第4話 俺は女子から嫌われている?


 この高校に入ってから二週間が過ぎた。健吾も雫もクラスの人と良く話をしている。俺はと言うと


 今日も健吾や雫と話せる朝とお昼休み以外は、次の授業までぼーっとしているだけ。外に見えるグラウンドでは、次の授業が体育なのか元気な男子や女子が遊んでいる。



「麗人、クラブどうする?」

「決めていない。帰宅部でいいよ」

「勿体ないなあ。その身長生かして運動部なんかどうだ?」

「体は道場で動かしているから」

「じゃあ、文化部は…って訳には行かないか」

「健吾はどうするんだ?」

「バスケかな?」

「雫は?」

「私は女バスのマネージャ」

「はぁ。中学の時も何も入らなかったしな。どうしよう」



 普段、朝の挨拶以外は何も話さない上条さんがこちらを向いて

「早乙女君、図書委員はどうかな?君が入ってくれると嬉しんだけど」

「図書委員ですか?向いて無さそう」


 いきなり、クラス委員の田畑さんが上条さんの所に来た。

「ちょっと上条さん、来て」

「えっ、あ、うん」


 手を引っ張られて廊下に連れて行かれた。どうしたんだろ?


 帰って来ると

「早乙女君、さっきの話は無かった事にして」

「えっ、まあいいですけど」


 予鈴が鳴って次の授業の先生が入って来た。



 私、上条里奈。早乙女君は綺麗で可愛い。東雲さんを除くクラスの女子のほぼ全員が彼に好意を持っている。


 もし、全員が同じ行動を取ったら、クラスに亀裂が入るのは必至。だからクラス委員の田畑さんが提案して、彼には誰も告白しない事。


 勉強以外の事で話しかけない事。あくまで早乙女君は鑑賞対象とするという事で決まった。罰則はないけどそれには暗黙の了解の様なものがある。


 だからさっきの図書委員のお誘いは、その決まりに抵触すると田畑さんから注意された。

 本当は彼が図書委員になってくれれば図書室の利用も増えるだろうし、委員になってくれる人も増えるかも知れないと思ったのだけど。仕方ない。




 昼休みになり、健吾と一緒に急いで購買に行って菓子パンと自販機でジュースを買って教室に戻る途中、部活オリの日に有った九条さんが、校舎裏に行った。告白でもされるのかな。でも手にお弁当を持っている。


「健吾、あれは?」

「ああ、九条先輩は園芸部を一人でやっているらしい。お昼の時は毎日では無いけど、ああやってお弁当持ちながら、校舎裏の花壇や校門の傍の花壇に一人で水やりや草むしりをしているらしい」

「良く知っているな」

「クラスの子が教えてくれた」

「えっ、何でお前だけに?」

「いや、他の奴も知っている」

「えっ?」

 何で俺だけ知らないんだ。凄く気が落ち込む。



 教室に戻り、健吾と雫と一緒にお昼を食べながら

「俺、これ食べたら校舎裏に行って来る」

「なんで?」

「ちょっと、さっきの件で」

「まあ、いいけどさ」



 菓子パンを適当に食べて、ジュースを飲み終わると、空き缶を持って、途中自販機の横にある空き缶入れに入れると、その足で校舎裏に行った。健吾の言い様が気になったからだ。なんで一人でやっているんだ?



 確かに九条先輩が、食べ終わったお弁当をベンチに置いて、ホースで花壇に水をやっていた。


 少し、見ているとこっちに気付いた。

「あれ、早乙女君、どうしたの?」

「いや、ちょっと…」


「ふーん、私の事が気になったの?それとも園芸部に入る気になったの?」

「いや、それはどちらでも…」

「そうか、どちらも有るのか。ふふっ、私、こう見えても容姿には少し自信あるんだ。じゃあ、園芸部に入ってくれるって事で。そこのジョーロに水入れて、あっちの花壇に水やって」

 勝手に誤解されている。

 

「えっ、いや、俺は」

「男子は、一度決めたらぐずぐずしない。直ぐやる!」

「はい!」


 この人結構目付き鋭い。怖いかも。園芸部に入るつもりは無いが、花に水やるのは嫌いではない。家でもやっている事。


 俺はジョーロに水を入れて、ベンチから少し離れた花壇に水をやっていると

「へーっ、上手いじゃない。やり慣れているの?」

「ええ、家で」

「そっかあ、そっかあ。じゃあ決まりだね。後で君のクラスに行くから。あっ、何クラス?」

「Aです」


 少し手伝っていると水やりが終わった。

「ねえ、放課後も手伝って。校門の花壇もやらないといけないの」

「でも、俺…」

「なに君。か弱い乙女にだけ、校門の傍の花壇に水やりさせるの」

「で、でも」

「いいから、手伝ってね。さっ、片付けて教室に戻らないと授業に遅れるわ」


 校舎に入って、階段で別れ際に

「ありがと早乙女君」


 手を振って九条先輩は階段を昇って行った。見た目だけで言えば、背中の中程まである艶やかな髪の毛、胸は大きく、腰は締まっていてお尻も適度に大きい。


 切れ長の大きな目にスッとした鼻。可愛い唇で、これらを生かす綺麗な顔の輪郭をしている。身長は雫より少し小さいから百六十五センチ位かな。

 どう見てもモテる気がするんだけど。彼氏にでも手伝って貰えばいいのに。



 教室に戻ると

「麗人、遅かったじゃないか。何していたんだ?」


 俺は九条先輩とのやり取りを話すと

「えっ、お前園芸部に入るの?」


 健吾の声にクラスの女子が一斉にこっちを向いた。


―まずいわね。

―園芸部って、あの九条先輩が一人でやっているのよね。

―まさかの伏兵。

―どうする。

―放課後緊急会議よ。


 なんかクラスの中が不穏な空気に。



 五限目が終わった中休み、走る様に九条先輩がやって来た。いきなり現れた彼女に皆驚いている。


「早乙女君。来て。時間無いから」


 俺の手首をいきなり握った。


―きゃーっ。

―九条先輩が、早乙女君の腕を握っている。

―ずるーい。



「早く。職員室に行くわよ」

「わ、分かりました」


 俺は、職員室連れられて来たが、流石に緊張する。九条さんが

「入るわよ」


 と言って俺の顔を見た後、


ガラガラガラ


「桜庭先生」

「何、九条さん?」


 俺はせつかれる様に、桜庭先生の所に連れて行かれると

「早乙女君が園芸部に入ってくれるそうです」

「まあ、嬉しいわ。さっ、この用紙のここに名前書けばいいわよ」


 俺が躊躇していると九条先輩が

「ほら、早乙女君早く書いて」



 予鈴が鳴る直前にギリギリで教室に戻って来た俺は、何故か心配そうな視線を浴びた。皆がジッと俺を見ている。


 その視線に耐えれなくって、教室の後ろをサッと歩いて席に座ると健吾が

「サインしたのか?」

「させられた」

「そうか」


 何故か女子達の視線が心配から絶望に変わった。一体どうしたんだ。


―――――


 書き始めは読者様の応援が一番のエネルギーです。

 まだ★が少なくて寂しいです。投稿開始段階で少ないと心が折れます。評価してもいいけど★★★は上げないという読者様、★★でも★でも良いです。頂ければ幸いです。


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると次話書こうかなって思っています。

宜しくお願いします。


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