第二幕-5
本町は返事の代わりに、曖昧に微笑んだ。
嬉しい様な、悲しい様な、そんな目で見つめながら。
「読めた方がいい時もあるし、そうじゃない時もある。……まぁ、そんな感じかな?」「そんな感じねぇ……」
その後、ファミレスで満腹になるまで食べ終えて帰宅し。
早速とばかりに、本を開き始めた。
話に聞いていただけの世界を味わう為に。
お陰で今日も寝不足にはなりそうだけど……明日は日曜日か。
読み終え、そうしてもう一度、ペラペラと読み返し。
日曜日も本を読んだり、ネットで感想を調べたり。
確かに……物凄く、しっかりと感想が書いてあるな。
自分で気付かない部分まで読み込んで、自分の知らない感情を味わってて。
……まぁ、俺としては面白かったな~位だけど。
そうして月曜日、いつもより早めに登校すると。
教室には既に本町が、机で本を読みながら到着を待機していた。
本の感想を聞く時は、いつも早めに登校してるから。
わざわざ朝一番を狙わなくても、放課後でも時間はあるのに。
……それだけ、本が好きなんだろうな。
なんて考えると、ちょっとだけ気が重くなった。
「おはよう、本町。読んで来たぞ……一巻だけな」
「一巻? なら……三巻まで行くの、ムリだった?」
「読む速度が遅いだけだよ。ったく、お前に勧められて偶に本を読んだりしてるけどな」
「その内、読むのが速くなるから。期待……それで?」
「んー……面白かった」
「うんうん、それで?」
「……人助けはした方がいいなって、そう思いました。まる」
「ほら、その、主人公についてとか。周りのキャラクターとの交流とか」
「いいんじゃねぇの? 面白いで」
周りの感想が何だろうと、俺は面白かったの感想しかない。
別にそれで構わないし……というか、折角読んだのに感想が出てこないだけだけど。
でも、やっぱし怒られるかなと思っていると……
「……面白いでいい、か。素敵。前永君らしい」
「別に素敵とまで行かないと思うけどな。本町の方が沢山、感想を言えてたし」
「いいの、その方が……だったら、もっと逆行転生の作品、読む? まだまだ読んでない本も多くて」
「それもいいけど、もう少し硬い本も読んでみたいかな。ほら、あの本はラノベというか、文章が軽いというか……そんな感じだろ?」
「文章の軽さが、内容の良し悪しを決める訳ではないと思うけど」
「じゃなくて、そっちの方が感想を話せるんじゃないかって……多分」
「なら、お勧めの本があるから。期待。今度の金曜日にあげるね」「そうだな……」
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