第38話 文化祭一日目


 模擬店は一日目を三クール、二日目も三クールで行う事になった。星城高校は一クラス四十人だが、一グループ六人、ポテトフライをあげる人交代で二人、ポテトを袋に入れる人一人、会計が交代で二人、学食の冷凍庫に購入した下ごしらえ済みポテトを取りに行く人の構成だ。


 当然四人残る。この人達は、一日目二人、二日目二人で何と1Aがポテトフライを売っていると段ボールに書いた広告を首にかけ、校舎を歩き回るという、飛んでも無い役目の人達。ちょっと可哀想。

 しかし問題なのはそこではない。なんとそのダンボールに掛かれている文言が


 早乙女麗人のポテトフライがあなたの口に!


 これは俺を除くクラス全員が賛成。悲しくも決まってしまった。勿論俺がずっと売る訳では無い。


 俺は雫と一緒で二日目の第一クールだ。健吾は一日目の第三グループ。だからそれ以外はのんびりと本でも読みながら教室に居ようと思ったら


 初日の朝一で九条先輩が押し掛けて来た。

「麗人、今日一緒に文化祭回ろう」

「いや、俺は教室で」


 そこに、今度は1Cの望月さんが、教室にいきなり入って来て

「麗人、今日一緒に文化祭回ろう」


 何と更に八頭先輩と新垣生徒会長が

「「麗人、今日一緒に文化祭回ろう」」


 

 そこになんと登りに早乙女君を守る会と書いた女子達六人が入って来て

「やっぱりこうなっている。みんな早乙女様を守るのよ」

「「「「おーっ!」」」」


「麗人、何なの子の子達」

「見ての通りです」


 教室にいる他の生徒が目を丸くしている。



「九条さん、八頭先輩、新垣生徒会長、望月さん。俺は誰とも文化祭を一緒に回りません。当番以外教室で本を読んでいます」


 俺の声に八頭先輩、新垣生徒会長が反応した。

「ちょ、ちょっと待って。何で九条さんだけが、さん付けで私は新垣生徒会長なの。私も優子って呼んで」

「そうよ。なんで九条さんだけが。私も音江って呼んでよ」


 なんで二人共名前呼びになっているんだ。


「ふふっ、新垣生徒会長、八頭さん。私と麗人の中はあなた達より深いのよ。ねっ、麗人」

 はぁ、九条先輩また爆弾発言を。


 今度は望月さんが反応した。

「えっ、麗人。どういう事。私とだって肌を合わせた深い仲よね」


 またまた何を言っている。挙句新垣生徒会長


「何言っているの。私は二日間も麗人と一緒に海水浴したのよ」


―え、ええ、えええーっ!

―ま、まさか。早乙女様がこんな人達に汚されているとは。

―これはファンクラブの名にかけても早乙女様をお守りしなければ。

―そうだ、そうだ。



 どこから聞きつけたのかこのクラスの騒がしさに担任の桜庭先生が駆けつけてくれた。良かった。


「皆さん、何を騒いでいるのですか。今日は文化祭です。それぞれのクラスの持ち場に帰りなさい。

 新垣さん、あなたは生徒会長として、この文化祭を取り仕切る責任者ですよ。ここで何をしているんですか。

 九条さんも、八頭さんも自分のクラスに戻りなさい」


「「「で、でもぅ」」」

「戻りなさい!」


 先輩達がすごすごと帰って行った。

「そこの早乙女君の登りを持っている人達。あなた達も教室の外に出なさい」

「「ええーっ」」


 スゴスゴと教室の外には出たが、廊下に溜まっている。


「ふふふっ、麗人。私と二人きりになれたね」

「望月さん、あなたもです。騒ぎになった元凶の人は教室から出なさい」

「えーっ」

 彼女もスゴスゴと教室を出て行った。


 良かった。これでゆっくり本を読める。と思っていたら桜庭先生が俺の所にやって来た。

「早乙女君、私が傍にいてあなたを守ってあげる」

「先生!先生も職員室に帰って下さい」

「いいじゃない」

「良くありません」


―そうよ、そうよ。

―そうだ、そうだ。

桜庭先生もスゴスゴと職員室に戻って行った。


「クラスの皆有難う。迷惑かけてごめん」


 田畑さんが近付いて来て

「ううん、早乙女君が謝る事無いわ。君はクラス皆で守ってあげる」


―そうよ、そうよ。


 こっちも不安になって来た。



 外から帰って来た健吾が

「麗人、新垣生徒会長や八頭さん、それに九条さんが残念そうな顔して廊下歩いていたけど、どうかしたのか?」

「ああ」

 俺はさっきの事を話すと


「それは難儀だったな。じゃあ、昼食は俺と雫で模擬店から買ってきてあげるよ。今日は学食も購買もいけないだろう」

「悪いな」


 本当は高校生初めての文化祭。どういう物か見たかったのだけど、これでは仕方ない。



 俺はこのままで一日目が終わると思って、健吾や雫と一緒に昼食を食べている時、文化祭実行委員の相模がやって来た。

「早乙女」

「どうした相模?」

「悪いんだけど、模擬店にちょっとだけ顔出してくれないか。お客の生徒が、お前が居ないのは看板に偽りありとか言い出して」

「麗人、仕方ないな。俺達も一緒に行くから」

「分かった。相模、お昼食べてからでいいか」

「勿論だ」



 昼食を食べ終わり、トイレに行かせて貰ってから…何故かトイレに護衛だと言ってファンクラブの人達が付いて来たけど…。

 このクラスの模擬店に行く事にした。これもファンクラブが登りを立てて周りに付いている。かえって目立つじゃないか。


 俺達、健吾と雫も一緒に模擬店に行くと


―きゃーっ!

―な、生早乙女様が!


「ねえ、君。早乙女様が本当にこのポテトフライ作ったの?」

「勿論だ。なあ早乙女」

「あ、ああ。勿論です」

 ごめんなさい。嘘です。



 それからの模擬店は大変な騒ぎになって…。一日目の三クール分まで売れてしまい。なんと午後二時半で一日目は店仕舞いとなった。


「流石、早乙女だな。お前が来てくれた途端に販売スピードが倍以上になった」

「まあ、クラスの役に立つなら」


 一緒に売っていた堂本さんが

「ねえ、相模君。明日の第一クール早乙女君でしょ。外からも人来るし、午前中で売れちゃうんじゃない。後、体制も強化しないと」

「それは言えるな。ポテトの仕入れ先に下ごしらえしたポテトを追加出来るか聞いてみる。後明日の第三クール目の担当は第一クールに回そう」

「そうだね。クラスチャットで連絡しておく」

「悪いな」



 そして静かでなかった文化祭第一日目が終了した。


―――――


 麗人、明日の午後、何が有るかまだ分かっていません。そうです文化祭二日目午後と言えばアレです。次話もお楽しみに。


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひ作品へのフォローとご評価★★★を頂けると嬉しいです。ご感想もお待ちしております。

宜しくお願いします。


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