第一章 第19話 アンナとミレイの合流 【アンナ】視点
◇◇◇【アンナ】視点◇◇◇
私と【ミレイ】は、【紅の公女将軍】こと【アンジェリカ・オリュンピアス】様と逸れてしまってから、【オリンピア大公国】へ向かうべく此の交易都市【エルラン】に辿り着き、アンジェリカ様直筆の手紙を送るべく準備していたのだが、王国軍の追跡部隊によって追い詰められて捕虜にされてしまった・・・。
何とか王国軍の隙を見つけ逃れようとしていたが、奴等が飲ませた【魔法薬】によって弱体化してしまい、中々逃げ出せずにいたわ。
かと言って、奴等は私達を拷問せずに持っていたアンジェリカ様直筆の手紙を取り上げて、服装を囚人服にしただけで、程無く王国に連行される事になっていたわ・・・。
私達としても、王国への連行途中ならば逃げられる可能性が有ると考え、体力の回復を測っていたのだけど、奴等も考えていて私達は徒歩させた上で、奴等は馬で移動すると云う手段で体力を消耗させる。
(・・・何か、トラブルとか起きないかしら・・・、そうすれば逃げられるかも・・・)
そう考えて、歩きながら天を仰いで見ると、いきなり空中から人間が降ってきたわ!
ドゴッ
鈍い音を立てて、私達の後ろ手に縛った縄を持つ、馬に乗った王国軍人の頭を思いっ切り踏みつけて、降ってきた人間は身体を捻って地面に降り立ったの。
どうやら姿形から若い男と判ったけど、顔を見ても公国軍の関係者でも見覚えが無くて、誰なのか想像もつかない・・・。
5秒間程、此の場にいる全員が呆然自失としていたんだけど、王国軍人でも隊長と思われる男が、他の王国軍人を叱咤したわ!
「全員抜刀せよ! 不埒者だ! 取り囲んで捕まえろ! 怪我をさせても構わん!」
と怒鳴ったので、此の場にいる王国軍人残り10人が、男を取り囲んだわ。
すると、いきなり空から透明なまるで泡の様な物が、私とミレイに降って来てそのまま膜で覆ってしまったわ。
次に男は、手に携えていたシートを私達に被せると、徐ろに王国軍人達に向き直る・・・。
突然の理解を越えた状況変化に、驚愕したまま動けずに居た王国軍人達は、男に向かって一斉に抜刀していた剣で斬り掛かったわ!
ガッ!
同時に斬り掛かって来た、左右と正面そして背後4人の王国軍人に対し、男は彼等の背丈を越える様に跳躍し、4人の横顔を同時に蹴る様に回転しながら蹴りを放ったわ!
蹴られた4人はそのまま蹴られた勢いで、それぞれ真横に吹っ飛びそのまま倒れ伏してしまい、それを見た他の王国軍人は一瞬動きを止めたわ・・・。
「「・・・えっ・・・」」
私とミレイは、同時に呟いたわ。
王国軍人は長時間の馬上移動という事で、軽装状態とは云えかなりの重量が有るし、4人が同時に吹っ飛んで行くなど有り得ない話だわ。
そして次の瞬間には、一番近くに居た王国軍人の懐に男は飛び込み、そのままの勢いでショルダータックルをぶちかまして、鎧を拉げさせながら吹っ飛ばす!
(・・・凄まじい・・・)
最早、只、見ている事しか出来ない私達は、感嘆を込めて見つめ続ける・・・。
その様子を、残っている王国軍人達は、顔を引き攣らせながら凝視していたのだけど。
王国軍人でも隊長と思われる男が、
「・・・何なんだ・・・、何なんだお前は・・・?
鎧も付けず武装もしていないのに、あっという間に我等の半数を戦闘不能にするとは?!
まさか?! 【神人カミビト】なのか?」
神人カミビト・・・、それは伝説の存在で、遥かなる過去に降臨した【星人ほしびと】と、現地の人間との間に生まれた、人間を遥かに超越した存在で有り、時折子孫に出現する先祖返りをそう称する事もある。
だが、そんな王国軍人でも隊長と思われる男の予想に対し、男は事も無げに奴等が絶望する言葉を返す。
「神人カミビト? それが何なのかは知らないが、どうやら俺はお前たちの言うところの、【星人ほしびと】という存在らしいぞ。
まあ、俺としては俺の存在が何者だろうと、やることは変わらない。
どうせ俺に楯突くのは無駄なのだから、抵抗せずに拘束を受け入れてくれると楽だな」
と男はそう煽ってやると、隊長と思われる男は、驚愕の為か目一杯目を見開いて喘ぐように呟いたわ。
「・・・ほ、星人ほしびとだと、あ、あれは只のお伽噺だった筈だ・・・」
「まあ、そんな事はどうでもいいよ!
兎に角、お前たち王国軍人のやることなすこと、俺の気分を害する事甚だしいのでな。
精々頑張って抵抗してみろ」
そう言い渡して、スタスタと無造作に近づいて行くと、
「「「うわわわわーーー!」」」
と雄叫びを上げて、残った王国軍人達は距離を取りながら、必死に魔法を唱えたり懐から【魔法石】を取り出して、封じられた魔法を解き放ったわ!
次の瞬間、男は顔に薄ら笑いを浮かべて、神速を以って次々と放たれる魔法を躱して、王国軍人の懐に飛び込みながら、凄まじい速度の拳を王国軍人達の顔面に叩き込んで無力化したの!
そして、伸びてしまっている王国軍人達を、何やら空中から注がれる光りによって拘束すると、信じられない程の巨大な【亜空間】を出現させて、次々と王国軍人や馬そして荷馬車まで亜空間に放り込んだわ。
呆然とその状況を見ていると、横から突然声を掛けられたわ。
「アンナ! ミレイ!」
その聞き覚えのある声に、私とミレイが横を向くと、アンジェリカ様が駆けて来るのが見えた。
「「姫様ーーー!」」
私達も向こう側が透けて見える不思議なシートを捲り、アンジェリカ様に駆け寄り互いに抱き着く!
私達とアンジェリカ様は互いに抱擁し合いながら、咽び泣きつつ互いの無事を祝いあったわ。
暫くその状態だったんだけど、やがてどちらからとも無く離れて、近くで温かい目をしながら佇んでいた男性が声を掛けて来たの。
「それじゃあアンジー、彼女達を紹介してくれないかな?」
その”アンジー”と、アンジェリカ様の事を呼び捨てにした事実に驚きながらも、アンジェリカ様は涙を拭いながら私達の事を、男性に紹介したの。
「ああ、そうだったわ”ヴァン”、彼女達はこちらが”アンナ”、あちらが”ミレイ”。
共に私の親衛隊員で、最後まで付き従ってくれた素晴らしい部下よ!」
「そうか、それは素晴らしい部下達だね! 俺の名は”ヴァン・ヴォルフィード”と言う者だよ。
アンジーの協力者で、此の惑星で言うところの【星人ほしびと】と云う者らしいけど、君等とそんなに変わらない人間だから、どうか仲良くして貰いたいな」
そんな風に、非常に軽い調子で話しかけられたので、私とミレイは戸惑ってしまい目を白黒させていると、ヴァン様は徐ろに近寄って来て私とミレイの片手を取り、握手して来たの。
どうやら、此れが星人ほしびとの挨拶らしいと、後にアンジェリカ様が教えてくれたけど、当時は何をされているのか判らず、戸惑ってしまい目を白黒させているばかりだったわ・・・。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます