第一章 第18話 【アンナ】と【ミレイ】の救出
早朝から、”ビーッ、ビーッ、”と云う警戒音アラートが脳内に鳴り響く。
折角、昨夜は久しぶりに【神樹】から貰った、絶品の果実酒をアンジーと酌み交わし、気持ち良く寝ていたのに全く無粋な目覚ましである。
[ヘルメス]からの緊急告知と云う事なので、脳内での会話を行う。
「[ヘルメス]! どうしたんだ、早朝にも関わらず警戒音アラートとは、穏やかじゃないな・・・」
〈申し訳ありませんマスター!
しかし、この情報は一刻も早く知らせる必要が有りまして、緊急で起こさせて頂きました!〉
「・・・何事だ・・・、お前が言う位だから相当な話しだと理解できる・・・、報告せよ・・・」
〈ハッ! 本日未明に、此の交易都市付近に駐屯している、王国軍の追跡及び派遣部隊の屯所にて、恐らく公国軍の者と思われる女性2人が、初めて屯所から出て捕虜扱いで移動を開始し始めました。
動画にてその様子を御覧ください!〉
その動画を、脳内で再生してもらいながら、会話を続ける。
「ふむ、何故此の2人が公国軍の関係者と判明したのだ?」
〈昨日、マスターが得られた資料を、徹底的に読み込みまして、其の上で地域特性や文化による変遷を鑑みると、幾つかの差異が王国人と公国人の民族性として見られました。
其の民族性の差異を当て嵌めて、女性2人と王国軍人を見ると明らかな違いがあり、特にトイレをする習慣の差が顕著でした。
然も、使用している【公用語】でもイントネーションの違いが存在し、女性2人の所作からも軍人と思われる事から公国軍人と推定しました〉
「・・・判った、アンジーに確認しよう!
恐らく此の交易都市で捕まっている事から、アンジーと共に王国軍追跡部隊から逃亡していて、逃げられず捕虜になった可能性が高い、アンジーにこの動画を見せるのが手っ取り早い!
お前は、今からどの様な方法で救出するか、検討に入り適切な作戦を俺に提示せよ!」
〈了解しました!〉
と[ヘルメス]との会話を終えてアンジー達の部屋に向かい、アンジーだけに起きて貰う為に体内の【バイオ・ナノマシーン】に命じて穏やかに起こさせた・・・。
5分程して、アンジーだけが部屋から出て来たタイミングに、丁度俺も起き出した体を装って「おはよう」と声を掛け合い、話があるといって応接室に来てもらい、先程の動画を見て貰った・・・。
「【アンナ】【ミレイ】?!」
驚いて声を上げたアンジーに、シーッと指を立てて声を小さくとのジェスチャーをして、アンジー達の部屋を指さして妹達に聞こえない様にさせて、アンジーを落ち着かせて事情を尋ねる。
「・・・アンナとミレイは、私の親衛隊員の者で最後の10人になった際のメンバーだった・・・。
私はてっきり、例の王国軍追跡部隊によって殺されたものと思っていたが、無事だったのか・・・」
そう言うとアンジーは居住まいを正して、俺にお願いをして来た。
「ヴァン! 改めてお願いしたい!
是が非でもアンナとミレイを救助してくれないだろうか?」
「当然だ! 俺は俺自身の矜持に誓って、アンジーに協力すると決めた!
当然、アンジーの部下だったのなら彼女等は俺の仲間でもある!
救助して身の安全を計ろう」
そう答えて、[ヘルメス]が策定してくれた救出案を提示した。
幾つか納得出来ない部分がアンジーにはあった様だが、最終的には納得してくれたので、俺達の乗る降下艇は、屯所から出て行く彼女等を連れた王国軍追跡部隊の上に、隠蔽モードで滞空させた・・・。
2キロメートル程交易都市から遠ざかり、大声を上げたとしても駆けつけるには時間が掛かる、と判断した俺は、
「・・・さて、行ってくるよ!」
とアンジーに声を掛けて、俺は隠蔽モードで滞空中の降下艇から、地上15メートルの高さから飛び降りる。
ドゴッ
鈍い音を立てて、アンナとミレイを後ろ手に縛った縄を持つ、馬に乗った王国軍人の頭を思いっ切り踏みつけて、俺は身体を捻って地面に降り立つ。
いきなり空中から現れて、突然王国軍人を踏みつけた俺を見て、此の場にいる全員は呆然自失としていたが、5秒もすると王国軍人でも隊長と思われる男が、他の王国軍人を叱咤した!
「全員抜刀せよ! 不埒者だ! 取り囲んで捕まえろ! 怪我をさせても構わん!」
と怒鳴ったので、此の場にいる王国軍人残り10人が、俺を取り囲んだ。
しかし、俺はその動きを一切無視して、降下艇から【バリア・バルーン】を投射させてアンナとミレイの二人を保護した上で、彼女等に持っていた【隠蔽インビジブルシート】を被せて身体全体の姿を消させた!
突然の理解を越えた状況変化に、驚愕したまま動けずに居た王国軍人達は、目の前に残る俺が少なくとも、敵性対象である事だけは認識し、一斉に抜刀していた剣で斬り掛かって来た!
その遅すぎる対応に、俺は何時もの様に獰猛な笑みを浮かべながら、向かって行く!
ガッ!
同時に斬り掛かって来た、左右と正面そして背後4人の王国軍人に対し、俺は彼等の背丈を越える様に跳躍し、4人の横顔を同時に蹴る様に【旋風脚】を放つ!
4人はそのまま蹴られた勢いで、それぞれ真横に吹っ飛びそのまま倒れ伏してしまい、それを見た他の王国軍人は一瞬動きを止めた・・・。
だが、その一瞬の躊躇は俺と相対しているというのに、致命的な隙である。
次の瞬間、一番近くに居た奴の懐に飛び込み、そのままの勢いでショルダータックルをぶちかまして、鎧を拉げさせながら吹っ飛ばす!
その様子を、残っている王国軍人は、顔を引き攣らせながら凝視している・・・。
「・・・何なんだ・・・、何なんだお前は・・・?
鎧も付けず武装もしていないのに、あっという間に我等の半数を戦闘不能にするとは?!
まさか?! 神人カミビトなのか?」
「神人カミビト? それが何なのかは知らないが、どうやら俺はお前たちの言うところの、【星人ほしびと】という存在らしいぞ。
まあ、俺としては俺の存在が何者だろうと、やることは変わらない。
どうせ俺に楯突くのは無駄なのだから、抵抗せずに拘束を受け入れてくれると楽だな」
そう煽ってやると、隊長と思われる男は、驚愕の為か目一杯目を見開いて喘ぐように呟いた・・・。
「・・・ほ、星人ほしびとだと、あ、あれは只のお伽噺だった筈だ・・・」
「まあ、そんな事はどうでもいいよ!
兎に角、お前たち王国軍人のやることなすこと、俺の気分を害する事甚だしいのでな。
精々頑張って抵抗してみろ」
そう言い渡して、スタスタと無造作に近づいて行くと、
「「「うわわわわーーー!」」」
と雄叫びを上げて、残った王国軍人は距離を取りながら、必死に魔法を唱えたり懐から【魔法石】を取り出して、封じられた魔法を解き放つ!
その行動を見て、俺は顔に薄ら笑いを浮かべて、そのあまりに遅い動きに欠伸を噛み締めながら、【コンビネーションブロー】をそれぞれの、顔面に叩き込んで無力化した。
あっさりと伸びてしまった王国軍人達を、以前と同じく【時間凍結】して【亜空間】に収容し、
「さて、彼女等を降下艇に収容しよう」
と独り言ちて、俺は彼女等の所に歩み寄って行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます