第30話 夏休み 健吾と雫たちとの楽しい海遊び?
昨日は藤堂のお陰で賑やかな一日になったが、午後からスマホで健吾や雫とグループチャットで今日から出かける海水浴の海遊びの詳細を話した。
そして今日から二泊三日の海遊びだ。午前六時に起きた俺は、顔を洗って身支度をしてダイニングに行くと珍しくお母さんが起きていた。勿論美麗もお父さんもいる。
「おはよ」
「おはよ、麗人。今日から健吾君や雫ちゃん達と海水浴ね。気を付けて行ってらっしゃい」
「ありがとう。家を午前七時位には出る」
「そう、じゃあ。朝食は食べれるわね」
久しぶりと言っていいほどのお母さんが作ってくれた朝食。プレーンオムレツとトマト、きゅうりとレタスのサラダ。それに冷たい紅茶だ。
プレーンオムレツの味は美麗に及ばないが、お母さんが作ってくれているというだけで嬉しい。
食べ終わって少しゆっくりした後、肩にスポーツバッグを担いで、サングラスをかけ、帽子を目深にかぶって出かけた。白のTシャツとデニムジーンズ、濃い紺色のスニーカだ。
電車に乗って学校の有る駅の方に向い、四つ目の駅で雫と合流する。黄色のTシャツとジーンズ生地のショートパンツそれにオレンジ色のかかと付サンダルだ。大きなバッグを持っている。
夏休みとお盆シーズンそれに朝早いという事もあり、電車の中は空いている。次の駅で健吾も乗って来た。白のTシャツに胸にワンポイントが付いている。俺と同じデニムジーンズに黒のスニーカだ。
「おはよ、麗人、雫」
「「おはよ、健吾」」
このまま電車を乗り換えて東京駅で外房方面に向かう特急に乗る。この季節は指定席を取らないと乗れない。
でもWEB予約で席も決めれるし、ICカードなのでチケットに関しては手に持っていない。便利だ。
二座席ずつなので、健吾と俺、雫という順番で横に座った。
海に向いながら
「一年ぶりだな」
「ああ、天気もいいみたいだし、楽しみだ」
「麗人、今年はどうするの?」
「一応、サングラスとサンシェード、それにラッシュガードを着る。まあ水着は男用だから、そこまでしていれば、変に絡まれる事も無いと思う」
「問題は、食事の時だけね」
「それは仕方ないよ」
「花火出来るかな」
「現地調達という事で」
中学の時までは健吾や雫の両親か俺のお父さんが保護者付き添いという事で一緒に来ていたけど、今年は毎年来ているし、もう高校生だから俺達だけで良いとホテルの人が言ってくれたそうだ。
東京駅から一時間半。駅に降りると夏の日差しが強烈に降り注いでいた。
「これは凄いな」
「ああ、今年は特に強い気がする」
駅から歩いて十分。浜辺の傍に建つホテルだ。俺達は直ぐにフロントに行って
「予約していました、早乙女麗人です」
受付カウンタの人が一瞬俺の顔を見て目を丸くしたが、
「早乙女様とお二人様ですね。お待ちしておりました。今日から二泊三日でございますね。お部屋は六階の六〇五号室です。角部屋ですので大変景色が綺麗な部屋です」
カードキーを三枚渡されてエレベータに向いながらカードキーを健吾と雫に渡すと
「着替えて直ぐに海だな。午前十二時までまだ一時間と少し有るから、食事は海の家だな」
「ああ、楽しみだ」
三人で部屋に入ると窓の向こうに太平洋が見える。
「おお、綺麗だ」
「そうだね。私、洗面所で水着に着替えるから」
「「了解」」
スポーツバッグを部屋の端に置いて、窓から浜辺や港を見ていると
「終わったわよ」
二人で振り返ると
「どうかな。今年新調したの」
二人で振り返るとオレンジ色のセパレーツで腰にパレオが付いた水着を着ている。
「良く似合っているよ」
「とっても可愛いぞ」
「ありがとう、二人共」
雫はスタイルも良いし、顔も可愛い。でも小学校低学年からずっと身近に居ると、異性の意識のない親友としての気持ちだ。それは健吾も同じ。
健吾と俺が水着に順番で着替えて…と言ってもトランクスタイプの海水パンツを履くだけだけど。
後は、それぞれの持ち物、俺は財布を半透明な防水袋に入れてラッシュガードを着てサンシェードをかぶってサングラスを付けた。
「じゃあ、行こうか」
「おう」
「うん」
部屋のカードキーは一旦受付に預けて浜辺に出た。
「あっち!」
ビーチサンダルの横から足に付く砂がめちゃくちゃ熱い。
「気を付けて歩かないと火傷だな」
「あはは、そうだな」
海の家でパラソルを借りて浜辺に立てて貰うと雫がシートを敷いた。
「熱いなぁ」
「まあ、海だからな」
時間は丁度午前十一時。暑い訳だ。
「海に入るか」
「そうだな」
俺は、サングラスとサンシェードを外すと
―えっ?
―おっ?
周りにいる、女性や男性が反応した。俺達はそれを無視してビーチサンダルをぬいで
「「あっち!」」
「熱い、早く水の中に」
三人で急いで水際まで行くと
「助かったぁ」
「ああ、熱かったな」
周りの人達が俺達を見ている。健吾だってイケメンでバスケもやっていて背も俺と同じ位ある。
雫も可愛いしスタイルも良いし、女性では背が高い方だ。まあ、見られるよな。
「麗人、雫。海の中に入ってしまえば分からない」
「そうね」
「そうだな」
俺達の背中の方から
―ねえ、見た。
―うん、男性用の水着着てたよね。
―でもラッシュガード着てたし。
―どう見ても女性でしょ。
―それに滅茶苦茶綺麗で可愛い。
―おい、見たか。
―ああ。ちょっとどっちか分からない。
―俺もだ。
―後で声掛けてみるか。
―ああ。
そんな声を無視して、俺達は水の中で泳いだり、水のかけっこしたりして一時間近く遊んだ後、砂浜に上がって来た。
―やっぱり男よ。
―でもあの顔。
―判断付かない。
まぁ、毎年の事なので無視して三人でパラソルの所に戻ってから三人で濡れた髪の毛をタオルで拭いて、サンシェードと被ってサングラスを掛けた。
三人共良く似合う。
健吾が、
「ここで食べようぜ」
「勿論だ」
「じゃあ、俺と雫で注文してくるから。大体いつもの奴でいいよな」
「頼む」
俺はパラソルで留守番。健吾達が歩いて行く後姿を見ながらパラソルの陰に居ると
「ねえ、君」
声の方を向くと二人の女性が立っていた。結構スタイルがいい。俺が何も言わないで二人を見ていると
「一人なの?」
「いえ、仲間二人と一緒です」
「そう。私達と遊ばない?」
「これから昼食なので」
「後でもう一度来ようよ」
「そうね。また来るわ」
まあ、毎年恒例だ。去年までは三人の内の誰かの両親の一人が一緒だったから簡単にあきらめていたけど、今年はこうなるか。
また、健吾達を見ていると健吾がおでんと焼きそばを乗せたトレイを持って、雫がアメリカンドッグを二つと長いソーセージを持って帰って来た。
「わりい、思ったより混んでて。後で定番の海のラーメンが二つ来るから」
「悪かったな」
健吾が静かにシートの上に乗せた後、雫からケチャップとからカラシが付いているアメリカンドッグ受取り
ガブリ!
「やっぱり、海はこれだよな」
「ああ、俺もそう思う」
「そうね、この味はここでないと食べれないからね」
アメリカンドッグを食べながら三人でおでんをつついていると
「お待ちどう様。ラーメン二つです」
いい色に日焼けした海の家の子が持って来てくれた。
「今年も来てくれたんですね。嬉しいです」
馴染みの海の家のアルバイトの子だ。
「うん、今年もお世話になります」
「はい」
嬉しそうな顔して戻って行った。
「しっかり、覚えられたな」
「あの子、今年で三年目でしょ。だからじゃない」
三人でお昼を食べながら周りを見ると家族ずれが多い。平和な感じがとても気持ちいい。まあ、女性の二人グループが男の人にナンパされている図は定番って所か。
一通り、お昼を食べ終わったので、今度は俺が食器をトレイに乗せて海の家に持って行くと、さっきの女の子が
「ありがとうございます」
「いえ」
周りが、俺を不思議そうに見ているが気にしないで健吾達の傍に戻って振り返ると、さっきの子が周りから何か聞かれていた。何故か恥ずかしそうにしながら応えている。
その後も海の中に入って遊んだりして、午後三時には、一度ホテルに戻った。幸い、疑惑の目?が随分向けられていたが、声を掛けられることは無かったので良かった。
―――――
三人の海水浴。もう一話続きます。まさかの人が現れるのでお楽しみに。
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