第5話 放課後の出来事


 今日の授業が終わり、俺はスクールバッグを持って

「健吾、雫。放課後、水やりしないといけないんだ」

「はぁ、そうか。じゃあ俺達は先に帰るな」

「悪い」


 健吾と雫が帰って行く姿を見て教室を出ようとすると、何故か女子生徒のほとんどが残っている。どうしたんだと思いながら教室のドアを出て昇降口に向った頃、教室では


「皆、由々しきことが発生したわ。私達の早乙女君が、二年生の悪のクモの糸に絡められようとしている。なんとか防がないと」

「でも、相手はあの九条先輩でしょ。狙った相手は絞り尽くすまで離さないという」

「田畑さん、何かいい案あるの?」

「無いから皆の意見を聞きたいのよ。このままでは、早乙女君があの女の毒牙に掛かるわ。皆、それでもいいの?」

「「「「駄目、絶対に駄目!!」

「じゃあ、考えようよ」




 そんな事を女子達が話し合っているとは露知らず、俺はスクールバッグを持って校舎裏の園芸部の部室と言っても花壇の用具が置いてある倉庫に小さなテーブルと椅子があるだけだけど来ていた。まだ九条先輩は来ていない。


 倉庫内にある用具を見ながら待っていると

「早乙女君、待ったぁ?」

「いえ、今来たばかりです」

「そう、じゃあ早速始めようか。ジョーロとリール持って来て」

「はい」


 俺は倉庫からジョーロ二つとシャワーヘッドの付いたホースが巻かれているリールホルダを持って九条先輩と一緒に校門の傍に行った。校門の付近では、下校中の生徒がまだ一杯いる。


「水道口にリールの元を付けてロックして」

「はい」

「それが終わったら、全体的に水を撒いてね」


 校門の両脇に花壇がある。それを下校する生徒に掛からない様にしていると

「早乙女君、助かるわ。君が入ってくれたおかげ、花達が喜んでいる」


 ニコニコして何もしないで俺を見ている先輩を見て、一番嬉しいの先輩でしょ。何となく想像は付いていたけど、やっぱりこうなったか。


 俺が花壇に水をやってると下校する女性生徒が


―へーっ、今年の園芸部ってあんなに可愛い女の子が入ったんだ。

―あの子良いね。私も入ろうかな。

―そうね。毎日あんな可愛い事一緒に居れるなんて良いかも。


 何故か女子生徒から変な声が聞こえる。


―おい、園芸部の子見たか。

―ああ、俺園芸部にする。

―俺も。


 男子生徒が変な事を言い始めた。


 花に水やるのはいいけど、道場に行けなくなった。やっぱり園芸部退部しようかな。



 不味い、不味い、不味い。早乙女君が手伝ってくれるのはいいけど、部員は私と早乙女君だけでいい。桜庭先生に新入部員はもういらないと言わないと。



 ものの三十分位で水やりも終わると、ホースをリールホルダに巻いて持って来たジョーロを持って部室?倉庫?に戻った。ジョーロ使っていないんだけど?


 部室に入ると先輩が机の引出しからA4のフォルダを取出して、俺の前に置くと


「早乙女君、一年間の花壇のお世話のスケジュールを説明するわ。まず、基本、春、秋の水やりは、毎週、月、木。夏は月、水、金。冬は水曜日一回だけ。植物によっては二週間に一回の物もある。草むしりは適宜だけど、草の根が深くなる前に早めに刈り取る。除草剤は使用しないから」

 大体、家の庭の植物と同じだ。


「後、肥料は多年草の場合、年四回。六月初旬、九月初旬、十二月初旬。三月初旬に施すの。春先の花とかは、植える時だけね。ここまではいいかな?」

「はい」


「後、春先、夏先の花とかの一年草は、基本植え付けの時だけ。どんな花を植え付けるかは、桜庭先生と相談して生徒会に予算申請して業者から購入」

「あの、それ全部、九条先輩一人でやっているんですか?」

「ううん、去年は三年生がいたけど、卒業してしまって。今年は私だけ。男子が手伝うとか言ってくれるんだけど、草むしりとかお願いすると大体、一回やると皆辞めて行く。だから早乙女君には、長くやって欲しいの」

「まあ、出来るだけ」

 思ったより大変そうだ。道場に行くのが土日だけになってしまいそう。


「後ね」


 反対側の椅子に座っていた先輩がこっちに回って来た。

「早乙女って名前素敵だけど、長いよね」

「そうですか?」

 そんなに長いとは思えないのだけど?


「だからぁ。麗人で良いかな?」

「いや、でも」

「いいでしょ!」


 何故か俺の両肩を掴んで来た。

「わ、分かりましたから手を離して下さい」

「駄目、麗人の手で、私の手を離さして」

「へっ?」

 この人、なんか変?


 仕方なく俺は自分の手で肩に置かれた先輩の手を持って方から外すと

「ふふっ、麗人って綺麗で可愛いよね」

「い、いや、気の所為です。先輩の方がとても綺麗です」

 なんか変な事になって来た。


「ふふっ、そう思う。本当に?」

「は、はい」

「そう。じゃあいいわ。そろそろ帰ろうか」


 ふふっ、私が初めて見初めた子。この歳になるまで男なんて全く興味無かった。でもこの子は違う。今は私に無関心の様だけど、必ず私に振り向かせて見せる。

 取敢えず、園芸部には入れた。思ったより早く入ってくれたけど、次のステップに移すわ。



 初めての部内ミーティング?も無事終わり、俺達は校門に向うと部活がそろそろ終わり始めていた。



―ねえ、あの子。

―誰?

―ほら、園芸部の子と歩いている女の子。

―あっ、だ、誰?

―今年入学して噂になっている子よ。園芸部に入ったのかな?

―えーっ、先越されたの?何とかうちの部に入れようよ。そうすれば…。

―ふふふっ、そうね。


―――――


 書き始めは読者様の応援が一番のエネルギーです。

 まだ★が少なくて寂しいです。投稿開始段階で少ないと心が折れます。評価してもいいけど★★★は上げないという読者様、★★でも★でも良いです。頂ければ幸いです。


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると次話書こうかなって思っています。

宜しくお願いします。

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