第37話 二学期始めのイベントはどうする
俺達はいつもの様に学校の最寄り駅で待合せて学校に向った。
「健吾、少し焼けたか?」
「ああ、部活で学校の周りをランしたり、麗人や雫との海水浴や田所達のプールと焼ける要素は一杯有ったからな」
「麗人は、焼けて無いね」
「ああ、あまり日焼けする体質じゃないし、外に出る時はサングラスに帽子を思い切り目深に被っていたからな。雫も焼けて無いな」
「私は、女の子だもの。日焼けは大敵よ」
「そうか」
二学期にもなると他の生徒も慣れて来たのか、チラチラは見る程度になっている。中学の時もそうだったからな。
俺達が教室に入ると肌の色が変わったのかと思う位黒い奴もいれば、全く夏休み前と同じ奴もいる。誠也達も良い色に焼けていた。
俺達が、席に着くと前に座る上条さんが
「おはようございます。早乙女さん」
「おはよう上条さん」
何か言いたそうな上条さんが口を開く前に誠也達がやって来た。
「麗人、おはよ。あまり焼けて無いな」
「ああ、あまり陽の当たる場所に出ない様にしたからな」
「でも、プール一緒に行ったじゃないか」
「誠也、それは…」
「「「「「えーっ!」」」」」
遅かった。
直ぐに田畑さんと仲の良い二人がやって来た。
「田所君、どういう事?プールは中止って休み前に言っていたわよね。本当は行ったんだ。嘘ついたの!」
「いや、俺は…」
誠也達が女子に詰め寄られている。骨は拾ってやる。がんばれ誠也。
クラスの中がぎゃぁぎゃぁと騒がしくなった所で予鈴が鳴った。命拾いしたな誠也。
桜庭先生が入って来た。メイクぱっちりでちょっと薄青色のスーツを着ている。上着のボタンから悲鳴が聞こえるのは気の所為か?
「皆さん、おはようございます。始業式を始めますので廊下に出て体育館に行って下さい」
校長先生の長ーいお話や連絡事項を聞いた後、皆で教室に戻った。少しして、桜庭先生が戻って来ると
「みなさーん、今日はこの後、避難訓練があります。普段使わない校舎両脇の非常階段から降ります。A、B、Cクラスは左階段からD、E、Fクラスは右階段から降ります。急ぐと怪我しますから順番に進んで下さいねぇ」
ざわざわと教室の出入り口に向かうと何故かクラスの女の子が俺の周りに集まって来た。どういう事?
「早乙女君、急ぐと危ないから私達とゆっくり歩きましょうね」
「うん、そうしよう」
「そうね」
「いや、俺は健吾や誠也と…」
周りを見ても、あれいない。
健吾や誠也が何処にいるか見ると前の後ろの方で固まってニタニタしている。全く冷たいんだから。
仕方なくそのまま流れで非常階段の入口まで行くと、女子が一人だけ止まっていた。何しているんだ。近付くと
「麗人、一緒に避難訓練しましょうか」
「「「えっ?」」」
何言っているんだこの人は。クラス単位の移動だろう。
俺の周りにいる子達を押しのけて俺の傍に行くといきなり手を掴んだ。
「「「えっ?!」」」
―ど、どうして。
―なんで望月さんが早乙女君の手を掴んでいるのよ。
―放しなさいよ。
「あら、私と麗人は、抱合った仲よ。この位いいじゃない」
「「「「「えーっ!」」」」」
「望月さん、何てこと言うんですか!偶々プールで偶然に会っただけでしょう」
「でも、ウォータースライダーでは二回も肌を思いっきりくっつけて滑ったわよね」
「「「「「えーっ!」」」」」
―ど、どういう事。
―早乙女君が望月さんと肌を合わせた。
―きゃーっ。
何という誤解。
「いい加減にして下さい。あの時は仕方なくしただけでしょう。誤解を招く言い方は止めて下さい。それに避難訓練はクラス単位です。早く自分のクラスに戻って下さい」
「もう行っちゃったもの」
―なーんだ。やっぱりなぁ。
―早乙女君が、こんな人と肌を自分から肌を合わせるなんてしないわよね。
―そうだ。そうだ。
―でも肌を合わせたのは事実。
―くやしいー!
もうどうでもいい。
傍に望月さん、周りにクラス女子達に囲まれてグラウンドに出ると桜庭先生がプンプンしている。どう見ても遅いという事を言いたい様だ。誠也と田畑さんに何か言っている。
少し待っていると二年生、三年生も降りて来た。その後、学校の先生達と生徒会長の新垣先輩や他の三年生が、消火器の実演をしていた。
一通り終わり、教室に戻ると桜庭先生が、
「この後はLHRです。来週末土日に予定されている文化祭について話し合いましょう。皆さんは高校一年生、文化祭は初めてなので簡単に説明します」
そう言って、要領よく簡単に説明してくれた。非常に分かりやすかった。流石桜庭先生。
「それでは文化祭実行委員二名を男女で選出して下さい。最初は田所君前に出てまとめて」
「はい」
流石、誠也。この辺の動きは確かだ。
「誰か、文化祭実行委員やる人いないか?」
「俺がやる」
「相模か。他にはいないか…。じゃあ、女子は」
「「「はい、はい、はい」」」
相模はイケメンだし人気があるようだ。
文化祭実行員は相模と堂本綾乃(どうもとあやの)さんだ。頭が良く考査では上位にいる。髪の毛が肩まで有り、目がぱっちりとした女の子だ。二人が教壇の所に行くと
「みんな、催し物を決めよう。やりたい物あるか?」
―メイド喫茶
―執事喫茶
―焼き鳥の模擬店。
―焼きそばがいい。
―いやたこ焼きだ。
―普通の喫茶がいい。
―クレープ屋
色々上がっている時、
「早乙女君との写真会」
だ、誰だ。変な事言うのは。声の方を見ると、なんと田畑さん。
「田畑さん、それは駄目だよ。これはクラス全体でやるものだから」
「えーっ、でも学校売上一位簡単に取れるじゃない」
「そういう問題じゃないでしょう」
頑張れ。相模。
そこに桜庭先生が
「田畑さん、それは実行員会が認めないから無理だわ。個人に集中する催しは駄目よ」
「そんなぁ。一緒に写真撮りたかったのに」
それが本音かよ。
結局、材料も手に入りやすく調理も簡単なポテトフライの模擬店になった。良かった。これなら他のクラスともバッティングし無さそうだしな。
無事にLHRも終わり、健吾や雫と一緒に帰ろうとすると、いきなり三年生が入って来た。
「早乙女君いる?」
嫌な予感しかない。知らぬ振りして帰ろうと思ったら
「あっ、いた」
逃げられなかった。
「早乙女君、私ファンクラブ会長の高橋亜希子(たかはしあきこ)。こっちは副会長二人ね」
「酷い。亜希子。自分だけ紹介して。私、副会長長澤正美(ながさわまさみ)」
「同じく副会長の大野京子(おおのきょうこ)よ」
「あの、俺に何か?」
クラスの人が誰も帰らずにこっちを見ている。
「文化祭の時、色々な人が来るでしょう。だから私達があなたを守る会を作ったの。名前は早乙女君を守る会」
「はぁ?あのそれって」
「それとね。握手会とか出来ないかな。一人二百円で。勿論半分は早乙女君」
「勘弁して下さい。守る会は要らないし、握手会もしません」
「で、でも。うちの文化祭は生徒の親戚も来るから、早乙女君を守らないと心配」
「結構です」
健吾や誠也は笑っているけど、女子達は心配顔だ。
「じゃ、じゃあ、邪魔にならない様に君の傍で護衛するから。お願い。ねえお願い」
三人で両手を胸の前で合わせながら目をキラキラしながら俺の顔を見ている。
はぁ、何でこんな事に。俺当日休もうかな。
―――――
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