているなら女性とそういうことしなくたって、こんな反応しないんじゃない」
この人、俺の事弄んでるのか。でも事実だ。女性の体なんて触った事も無い。美麗にだってこんな事しない。
どうする。でもここで本当の事話したら…。
「大丈夫よ。麗人。本当の事言っても黙っていてあげる。正直に言って」
私は彼の顔に自分の顔をぐっと近づけた。彼がテーブルの上に体を反る様に寝かして避けているけど、時間の問題。私の手はがっちりと彼の腰に回して離す事は出来ない。
駄目だ、これ以上、近付けられたら避けようがない。
「わ、分かりましたから」
「何が分かったの?」
「正直に言います。俺への好意を少なくする為です」
「じゃあ、彼女とは?」
「彼女でも何でもありません」
「そう、良かった」
私は、そのままの姿勢でゆっくりと腰に回していた手を緩めて、ブラの後ろに手をやった。
「待って下さい。それ以上するなら本当に園芸部辞めますよ」
「残念だわ。麗人なら私の初めて挙げても良かったのに」
「そういう大切な物はきちんとした所にして下さい」
「えっ、いいの。それ本当にいいの?」
何勘違いしているんだ。
「そう言う意味で言ったんじゃないです」
俺は腰から手が離れたと同時に体を横に滑らせて先輩から体を離すと
「とにかく、今は彼女とか作る気は全く無いんです。分かって下さい。それと早くブラウス着て下さい」
「ふふっ、分かったわ。今はいいわ。ずっと待つから。麗人忘れないでね。私の初めてはあなたにしか挙げないから。責任取ってよ」
どんな責任だ?
先輩はブラウスを着ると急に顔を赤くして
「勇気要ったんだからね。分かってよ」
「……………」
なんて返事すればいいんだ。
結局、その後はいつもの様に先輩と一緒に駅に向かった。しかしこの人俺の天敵か。どうもやり込められてしまう。
明日は道場に行くけど、秀子さんどう出るか心配だ。
―――――
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひ作品へのフォローとご評価★★★を頂けると嬉しいです。ご感想もお待ちしております。
宜しくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます