第23話 期末考査の結果に変な奴らがいる


 水曜日に変な約束をしてしまった俺は、お昼休み、健吾と雫と一緒に昼食を摂ろうとした時、いきなり教室がざわつき始めた。


 どうしたんだと思って出入り口の方を見ると、えっ!九条先輩がお弁当の包みを抱えている。


「あっ、いた」

 俺に気付くと直ぐに傍に寄って来て


「麗人、一緒に食べよ」


 これには健吾や雫、それに他の教室で食べている子達も驚いた。


「どうしたんですか九条先輩」

「麗人、約束したでしょ。お昼一緒に食べるって」


―ええーっ!!!

―どういう事?

―早乙女君は九条先輩とどういう仲になったの?



 そうなるよな。

「麗人、どういうことだ?」

「健吾、これには訳が」


 俺が先輩の顔を見ると真面目に俺の方を見ている。無下に返す訳にも行かず、

「仕方ない。お昼食べながら話すよ。雫もいいか?」

「私は構わないけど」

 

 先輩は、ニコニコしながら、ちゃっかり俺の横に座ってお弁当を広げている。全く。


 俺は、昨日水曜日に起きた事を話した。

「はぁ、そういう事か」

「それでね、麗人は私の事を…」

「先輩、それ以上言ったら、本当に園芸部辞めますよ」

「もう麗人のケチ」

 どこがケチなんだ。


―なんだー。そういう事か。良かった。

―良くないわよ。あの腹黒い雌蜘蛛に巻き取られつつあるのよ。

―そうよ。皆で早乙女君を守らないと。


 その声に九条先輩が声の方に怒った顔して睨みつけると


―ひっ!!!


 この人、怒った時の顔ってほんと怖いよね。



 お昼休みも終わったけど、九条先輩は帰り際に

「麗人、毎日来るからね」

「えっ!」


―なあ、聞いたか。あの我が校美少女No1の九条静香が毎日この教室で食べるって。

―ああ、明日から俺も教室で食べる。

―俺もだ。


 学食や外で食べ終わった男子達が要らぬことを言い始めた。



 そんな日を過ごしながら翌週火曜日。期末考査の結果発表の日を迎えた。健吾と雫と一緒に、階段横の掲示板に行くと人だかりだった。


「麗人、二位じゃないか。凄いな」

「健吾が十二位、雫が十位か。二人だって凄いよ」

「麗人、凄いな。一位は逃したけど期末で二位は凄いよ。見ろよ藤堂の奴、七位に落っこちてんの。ビッグマウスがバレて来たぜ」


 藤堂が俺の顔を見たけど、何も言わずに教室に去って行った。こんなの気にしなくてもいいのに。


「麗人、所で一位って。誰だこいつ?」

「誠也が知らないなら俺も知らないよ」

「中間の時、名前なかったよな」


 雫位の身長の女子が近付いて来た。

「早乙女君。私が一位よ。君は二位。だから私の言う事を聞くのよ」

「「はぁ?」」


 俺や誠也だけじゃなく、健吾や雫も驚いている。


「あんた誰だ?」

「田所君、あんたは失礼ね。私は望月美紀(もちづきみき)よ。Cクラス。受験で手を抜いてしまったの。これからは宜しくね。麗人」


―何よ。あの人。早乙女様を名前呼びして。

―気に入らないわ。


「あら、名前呼びしたければ、あなた達も麗人より上位に来なさいよ。またね麗人」


 なんなんだ。あの人は?

「麗人、また面倒な奴が現れたな」

「ああ」

 あのツンツンした女子はいったい誰なんだ?


「早乙女。俺、あいつ知っている」

「川上。誰だ?」

「女子剣道部。一年生なのに入部初日から生意気で、主将が相手したら三本連取されたって噂の望月女子だ」

「女子剣道部?」

 そんなの有ったんだ。


 俺達が、望月女子の事で話をしていると二年の方が騒がしい。そっちの方を見ると九条先輩と八頭先輩が睨み合っている。


「ふふっ、八頭さん。口ほどにも無いわね」

「な、何言っているの。ちょっと油断しただけよ」

 この女から早乙女君を引き剥がしてショックを与えようとしたのに上手く進んでいない。


「まあ、二学期も同じ事言っているのが目に映るわ。おほほっ」


 悔しいー。九条静香に二連敗するなんて。一年の時は交代で一位を取っていたのに。見てなさい。二学期は必ずその言葉返してあげるわ。


 あれだから、襲われるんだよ九条先輩は。


「ねえ、あなた。早乙女君でしょ?」

「あっ、はい」

「昼休みにあなたのクラスに行くわね」

「…………」

 誰だこの人。でもどこかで見た事有る様な?


「麗人、とうとう生徒会長にも目を付けられたな」

「ええーっ!」


 予鈴が鳴ってしまった。



 昼休みになり、俺と健吾と雫と…それに何故か九条先輩と一緒にお昼を教室で食べている。教室の中は、女子だけでなく、九条先輩目当ての男子も一杯いる。


「なあ、麗人。これなら学食も同じじゃないか?」

「そうだな」

「でも、ここはクラスの人達だけよ。学食に行ったらこれじゃあ済まないわ」

「雫の言う事にも一理あるな」

「じゃあ、みんなで園芸部の倉庫で食べる」

「「「駄目です!」」」

「冗談で言ったのに」

「先輩の言い様は冗談に聞こえません」

「そうなの?」

「はい」



 丁度四人が食べ終わった頃、

「早乙女君いる?」


―生徒会長だわ。

―どうしたのかしら。


 俺を見つけると

「早乙女君。生徒会室に来て」

「あなたは?」

「私はこの学校の生徒会長を務めている新垣優子(あらがきゆうこ)、三年Aクラスよ。九条さん、丁度いい所にいるわ。早乙女君を生徒会に入れたいの。兼部で良いわよね」

「えっ!何を言っているんですか新垣さん。麗人が生徒会に入る訳ないでしょう」


「分からないわよ。それより早乙女君、早く生徒会室に来て。色々話したいの」

「でも、俺、生徒会に入るなんて考えていないし」

「いいから。立って早く」

「で、でも」

「でもも何もない。直ぐに来て。時間無いの」


 俺は健吾や雫の顔を見ると判断出来ないという顔をしていた。九条先輩は心配顔だ。


「新垣生徒会長。俺は生徒会に興味無いので」

「いいから、話を聞けば興味も出るわよ。さっ、早く」


 あまりの強引さに根負けして腕を掴まれ様にして生徒会長に連れて行かれた。


―はぁ、九条先輩、八頭先輩、望月さんに新垣生徒会長かぁ。勝てる気しないなぁ。

―そうねえ。あまりにも色々な事でレベルが違い過ぎるわ。

―でも、諦めたくない。ファンクラブにも入っているし。

―そうよ。諦めるのはまだ早いわ。

―ファンクラブの力で何とかしましょうよ。


 不味いわ。八頭さんだけじゃなく、ここに来て望月さんと新垣さんまで参戦してくるとは。絶対に麗人は園芸部を辞めさせない。でも生徒会を敵に回したくないし。考えないと。


―――――

 

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